第44話 合流
【前回までのあらすじ】
アルスたちは湖の近くにやってきた。
周りを散策していると、一人の女性が行き倒れているのを発見する。
「ジ、ジルさん。なんていい名前なんだ……。
緑色の髪の人って、初めてみました。とてもきれいですねー! 」
カストルが顔を赤らめながら言った。
アルスはカストルを脇に押しのけて、ジルに話しかけた。
「ジルさんは、ずいぶん長いこと旅をされていたんですか……?」
アルスの言葉を聞いて、ジルの顔色はみるみる曇り、しまいには泣きそうな表情になった。
「ど、どうされましたか!? 」
アルスは予想外の反応に慌てた。
「ほらー、アルスが余計なことを言うからー」
カストルが横からつっこんでくる。
「……わたし……」
「え? 」
「私、何かを探していた気がするんです。とても、とても大切なものを……。
でも、何だったかしら? ……思い出せないわ……」
「もしかして、記憶が……? 」
アルスたち3人は顔を見合わせた。
「倒れた拍子に、頭を打ってしまったんでしょうか? 」
リンが不安そうにジルの顔を覗き込んだ。
ジルはリンを見て、ハッと目を見開いた。
「私、あなたにどこかでお会いした気がします。
どこだったか思い出せないけど、でも……。とても懐かしい気がするんです」
リンはパッと顔を輝かせた。
「もしかして、“シレヌの宴”を見てくれたんじゃない? 私、そこにいたのよ」
「シレヌの、宴? ……ごめんなさい、それは何ですか? 」
「世界中を回る旅一座よ。ねえ、どこかの街で見てくれたんじゃないかしら」
「うーん? ……そうかもしれないわ……」
「何か手がかりがあるといいんだけど。他には何か覚えてませんか? 」
アルスが一歩踏み込んで聞き出そうとするが、ジルは首を横にふり、申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんなさいね。今はまだ混乱してて……」
「いえ、こちらこそすみません。
今日はもう夜が更けてきましたので、ゆっくり休みましょう。
火は付けたままにしてますので、森の獣たちも近づいて来ないでしょう。
何かあれば、声をかけてくださいね」
「ええ、ありがとうございます」
◇◇
リンはジルの側に並ぶように眠り、焚き火を挟んだ向かい側にカストルが横になった。
アルスもカストルの隣で横になった。3人が眠りについたあとも、なかなか寝付けずにいた。
まだ賊のことを警戒している節もあったが、ジルの不可解な点で頭がいっぱいだった。
ジルの身なりから推測するに、おそらく何ヶ月も、下手したら何年も旅をしていたと思われる。
……たった1人で? いや、仲間がいたかもしれない。
そして、何かを探していたという。それは何だ?
それを見つけるために、ずっと旅をする必要があったのか?
まさか、“光の使者”や宝石を探していた?……いや、それはないか。
一般人がこのことを知っているとは思えない。おそらく別の何かだろう。
それに、どこかでリンと出会っている可能性もあるときた……。
考えれば考えるほどにわからなくなってきた。
どのみちこの森に留まっていては危険だから、せめて森の出口まで一緒に行動した方が良さそうだ。
そこから先はジルの意見を尊重しよう。それにしても、兵長たちは無事だろうか……。
アルスは知らぬ間に眠りについていた。森の夜が次第に更けていった。
◇◇
早朝頃に、遠くから馬のいななきが微かにきこえた。
「カストル様ー! アルス様ー! 」
誰かが名前を呼んでいる。
アルスたちが目を覚ますと、馬に乗った兵長たちの姿がだんだん見えた。
他の兵はもちろん、馬車もちゃんと率いている。
「兵長だ! 」
カストルが飛び起き、手を振って迎えた。
「カストル様! 皆様も! こちらにいらっしゃったのですね。
ご無事でなによりです。お怪我もされていないようで、安心いたしました」
兵長たちが目の前で止まり、馬から降りた。
「兵長も! 無事でよかったです」
「当然ですとも。我々はラオンダールの兵士ですから。……おや、そちらの方は? 」
兵長はジルの姿をみつけた。
ジルは怯えた目でギュッと隣のリンにしがみついた。
リンは「大丈夫よ」とささやいた。
「こちらは、ジルさんです。
昨晩そこで倒れていたのを見つけたので、助けてあげたところなんです。
この森は賊がいて危険だから、森を抜けたところまで同行させたいのですが……」
アルスが兵長にお願いした。
「そうでしたか。わかりました。
数日のうちに森を抜けられるはずですので、そこまでお連れいたしましょう」
「ありがとうございます! 」
「それでは、朝食の準備をしますから、馬車の中でお待ちください」
◇◇
朝食が済む頃には、朝日がのぼり空が明るくなっていた。
アルスは兵長に賊のことをきいてみた。
「アルス様たちがあの場を離れたあと、我々も後を追おうとしたのですが、賊達がなかなかしつこくてですね。
多少痛い目にあってもらいました。
……あ、殺してはいませんよ。過剰な殺生は上からの命令で止められておりますので。
ただ、あのあと森の中で霧に阻まれてしまいまして……」
「やはりそうでしたか」
「しかし、途中美しい歌声が聞こえまして、霧が晴れていきました。
その後馬車が我々の方にやってきたんですが、中をみるとアルス様たちがいないではないですか。
馬車の兵にきくと、アルス様たちは馬車を出られたあと、そのまま森の中を進まれて、とても追える状況ではなかったというのです」
「それは不思議な話です。僕たちが馬車を降りると、馬車に置いてかれてしまったのですよ」
「そうでしたか。どうやらこの森には、不思議な力があるようですね。
まあ、何はともあれ、こうして再会することができてよかったです。
それでは、出発と行きましょうか。
この先は賊は出ないでしょうが、何か異変があれば、すぐに知らせてくださいね」
◇◇
出発の準備が整った。ジルをリンの隣に乗せ、カストルも乗り込んだ。
アルスも馬車に乗ろうとした時、ふとあるものが目に入った。
急にアルスの動きが止まったので、カストルが不審に思った。
「アルス、どうかした? 」
「カストル、湖が光ってる。エメラルド色に」
「マジかよ! 」
カストルが馬車を降りる。
「私も行くー! さ、ジルさんも行きましょ」
「え? ええ……」
湖は陽の光を受けて、鮮やかな緑色に輝いていた。
「わあ! きれい……」
「すっげー! これがセイガの人が言ってたやつだな」
「湖の水がとても綺麗なので、このような色になるのでしょう」
隣で兵長も見ていた。
「素敵……。まるで心を洗われるようだわ」
ジルも感動しているようだった。
「それじゃ、出発しよう」
ジルが新たに加わり、旅が再会した。
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