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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第8章 聖都ガルトデウス
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第50話 攻防戦

【前回までのあらすじ】


祈りの間で、“闇の使者”魔笛のホルンと対峙するアルスたち。

しかし圧倒的な笛の力に苦戦を強いられてしまう。

そんな中、姫巫女が谷底に落とされてしまう。

為す術もなく、笛で操られそうになったそのとき、

姫巫女が背丈2mの大男と共に現れる。

その大男の正体が、実は……。

 白鷲しろわし様が、実は人間だった――?


「ハ? ……何いってるの? 」


 ホルンが(あき)れたように鼻で笑った。


「予言もデタラメな上に、そいつがあの白い鷲? ……冗談もいい加減にしなさいよ!

……まあ、いいわ。どのみち2人まとめて殺してあげるんだから♪ 」


 ホルンは笛を口元に近づけ、笑みを浮かべた。


「この笛で操れないものは何もない♪

神であろうがなんであろうが、すべてあたしの言いなり♪

それに、鷲は人よりも耳がいいらしいからね。……どうなるのかしらね? 」


 ホルンが笛に息を吹きこもうとした瞬間、またしてもザシュッと音がし、ホルンの腕から赤い血潮(ちしお)が飛び散った。

 人の姿をした白鷲しろわし鉤爪(かぎづめ)でホルンに反撃をしたようだ。

 目に追えない速さだったので、その場にいた誰もが、何が起きたのか瞬時に把握できなかった。


「いやあああああ!! 」


 ホルンが右腕を抑えながら、床に(ひざまず)いた。

 白鷲しろわしはすぐに姫巫女のそばに舞い戻った。

 まるで姫巫女の命を(おびや)かす者は何人なんびとたりとも容赦(ようしゃ)しないといった様子だった。


白鷲しろわし様、お怪我はありませんか? 」


 姫巫女が白鷲しろわしの腕をさすりながら、(いたわ)りの声をかけた。

 白鷲しろわしはというと、無言でホルンを見つめていた。

 彼女が次にどのような動きをするか、一瞬たりとも見逃さないという気迫(きはく)が感じられる。


「――早い! これが神の使いの実力なのか!? 」カストルが興奮気味に言った。


「すげえや! そのままやっつけちゃえー! 」


「……くっ! 何が神の使いよ? ただの鷲のくせに! 」


 ホルンが腕を(かば)いながらゆっくりと起き上がる。

 床の絨毯(じゅうたん)に血がポタッ、ポタッと(したた)り落ちた。


「……いいわ。教えてあげる……。あたしの恐ろしさをとくと思い知れ! 」


 ホルンは憎しみを込めて「ビュイ♪ 」と笛を吹いた。白鷲しろわしの動きがピタリと封じられた。


白鷲しろわし様の動きが止まった!? 」カストルが叫んだ。


「え、白鷲しろわし様……? 」姫巫女も不安気に白鷲しろわしを見上げた。


「うふふ……。しょせん、神の使いはその程度だったわけね♪ 」


 ホルンは続けざまに笛を吹いた。周りに倒れていた兵たちがむくりむくりと起き上がる。

 皆意識を失い、首や腕をだらんとさせている。中には骨が折れ、手足があらぬ方向に曲がっている人もいた。

 不本意(ふほんい)に操られている兵たちは姫巫女と白鷲しろわしをぐるりと取り囲み、それぞれ剣や槍といった武器を手にしていた。


「おい! 何をする気だ!? 」


 アルスが叫んだ。


「ふふふ。楽しいショーの始まりよ♪ 動けない神の使いとバカな巫女の処刑というね。

……もちろん、あんたたちも参加してもらうわよ♪ 」


 アルスとカストルの体も、笛の音に合わせてゆらりと動き始めた。

 カストルは手にしていた剣を、アルスも杖を構えた体勢になった。


「かっ、体が勝手に!? 」

「だめだ、言うことをきかない! 」


 いつの間にやら、姫巫女と白鷲しろわしを3重4重に取り囲むような円陣(えんじん)ができあがっていた。


「姫巫女様、お逃げください! 」アルスが叫んだ。


「えっ……。何が起きているのですか……? 」


 姫巫女は状況がわからず、左右に首を振りながらうろたえている様子だった。

 反対に、白鷲は先程から全く抵抗するそぶりを見せていない。

 何か策があるのか、それとも、諦めているのか……。


「さあ、その2人をギッタギタに殺してちょうだい! 」


 ホルンが一際(ひときわ)大きく笛を吹いた。

 兵たちが武器を手に、まるで磁力で吸い寄せられるかのように、中心にいる2人に襲い掛かった。

 アルスたちも同じように……。


「くそ! 止まれ、止まれええええ!! 」

「逃げて! 姫巫女様あああああああ!!!! 」



【お願い 守って】



 突如兵たちが一斉に周りに飛ばされた。

 アルスとカストルも同様に吹き飛び、近くの柱にぶつかった。


「い、いてて……」

「な、何が起こったんだ……? 」


 姫巫女と白鷲しろわしの2人を守るようにバリアが張られていた。


「バリアだ!……っていうことは、リン! 」

「よ、良かったぁ……助かった…… 」


 リンが姫巫女たちを守るようにして立っていた。

 トパーズのネックレスがまばゆい輝きを放っている。


「うそ! あたしの最高のショーがブチ壊されたの!? 」


 ホルンが苛立(いらだ)って叫んだ。そして、リンの首元で輝くネックレスを見て察知(さっち)がいった。


「なるほど、あんたも“光の使者”ってわけね♪ ……てことは、“光の使者”は3人いるってこと? 」


 ホルンがカストルの方をみた。カストルは慌てて首を横に振った。


「ぼ、僕は違います……へへへっ」


「ふん、……まんまと騙されたってわけね♪

そこの巫女といいあんたたちといい、どれだけあたしを(だま)せば気が済むのかしら?

もう容赦はしないわよ! 」


ホルンが怒りを露わにしている。


「あれ、もしかして余計怒らせちゃった……? 」


 カストルがゆっくり後ずさりする。

 リンを守るためにとっさについた(うそ)のツケがここで回ってきてしまったわけだ。


 しかし、事態はリンの一言で一変(いっぺん)した。



「アルス君とカストル君が時間を稼いでくれたおかげで、ようやくわかったわ。

……あなたの笛の音を消す方法が! 」


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