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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第6章 花の街セイガ
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第31話 情報収集

【前回までのあらすじ】


カストルは教会で、神話に出てくる主要な神様の説明をする。

その後街で情報を集めることにするのだった。

 街を歩きながら、アルス達は目的を再確認しあった。


「僕たちが旅をする東ルートで、確実に見つけられそうなのが、ファイデン王国にあると思われるルビー。

それと、行方がはっきりわかっていないのは、トパーズとエメラルド。

この2つの手かがりも得られるように、街で有力情報を見つけ出そう」


 2人はまず街で商店が立ち並ぶエリアを散策した。

 直接核心(かくしん)をつく言い方をすると変に怪しまれたり、逆に深入りされかねないので、2人はあらかじめ決めたワードを言うようにした。それはこうだ。


「旅をしてるんだけど、こんなに素敵な街は初めてだよ。

店主さんが知ってるここだけの情報を教えてよ」


 このワードは意外にもローカルな話題を引き出すことに功を(そう)した。

 宝石屋を営む老人に尋ねたところ、しばらく記憶を手繰(たぐ)り寄せている様子だったが、やがて少年のように目を輝かせながら言った。


「この街を出てしばらく北東にいくと、森の中に広ーい湖があるんじゃがの。

そこをたまたま通りかかった宝石商の知り合いが、湖が緑色に輝いていたと驚いてたのう。

宝石でたとえると、まるでエメラルドのような、まばゆい輝きじゃといっておった。

(のぞ)き込んでも、底がみえぬ深い湖のようじゃ。

そいつは『水底に大きなエメラルドがあるのではないか』と言っておったわい。一度行って見てはどうかの」


 宝石屋を出た2人は顔を見合わせた。


「湖か。真偽(しんぎ)のほどは(さだ)かじゃないけど、行ってみる価値はありそうだな」


◇◇


 続いて道具屋の旦那にも尋ねてみると、眉間(みけん)にしわを寄せながら話してくれた。


「この街を出て東にいくと、しばらく深い森が続くんだけど、最近賊が出るようになったって(うわさ)でね。

持ち物を奪われたり、怪我を負わされたりしてる人が続出しているようなんだよ。

うちの店でも護身(ごしん)用の剣や、景色に馴染むような迷彩柄(めいさいがら)のマントとかがよく売れてるよ。

もしお2人さんも東にいくのなら、用心するに越したことはないよ」


「そうですか。僕たちもその森を進むことになりそうなんで、またあとで来ます」


「ああ、よろしく頼むよ」


◇◇


 続いて、旅人が集まりそうな場所で情報を得るため、昼食も兼ねて街の酒場に向かった。

 まだ昼前だというのに、中はすでに賑わいを見せていた。

 暇を持て余していそうな中年の男性グループや、余生(よせい)を気長に楽しんでいそうな老人。

 そして、旅をしていると思われる青年の姿もちらほら見えた。


 アルスたちは一番奥にある2人がけのテーブルに座り、ひとまずランチセットを注文した。

 オーダーを聞いてくれたのはこの店で働いている若い娘で、厨房(ちゅうぼう)をみると両親と思しき人たちがせわしなく動いていた。

 どうやら親子3人で切り盛りしている店のようだ。

 料理を待っている間、不審がられないそぶりをしながら、周りの会話に聞き耳を立てた。



A「おまえの娘さん、今度結婚するんだって? 相手はどんなやつだよ」

B「また俺の畑が荒らされてたんだよ。今度見つけたらタダじゃおかねえぞ」

C「でさ、昨日みたシレヌの宴のミレニアさんが、ほんっとタイプでさー」

D「わかるわーそれ。なんとかしてお近づきになれないかなー」

C「お前には無理だな」

E「昨夜の狼の遠吠え、あれは狩りの前触(まえぶ)れだよ。

  何が起こるかわからねえ。早くこの街からでようぜ」

F「劇場の客席に、朝からずーっとのびてるやつがいるけど、なんなんだありゃ」

G「ラインバルドから、兵が一斉に出て行くのを見たのさ。一体何があるんだろうな」

H「いつもの視察じゃないの? ま、隣国に攻め込むことはないだろうけど」

I「ファイデンは最近火山活動が活発らしいよ。一部では避難勧告(ひなんかんこく)が出てるとか……」

J「ファランシスは美しい街だったよ。

 町中に水路が張り巡らされてて、買い物行くにも船が基本なんだ。クレイジーだろ」



「はぁ〜い、お待たせしましたぁー」


 注文した料理が運ばれてきた。クリームスープ、パン、サラダのセットだ。


「あなたたちも旅のお方? どこから来たのぉ? 」


「帝都からです」


 アルスが答えると、娘はにっこり笑った。


「この街なんて、帝都に比べると何もなくてびっくりするでしょ。

でも、私は好きよ。みんな温かくて家族みたいだもの」


「ええ、素敵な街ですね。みなさん良い方ばかりで。

もしよければ、おねえさんのここだけの話を聞かせてもらえないかな」


 紳士なカストルは、話を聞き出すのが得意だった。


「ここだけの話?

そうねえ……、昨日の昼に、旅一座の皆さんが来てくれたのよ。

彼ら、本当に世界中回ってるみたいなの。すごいよね。

国ごとにお客さんの反応や、ウケるポイントが違うみたいで、最初は苦労するって言ってたわ。

で、いろんな国に寄るたびに、必ずしてることがあるらしくて」


「必ずしてること? 」


「教会でお祈りをするんですって。

みんな怪我することなく無事に公演を終えられるように、お客さんに満足してもらえますようにって。

素敵な方達よね。ファンが増える理由も(うなず)けるわ」


「ねーちゃーん、酒を持ってきてくれないかなー? あと2本追加で! 」


 酒を飲んですでに出来上がっている賑やかなグループからオーダーが入った。


「もおー。真っ昼間から飲みすぎじゃないですかぁー? 」


 娘は呆れつつも酒を取りにいった。


「アルス、やっぱりあの一座はすごいよ。プロ中のプロだよ」


 カストルが興奮気味に言った。


「そうだね。すごい人たちだね」


◇◇


 食事を終え、酒場から出たところで、不意に声をかけられた。


「アルスさん、カストルさん! 」


 振り返ると、リンが走り寄ってきた。


「リン! 」

「リンお嬢様! 」


 カストルが顔を赤くしながら叫んだ。


「こんなところで奇遇ね! ちょうど買い出しをしていたところなの」


 リンがにこやかに話しかけた。両手には食材の入った紙袋を抱えている。


「ほんと、こんなところでお会いできるなんて……」


 カストルは鼻の下をのばしている。

 アルスはリンの身を案じて「昨日は大丈夫だった? 」ときいた。


「ええ、おかげさまで。……そうだわ、今から私の一座に来てみない? みんなに紹介したいの」


「えっ、いいんですか? 」


 カストルがグイッと食いついた。アルスはそんなカストルをどうどうとたしなめた。


「ありがとう、リン。気持ちは嬉しいけども、僕たちみたいな一般人が入って大丈夫なの? 」


「大丈夫よ。なんとかなるはずだから」


 リンがにっこり笑った。


「そうだよアルス、なんとかなるよ」


 カストルも親指をグッと立てた。


「なんでカストルまでそう言うのかな」



 2人はリンの荷物を分担して持ち、旅一座のいる広場へ向かった。

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