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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第7章 霧の森
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第40話 世界地図と神話

【前回までのあらすじ】


カストルが街で買い込んだ、パンパンに膨れた荷物の中身を紹介する。

これから賊が出るという深い森を通ることに。

 夕食を終えたあと、3人は馬車の中に戻った。

 カストルは早速窓の布を下ろし、中が見えないようにした。

 明かりをつけるために空き瓶に油をたらし、芯を入れて火をつけた。

 3人の顔がぼおっと照らし出されると、思わずほほえんだ。

 足元に簡易オイルランプを置くと、カストルは世界地図を取り出した。

 リンが興味津々に(のぞ)き込む。


挿絵(By みてみん)


「国ごとに信仰している神が違うのなら、その国にある神の像に祈れば新しい力が得られるはずだ。

それに“シレヌの宴”のメンバーは、どの国に行っても必ず教会でお祈りしているという話をきいたから、リンが知ってることを全部教えてほしいんだ」


「わかったわ」


 幸いにもリンは、国ごとに信仰している神を覚えていた。


「どの国に行っても首都で3日、地方の町で2日ずつ公演するように決まっているの」


 リンが世界地図を指差しながら話し始めた。


「まず、東のファイデン王国は、火山が有名で、温泉も多い国よ。

公演の合間にみんなでよく温泉に入りにいったわ。

教会には、足元から炎が噴き出してるような彫刻があったわ」


「炎神ログアム様で決まりだ」


 カストルは地図にログアムと記入した。


「北のゴルドヴァキア王国は、夏に訪れたんだけど、ひんやりしていたわ。

どの建物も氷で作られていて、美術品のように美しかった。

夜になると、星がとても綺麗だった……。肌寒いのも忘れて、見続けてしまうくらいに。

あそこの教会には、天球儀を持った男性の像があったわ」


「それは天空の神のリューシアンだよ」


 カストルは地図に記入した。


「南のファランシスは、とっても綺麗な国だったわ。

水路が引かれていて、船に乗って移動するの。

私たちも、大きな船の上で公演したのよ。とても喜ばれたわ。

教会には、水瓶を持った人が祀られていたわ」


「水神ソフラート様だな」


 カストルは続けて地図に記入した。


「西のルマグアートは、鉱山が多い国。宝石や金が取れるから、裕福な人が多いの。

建物や衣装も(きら)びやかで輝いているのよ。

闘技場で毎晩イベントが開催されていて、とても賑わっていたわ。

ルマグアートの教会には、髪の長い女性の像があったわ」


「それは美の女神のヴィオラ様だな」


「……私が知っているのは、それくらいかしら」


「ありがとう。だいぶ埋まってきたよ。

あとはこれから行くガルトデウスに、砂漠のダルウィン、そして西のレガルディア……」


挿絵(By みてみん)


「ねえ、カストル。この間、神様の種類を教えてくれたでしょ。神話ではどんな話があるの?」


「私も知りたーい! 神話のことは、よくわからないの」


 アルスとリンは、カストルにぐいぐいと迫った。


「そうだなあ。まず、天空の神・リューシアンと、大地の女神・イレニアによってこの世界は作られたことになってるんだ」


 カストルは地図を裏返し、2人の名前を横に並べて書き込んだ。


「この2人から、3人の子供が生まれるんだ」


 カストルは家系図のように線を引き、3人の名前を並べた。


挿絵(By みてみん)


「1人目はレザロス。続いて2人目はアンク。最後に3人目はエシュア。

レザロス様とアンク様は、両親から世界の創造を託されて、今僕らがいる世界をお作りになったんだ。

でもレザロス様はお疲れになられて、すぐ天界に戻ってしまわれた。

だからこの世界の最高神は、実質アンク様ってことになってるんだ。

3人目のエシュア様は、2人と違って、竜なんだ」


「……竜? 」


 アルスは思わず反応した。

 エルディシアを滅ぼした兵にも、フェンリルが持っていた剣にも竜の紋章が入っていた。


「エシュア様は“聖なる竜”として君臨(くんりん)していたんだ。

アンク様が創造した世界を、エシュア様は破壊していくんだ。

どんなに犠牲が大きくても、“聖なる竜”として神聖視されていたんだ。

でも、この世界にいろんな神様が増えて、世界が豊かになってきたときに、だんだんエシュア様の存在が危険視され始めるんだ。


そこで、神様たちが力をあわせて、エシュア様を封印するんだ。

二度とこの世界に現れないように。一説では、冥界に落ちたという話もあるんだ。

まあその甲斐(かい)あって、この世界には平和が訪れるんだ。


……とまあ、大まかな話はこんな感じかな

他にも、各神様を掘り下げたストーリーはたくさんあるんだけど……」


「ありがとう。おかげで少しわかったよ。

また少しずつ教えてもらってもいいかな?」


「もちろん! 旅は長いんだ。喜んで話すよ! 」


「カストル君って、勉強をサボってたっていうわりに、とても詳しいよね。

学校の先生になればいいのに」


「そんな、よしてよ。先生は一番苦手な人物なのにさ」


「あはははははは」


◇◇


 3人で楽しく話したあとは、火を消して就寝することにした。

 リンは1人で長椅子に横になり、マントにくるまった。

 アルスとカストルは椅子にもたれかかる形で眠ることにした。


 カストルの寝息が隣で聞こえてくる中、アルスは眠れずに、窓の外をぼんやり眺めていた。

 神話の中に、竜が出てきた。各国で信仰している神が違うのなら、竜を信仰している国もあるのではないか?


 その国が、実は“闇の使者”のいる国ではないのか……?

 だとしたら、その国はなんという名前で、どこにあるんだろう?

 今わかっている範囲では、エシュア様を(まつ)っている国はなさそうだったし……。

 ただの思い過ごしだといいんだけども……。



 アルスは、いつの間にか眠りに落ちていた。

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