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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第7章 霧の森
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第45話 伝書鳩の便り

【前回までのあらすじ】


湖で出会った女性はジルという名前だが、記憶を失っているようだった。

早朝になり、別れていた兵長たちと無事合流することに。

朝日をうけて、湖がエメラルド色に輝いており、しばし心を奪われる。

 その後数日は森の中を進んでいった。

 あれから賊に襲われることはなく、順調に旅を続けることができた。


 ジルも次第にアルスたちや兵長とも打ち解けることができた。

 ただ、記憶は未だ戻っていないので、アルスたちも極力話題を振らないように心がけた。


 アルスは自分たちの本当の旅の目的をジルに伝えていなかった。

「ラオンダール帝国の皇帝の命令で、地方に派遣されている使者」として通していた。

 そうすれば兵が護衛(ごえい)にあたっていることや、豪華な装飾の馬車に乗っていることの説明がついた。

 ジルはいまいちピンときていないようだったが、「まだ若いのに大変ですね」と(ねぎら)ってくれた。


◇◇


 数日して、ついに森を抜けた。

 自生している植物も身長かそれ以下の高さの低木が占めていた。

 目の前には高い山々が遠くまで連なっていた。

 手前の山はまだ緑で覆われているが、奥の山は鋭くそり立ち、灰色をしていた。

 山頂付近を白い雪が(おお)っている。


「やったー! ついに森を抜けたんだー! 」


 カストルは気分転換で馬車から降りると、大きくのびをした。

 標高が高いのか、空気が澄み渡っていた。


「すごい山ね……。あのむこうに、ガルトデウスがあるのかしら」


 リンも壮大な景色に圧倒されているようだ。


「そうですね、道なりに進むと、1週間ほどでガルトデウスに到着するでしょう。


この先はしばらく山裾(やますそ)に沿って進みますが、途中から登山道に入ります。

だんだん道も細く険しくなります。崖の側を通ることもあるでしょう。

場合によっては、馬に乗り換えていただく箇所もあるかもしれません」


 兵長も気を引き締める。ここから先は今までとはわけが違うのだ。


「ガルトデウス……」ジルが静かにつぶやいた。「白い鷲を連れた巫女……」


「え? 」みんなは一斉(いっせい)にジルに振り返った。


「ジルさん、何か思い出したの?」とリン。

「ガルトデウスに行ったことがあるの?」とカストル。

「白い鷲を連れた巫女、って?」とアルス。


 みんなが次々と食いつくので、ジルはあわてて訂正(ていせい)した。


「ごめんなさい、私にも、よくわからないんです。どういう意味なのか……」


「いやいや、僕たちの方こそごめんなさい。

ジルさんが、記憶を取り戻したのかと思ってしまって。

あ、そうだ。実際に行ってみれば、何かわかるんじゃないかな?」


 カストルが提案した。


「私もカストル君に賛成ー! きっと何か思い出すはずよ」


 リンもはしゃいで言った。

 対称的に、ジルは不安そうな顔をした。


「でも、私、皆さんの迷惑になると思うわ。

だって、皇帝陛下の、大切な使者さんなんでしょう。

大切な任務を遂行されているのに、私なんかが、いて良いわけないわ」


「いえ、ぜひ一緒に来てください」


 真っ先に言い切ったのはアルスだった。

 カストルとリンも信頼の眼差しでアルスを見た。ジルは驚いたように目を見開いた。


「僕たちの方こそ、ジルさんがいてくれると心強いんです。

今までもそうだったように、これから先も一緒にいてくれると助かります。

……それくらい、過酷な旅であることに変わりはないんですけども。

ガルトデウスに着けば、きっと何かがわかるはずです。

僕たちは、ジルさんの味方です。ですから一緒にいきましょう。

それに、僕たちには太陽神ロレヌ様の加護がついていますから」


 アルスの最後の一言に、カストルは親指を立てた。

 ラオンダール民としてグッジョブな使い方だったようだ。


「そ、そうですか……。わかりました。でしたら、お言葉に甘えて、ついていこうかしら」


 ジルに笑顔が戻った。アルスはホッと胸を撫で下ろした。


「ねえ、ジルさん、あそこに綺麗な花があるわ。ちょっと行ってみましょう」


 リンがジルを気遣って、近くの花畑に誘った。


「ええ、いきましょう」


 リンとジルが離れていった。


「あんまり遠くに行っちゃだめだよー」


 カストルもそういいながら、ついていきたそうに、ソワソワしていた。



 そのとき。


「クルクルッポー! 」 一羽の白い鳩が兵長の周りにやってきた。


「これは! 伝書鳩(でんしょばと)がきました」


 鳩は馬車の屋根に止まった。よく見ると脚に紙がくくりつけられている。


「帝都からの報告が書かれているかもしれません」


 兵長が紙をほどくと、確かに文章が書かれていた。


「なんて書かれてるの?」


 カストルは興味津々に身を乗り出した。


「読んでまいります。

 西ルートの分隊はレガルディアに到着。しかし敵意を示され、中に入ること(あた)わず。

やむを得ずルマグアートを目指す、とのこと」


「西ルートはアルディス兄様のところだ!」カストルが叫んだ。


「敵意を示され、って?」


 アルスは国際情勢がよくわからなかった。


「レガルディアは、大昔に周辺の国々と戦争をしていたんだよ」


 城で歴史の授業を教わっていたカストルが言った。


「ずいぶん長いことね。最終的に和平条約を結んで解決したんだけど、それ以来どの国とも国交を断絶しているんだ」


「……続いて南ルートです。

港町リンダラスに到着するも、有力な情報は得られず。

大雨が続いており、足止めをくらう。対岸のファランシスに未だ着かず」


「南ルートはベクレス兄様だ!」カストルが叫んだ。


「南の地域は水の豊かなところが多いです。

水位があがると、生活にも命にも、支障を来たしかねません。

待機するのがベストなのでしょう。

最後に、北ルート。いまだ音信なし」


「そっか。北ルートは、まだ連絡がきていないんだね」


「今のところ僕らの東ルートが優秀だね。なんてったってトパーズとリンを見つけられたんだもの」


 カストルが嬉しそうに言った。2人の兄より優位に立てているのがよほど嬉しかったのだろう。

 アルスはなんとなくその心情を読み取れた。


「では、我々も近況を報告しましょう。

リン様とトパーズの件は先に伝えていますので……」


 兵長は紙の下の余白部分に「無事森を抜ける。ガルトデウスを目指す」と書き、鳩の脚にくくりつけた。

 鳩は再び「クルクルッポー! 」と鳴くと、バサバサと飛んでいった。


 リンとジルは自生する白い花で花輪を作り、頭に飾ってはしゃいでいた。

 ジルの周りには自然と小鳥たちが集まってきていた。


「わー、ジルさんモテモテじゃん!うらやましい。僕も混ぜてー!」


 カストルが大はしゃぎで駆けていく。


「もう、カストルったら……」


 アルスも仕方なくそれに続く。




 束の間の休息を取り、一同、ガルトデウスへ。


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