第51話 「この笛で操れないものは何もない」
【前回までのあらすじ】
谷底から姿を現した大男は、なんと白鷲様だった!?
そこから反撃が開始するが、“闇の使者”ホルンの実力も負けていない。
激しい攻防戦の果てに、リンが笛の音の消し方に気づいて……?
「……え? 」
「笛の音を、消す方法……? 」
「……ハ? 何言ってるの?あたしに弱点なんか存在しないわ♪ 」
ホルンが苛立ちながら言った。
「それが、存在するのよ」リンがウインクをしてみせた。
「……小賢しい娘ね。まずはあんたから殺してやるよ♪ 」
ホルンが「ヒュイ♪」と笛を吹く。それにあわせ、リンもとっさに「ヒュイ♪」と同じような声色で歌った。
――笛の音の効果は、現れなかった。
ホルンはむきになり、続けて笛を吹くが、リンも負けじと同じ音で歌っている。
その甲斐あってか、一向に操られるような素振りは見えなかった。
「……な! あたしの笛がきかないだと!? 」
「あらゆるものは音を出している。高い音や低い音。それらは波のように空気を伝わるわ。
それと逆位相の波の音をあわせると、音が無効化するのよ」
「リ、リン……? 」
「い、一体、……何を言ってるの? 」
アルスとカストルは目が点になった。
「……く! よくわからないけど、あたしの笛の真似をするだけで効かないなんて!? こんなのおかしいわ! 」
「さあ、あなたの笛はもう通用しないわ。大人しく観念なさい! 」
「ふ、ふふふふふふふ……」
急にホルンが笑い出した。
「……何がおかしいの? 」
「ふふふ……。まさかここまで追い詰められるなんてね♪
でも、さっきも言った通り、この笛で操れないものは何もないのよ! 」
ここでホルンは、それまで横向きに吹いていた笛を縦に向けた。
「……笛を縦に向けた!? 」
「一体何が始まるっていうんだ!? 」
アルスとカストルはゆっくり立ち上がり、固唾を飲んだ。
ホルンが縦笛に息を吹き込んだ。一同に緊張が走る。
しかし、音は鳴らなかった。スースーと息が通っているような空虚な音がするだけだった。
「な、なーんだ、壊れてるんじゃん。びっくりさせないでよ」
カストルがホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。
「ギヤアアアアアアア!!!! 」
突然部屋中を轟かす咆哮が、白鷲から発せられたのだ。
皆必死に耳を塞ぎ、床に伏せながら咆哮が止むのを待った。
「しっ、白鷲様!? 」
すぐそばにいた姫巫女が腰を抜かして叫んだ。
リンはとっさに姫巫女に駆け寄り、バリアを張った。
白鷲はバリアを破ろうと鉤爪で何度も何度も何度も引っ掻き回した。
「白鷲様!? 白鷲様!? 一体どうされたのですか!? 」
姫巫女は涙を浮かべながら叫んだ。
「白鷲の様子がおかしいぞ!……もしかして、さっきの笛で操られてるんじゃ? 」
カストルが叫んだ。
「でも、全然音が聞こえなかったよ!? 」
「いえ、音は鳴っていたんだわ」リンが必死にバリアを守りながら言った。
「私たちには聞こえなかった。でも、白鷲様にははっきり聞き取れたんだわ。
なぜなら、ホルンが吹いていたのは……」
「――超音波だから♪」
そのとき、バリアがパリンと割れ、白鷲の鉤爪が床に突き刺さった。
「リン!! 」
リンはとっさに体勢を立て直し、再びバリアを張って姫巫女を守った。
白鷲は床から鉤爪を外すと、再びするどい爪を繰り出した。
「超音波だって? そんなの、どうやって防げばいいのさ?
リンに聞こえない音は、逆位相でも防ぎようがないじゃないか! 」
「さあ、その爪でまずは姫巫女を八つ裂きにしてしまえ。その次は隣の女♪ そして最後に男2人よ♪
すべてが終わったときに、あんたは正気にもどるのさ。
……ふふふ、そのとき、あんたはどんな絶望の声をあげるのかしらね? 」
「くっ……もう許せないぞ! 」
カストルが剣を構え、ホルンに斬りかかった。
「カストル! 危ない! 」
アルスが叫んだのも束の間、カストルはホルンにさっと避けられ、体勢を崩して壁にぶつかった。
「ぐっ……」
カストルはズルズルと床に崩れ落ち、仰向けで弱々しくこちらに目線を向けている。
アルスはすかさず杖を振り、ホルンに向けて光の矢を飛ばした。
「だから効かないんだって♪ 」
ホルンはアルスの技をかわすと、“人を操る”横笛に切り替えて、アルスの動きを止めた。
「うっ……」
「さあ、“光の使者”様のその杖で、あいつを殺すんだよ♪ 」
アルスの腕がぐぐぐ……と持ち上がり、杖の先がカストルを向いた。
カストルが絶望と恐怖の眼差しでアルスを見つめている。
「やめろ、お願いだ、やめてくれ!! 」
アルスは懸命に叫び、腕を戻そうとした。しかし体が言うことをきかない。
蝋人形のようにガチガチに固まって動かないのだ。
背後ではリンが必死で白鷲の攻撃から姫巫女を守っていたが、だんだん限界が見え始めていた。
――敗北。
その言葉が頭をよぎった。
ここで終わるんだ。“闇の使者”の力を見くびりすぎていた。
僕らも自分たちの力を過信しすぎていた。
この杖があれば。リンの歌があれば。……なんとか切り抜けられると思っていた。
……僕らは弱過ぎる。
この程度では“闇の使者”を倒すことはおろか、世界を救うことすらできやしない。
みんな、ごめん……。
ホルンが笛を吹き、アルスの腕が、杖が、振り下ろされた…――。
――その時。ホルンの笛が粉々に砕けちった。
アルスも。カストルも。リンも。そしてホルンも。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
部屋の隅から、ジルが弓を構えていたのだ。
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