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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第7章 霧の森
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第44話 合流

【前回までのあらすじ】


アルスたちは湖の近くにやってきた。

周りを散策していると、一人の女性が行き倒れているのを発見する。

「ジ、ジルさん。なんていい名前なんだ……。

緑色の髪の人って、初めてみました。とてもきれいですねー! 」


 カストルが顔を赤らめながら言った。

 アルスはカストルを脇に押しのけて、ジルに話しかけた。


「ジルさんは、ずいぶん長いこと旅をされていたんですか……?」


 アルスの言葉を聞いて、ジルの顔色はみるみる曇り、しまいには泣きそうな表情になった。


「ど、どうされましたか!? 」


 アルスは予想外の反応に(あわ)てた。


「ほらー、アルスが余計なことを言うからー」


 カストルが横からつっこんでくる。


「……わたし……」


「え? 」


「私、何かを探していた気がするんです。とても、とても大切なものを……。

でも、何だったかしら? ……思い出せないわ……」


「もしかして、記憶が……? 」


 アルスたち3人は顔を見合わせた。


「倒れた拍子に、頭を打ってしまったんでしょうか? 」


 リンが不安そうにジルの顔を覗き込んだ。

 ジルはリンを見て、ハッと目を見開いた。


「私、あなたにどこかでお会いした気がします。

どこだったか思い出せないけど、でも……。とても懐かしい気がするんです」


 リンはパッと顔を輝かせた。


「もしかして、“シレヌの宴”を見てくれたんじゃない? 私、そこにいたのよ」


「シレヌの、宴? ……ごめんなさい、それは何ですか? 」


「世界中を回る旅一座よ。ねえ、どこかの街で見てくれたんじゃないかしら」


「うーん? ……そうかもしれないわ……」


「何か手がかりがあるといいんだけど。他には何か覚えてませんか? 」


 アルスが一歩踏み込んで聞き出そうとするが、ジルは首を横にふり、申し訳なさそうな顔をした。


「ごめんなさいね。今はまだ混乱してて……」


「いえ、こちらこそすみません。

今日はもう夜が()けてきましたので、ゆっくり休みましょう。

火は付けたままにしてますので、森の獣たちも近づいて来ないでしょう。

何かあれば、声をかけてくださいね」


「ええ、ありがとうございます」


◇◇


 リンはジルの側に並ぶように眠り、焚き火を挟んだ向かい側にカストルが横になった。

 アルスもカストルの隣で横になった。3人が眠りについたあとも、なかなか寝付けずにいた。

 まだ賊のことを警戒している節もあったが、ジルの不可解な点で頭がいっぱいだった。


 ジルの身なりから推測するに、おそらく何ヶ月も、下手したら何年も旅をしていたと思われる。

 ……たった1人で? いや、仲間がいたかもしれない。

 そして、何かを探していたという。それは何だ?

 それを見つけるために、ずっと旅をする必要があったのか?

 まさか、“光の使者”や宝石を探していた?……いや、それはないか。

 一般人がこのことを知っているとは思えない。おそらく別の何かだろう。

 それに、どこかでリンと出会っている可能性もあるときた……。


 考えれば考えるほどにわからなくなってきた。

 どのみちこの森に留まっていては危険だから、せめて森の出口まで一緒に行動した方が良さそうだ。

 そこから先はジルの意見を尊重しよう。それにしても、兵長たちは無事だろうか……。


 アルスは知らぬ間に眠りについていた。森の夜が次第に更けていった。


◇◇


 早朝頃に、遠くから馬のいななきが(かす)かにきこえた。


「カストル様ー! アルス様ー! 」


 誰かが名前を呼んでいる。

 アルスたちが目を覚ますと、馬に乗った兵長たちの姿がだんだん見えた。

 他の兵はもちろん、馬車もちゃんと(ひき)いている。


「兵長だ! 」


 カストルが飛び起き、手を振って迎えた。


「カストル様! 皆様も! こちらにいらっしゃったのですね。

 ご無事でなによりです。お怪我もされていないようで、安心いたしました」


 兵長たちが目の前で止まり、馬から降りた。


「兵長も! 無事でよかったです」


「当然ですとも。我々はラオンダールの兵士ですから。……おや、そちらの方は? 」


 兵長はジルの姿をみつけた。

 ジルは(おび)えた目でギュッと隣のリンにしがみついた。

 リンは「大丈夫よ」とささやいた。


「こちらは、ジルさんです。

昨晩そこで倒れていたのを見つけたので、助けてあげたところなんです。

この森は賊がいて危険だから、森を抜けたところまで同行させたいのですが……」


 アルスが兵長にお願いした。


「そうでしたか。わかりました。

数日のうちに森を抜けられるはずですので、そこまでお連れいたしましょう」


「ありがとうございます! 」


「それでは、朝食の準備をしますから、馬車の中でお待ちください」


◇◇


 朝食が済む頃には、朝日がのぼり空が明るくなっていた。

 アルスは兵長に賊のことをきいてみた。


「アルス様たちがあの場を離れたあと、我々も後を追おうとしたのですが、賊達がなかなかしつこくてですね。

多少痛い目にあってもらいました。

……あ、殺してはいませんよ。過剰な殺生(せっしょう)は上からの命令で止められておりますので。

ただ、あのあと森の中で霧に(はば)まれてしまいまして……」


「やはりそうでしたか」


「しかし、途中美しい歌声が聞こえまして、霧が晴れていきました。

その後馬車が我々の方にやってきたんですが、中をみるとアルス様たちがいないではないですか。

馬車の兵にきくと、アルス様たちは馬車を出られたあと、そのまま森の中を進まれて、とても追える状況ではなかったというのです」


「それは不思議な話です。僕たちが馬車を降りると、馬車に置いてかれてしまったのですよ」


「そうでしたか。どうやらこの森には、不思議な力があるようですね。

まあ、何はともあれ、こうして再会することができてよかったです。

それでは、出発と行きましょうか。

この先は賊は出ないでしょうが、何か異変があれば、すぐに知らせてくださいね」


◇◇


 出発の準備が整った。ジルをリンの隣に乗せ、カストルも乗り込んだ。

 アルスも馬車に乗ろうとした時、ふとあるものが目に入った。

 急にアルスの動きが止まったので、カストルが不審に思った。


「アルス、どうかした? 」


「カストル、湖が光ってる。エメラルド色に」


「マジかよ! 」


 カストルが馬車を降りる。


「私も行くー! さ、ジルさんも行きましょ」


「え? ええ……」


 湖は陽の光を受けて、鮮やかな緑色に輝いていた。


「わあ! きれい……」


「すっげー! これがセイガの人が言ってたやつだな」


「湖の水がとても綺麗なので、このような色になるのでしょう」


 隣で兵長も見ていた。


「素敵……。まるで心を洗われるようだわ」


 ジルも感動しているようだった。


「それじゃ、出発しよう」




 ジルが新たに加わり、旅が再会した。


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