第38話 馬車の中で
セイガの街を出たアルスたちは、ラオンダール帝国の分隊と合流し、旅を再開した。
馬車はさすが貴族仕様。夜でも気づかれないように黒を基調にされているが、立派な装飾が施されていた。
内部はふかふかの長椅子が向き合う形で配置されており、4人まで乗車することができる。
両サイドには装飾のついた窓がついており、そこから景色を眺めることもできる。
窓の上には布が巻かれており、下ろせば内部が見えない仕掛けにもなっていた。
また、内部の会話は外の兵には聞こえないので、割とプライベートな空間が保たれていた。
アルスたち3人は馬車に乗り込むと、早速お互いの情報を共有することにした。
アルスの隣にリンが座り、向かいにカストルが座った。
カストルの横には、道具屋で買いしめたという大きな荷物がドンと乗せられていた。
「リンが仲間になったことだし、改めて自己紹介も兼ねて、旅の目的をおさらいしよう」
アルスは一連の説明をした。
エルディシアの城に生まれたが、敵襲に遭いアシュヴァルトへ逃れたこと。
育ての親、森の賢者・メラクと2人で暮らしていたこと。
15歳の誕生日と共にアシュヴァルトにいき、ダイヤモンドを受け継いだこと。
さらに“光の使者”に選ばれたこと。
ラオンダール帝国の協力を得て、世界中に散らばった5つの宝石と、その持ち主を探していること。
カストルはラオンダール帝国の第3皇子で、共に旅をしていること。
そしてリンが記念すべき1人目だということ。
話を聞いたあと、リンが驚いたように言った。
「アルス君がエルディシアの王子様で、カストル君がラオンダールの皇子様……。
私ったら、とんでもないことをしてしまったわ。今まで馴れ馴れしく接してごめんなさい! 」
リンが深々と頭を下げた。
「いや、いいんだよ。むしろ、素性を隠した方が都合がいいんだ。
これからも、普通に接してくれると嬉しいな」
「ええ、わかったわ。宝石の話も、まだ信じられないけど……。
本当に、私なんかで務まるのかしら……」
不安そうな面持ちのリンに対し、アルスは諭すように言った。
「これは、リンにしかできないことなんだよ。
だって、そのトパーズで僕を助けてくれたんだもの。
それに、その宝石を使えるのは、世界中でリンだけなんだよ」
「次はさ、リンの話を聞きたいな……。話せる範囲でいいから教えてくれる?
どうしてリンがトパーズを持っていたのかも気になるしさ」
カストルが話をふった。
「そうね……。前にアルス君には話したんだけど、私、赤ちゃんのときに旅一座に預けられたみたいなの。
このペンダントも一緒だったみたいなんだけど、ずっと大事ににぎって離さなかったみたい。
両親のことは覚えてないんだけど、これが両親と私をつなぐ唯一のものなの。
私、大人になったら、両親に会いに行こうと思ってるの。
絶対どこかで生きている、必ずまた会える、って。そう信じてるの」
「そっか……。大変だったね」
カストルがうーん……とうなって考えた。
「リンはもともと、どういう家庭だったんだろう?
光の使者が持つ宝石を、ごく一般的な家庭がもっていたとは思えないしさ。
きっと大事に保管されていたはずだろうし」
「何か、手放さねばならない理由があったってこと? 」
アルスが繋いだ。
「例えばどんな? 」
「僕の国みたいに、敵襲に遭って宝石を守らざるを得なくなったとか」
「でも、エルディシア以外に敵襲に遭った国は今のところないよな。それとも内政的な事情とか? 」
「うーん……。だとしたら一気にわからなくなるぞ。
どの国にもありそうだもん。リン、もともとどこの国で生まれたとかはわからない? 」
「ごめんなさい、それは本当にわからなくて。
あの旅一座が、私の家族であり、故郷みたいなものだから」
「そっか。変なこと聞いてごめんね」
「ううん、いいのよ」
「そういやリンの歌声はさ、旅一座で身につけたの? 」
「すごく綺麗な声だよね。魔法みたいな演出にも驚いたよ」
アルスとカストルは、セイガの公演で花が舞ったり、花火が打ち上がったりしたことを思い出した。
「あれは、物心がついたときから、自然にできたものなの。
もともと歌うことは好きだったんだけど、こうなればいいな、って思ったら、大抵なんでもできちゃうようになったの」
「すごいねリンは! もしかして本当に魔法だったりして」
「うふふ、だったらすごいことね」
リンが無邪気に笑った。
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