第30話 この世界の神
【前回までのあらすじ】
翌朝、狼の遠吠えがあったことで街の人は不気味がっていた。
街を散策していたアルスたちは、この世界の神様のことを知るため、近くの教会に入るのだった。
教会は街の人のために解放されており、自由に出入りすることができた。
祭壇に祈りを捧げている人もいれば、ゆっくり本を読んでくつろいでいる人もいた。
2人は前から3列目の長椅子に座った。
周りに人は座っておらず、話をするには好都合だった。
「やっぱり3列目って落ち着くよな。
一番前はストレートすぎて嫌だしさ、2列目もまだ近すぎる気がするし。
3列目なら安心して座れると思わないか? 」
カストルが堂々と宣う独自のこだわりに、アルスは思わず吹き出した。
「たしか、城の教会で昼寝していた席も、3列目だったよね」
「まあね」
「それじゃ、教えてやろうか。あ、あれなんか、わかりやすくていいんじゃないか」
カストルは教会の窓を指差した。
光を取り入れるために、8枚の色とりどりのステンドグラスが飾られていた。
それぞれ8人の人物が描かれている。
「まずは一番右端の人物からいこう。
両手を広げて立っているのは、この世界を創造した最高神、アンク様。
……これくらいは知ってるだろ?」
「うん。エルディシアで信仰されていた神だ」
「そうなのか? ……ちょっと待てよ」
カストルは背中の荷物から世界地図とペンを取り出した。
「僕も詳しくは知らないんだけど、それぞれの国ごとに信仰してる神が違うとなると……。
まず、君の故郷のエルディシアは、最高神アンク、と」
カストルはペンでエルディシアがあった位置(地図では空白しか描かれていない)に、“アンク”と書き込んだ。
再び窓に視線を移した。
「2人目は頭の上に太陽がある人。あれは太陽神ロレヌだ。ラオンダール帝国で信仰している神だ」
カストルは帝国の下に“ロレヌ”と書き加えた。
「神話でいうと、太陽神ロレヌは創造神アンクの息子なんだ。ロレヌには双子の妹がいて、それが月の女神シレヌ」
「シレヌ…って、リンがいる“シレヌの宴”の、シレヌ? 」
「そうそう。彼らは月の綺麗な夜に公演するのがスタンスだからね。
“月の女神様を喜ばせるための宴”、って意味らしい。僕も人づてに聞いたから、定かじゃないけどね」
「じゃあ、シレヌ様を信仰する国も存在するの?」
「そこまではわからないな。あるかもしれないし、ないかもしれない」
カストルはステンドグラスを見上げた。
「シレヌ様の絵は……ここにはないみたいだな。
続いて3人目は生命の女神セシアス。植物に囲まれている女性だよ。
創造神アンクの妻でもあるんだ。
4人目は炎神ログアム。太陽神ロレヌ様の息子だな。足元から赤い炎が噴き出してるだろ。
5人目は風神アイオール。こちらは月の女神シレヌ様の息子だ。背中に羽が生えていて、空を飛んでいる絵だよ。
6人目は水神ソフラート。水瓶から水を流して、海を生み出しているのさ。
7人目は愛の女神ヴィオラ。髪の長い綺麗な女性さ。
最後に8人目は音楽の女神レミア。横笛を吹いている姿で描かれることが多いんだ。
……とまあ、こんな感じかな」
「ありがとう。すごくわかりやすくて助かったよ」
「どういたしまして。
本当はまだ何人かいるんだけど、この8人だけでも押さえておくと大丈夫かな」
「なぜ急にこんなお願いをしたかというと、神様の像に祈ると、この杖に不思議な力が宿ることに気づいたんだ。
今はエルディシアとラオンダールでしか見つけられてないんだけど、これから行く国でも、神様の像があれば祈ってみたいんだ。新しい力を得られるかもしれなくて……」
「なるほどな。だとしたら、なんらかの神を信仰している国に行くのが手っ取り早そうだな」
カストルは再び世界地図を取り出した。
「ここから東の国でいうと、まず聖都ガルトデウス。
ここは風が吹き荒れる高山地帯にあるから、もしかすると風神アイオールを信仰しているかもしれないな。
極東のファイデン王国は火山の国だから、炎神ログアムを祀っているかもしれない。
ラオンダールから南にある国は、海の交易で栄えている国が多いから、水神ソフラートがありそうだな。
北のゴルドヴァキアは、ちょっと予想がつかないや。
西の国も……レガルディアは国交を断絶してるし。
極西のルマグアートも、なんだろう?わからないや」
「ありがとう。ある程度わかっただけでも十分だよ。
何もわからないよりかは、予想を立てやすいもの」
「そっか。ならよかった。さーてと、そろそろ行くか。
この街で、宝石の手がかりでも探さないとな」
「それと、“光の使者”もね」
2人は教会を出て、街で情報を集めることにした。
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