第29話 不穏な朝
【前回までのあらすじ】
リンが外に出ると、そこには誰もいなかった。
ふと声をかけられると見知らぬ男性が。
危うく連れ去られそうになったとき、アルスとカストルが助けにやってきた。
他愛もない会話をして、明日も公演があることを伝え、それぞれ別れるのだった。
翌朝、目が覚めた2人は、女将さんが朝食を振舞ってくれるというので、1階に降りた。
「おはよう、お2人さん。ご飯の準備ができたところだよ」
「ありがとうございます」
1階受付の奥には、宿泊客が食事を取れる部屋が用意されており、2人〜4人がけのテーブルが大小5つ置かれていた。
幸いにも席はどこも空席で、アルスたちは手前にある2人がけのテーブルに座った。
すかさず女将さんが湯気ののぼるスープとパンを持ってきてくれた。
「セイガの朝食といったら、野菜ときのこをたっぷり入れて煮込んだクリームスープとパンが定番だよ。
各家庭によって味付けや具材が違ったりするから、まさにおふくろの味なのさ。
このスープ目当てにうちに泊まってくれるお客さんもいるんだよ。
さ、おかわり自由だから、遠慮せず食べておくれ」
「わあ、美味しそう! 」
実は昨晩から何も口にしていなかった2人。一口目のあまりのおいしさに感激した。
「女将さん、すっごく美味しいです」
女将さんはにこっと笑った。
「そうだろう、そうだろう。
朝から栄養のあるものを食べないと、1日が始まらないっていうからね。
しっかり食べて旅に備えておくれよ」
「ありがとうございます」
「……それにしても」
と、女将さんが頰に手をあてて神妙な面持ちになった。
「昨晩は狼の遠吠えがひどかったねえ。お2人さんも聞こえなかったかい?
あたしゃこの街にずっと住んでいるけど、あんなのは初めてだよ。
何かよくないことが起こりそうな気がして……。全く、気味が悪いねえ」
「狼の遠吠え? 」
2人は互いに顔を見合わせた。
昨晩は宿に戻ってすぐ眠りについたので、遠吠えの“と”の字すら気づかなかったのだ。
「朝早くに出て行かれたお客さんもね、遠吠えが気になってよく眠れなかったって言ってたよ。
狼がこの街に入ってくることはないだろうけどさ、もし旅に出られるのなら、用心するに越したことはないよ。
この近くに、旅に役立つ道具を売っている店もあるからさ。一度のぞいてみるといいよ」
「ありがとうございます」
2人はスープを3杯ほどおかわりし、十分満腹になったところで、気分転換に街を散策することにした。
◇◇
「なあ、アルス」街を歩きながらカストルが訪ねた。
「なんだい? 」
「さっきの狼の話、どう思う? 」
アルスは少し考えてから言った。
「狼が遠吠えをするとしたら、仲間と連絡をとるとか、孤独な一匹狼が寂しさを紛らわせるためとか……。
いろいろ考えられるけども」
「あんなのは初めてだっていってたしなあ。
もしかしたら、本当にこの街に何かが起こる予兆かもしれないな」
「そうだね。僕たちにできることがあれば、してあげたいよね」
「その、さ。アルスは“光の使者”じゃんか。何かできるんじゃないかな」
「えっ。たとえばどんな?」
「杖をかかげて、えいやー! って。
もし狼が街を襲ってくるんなら、一匹残らず退散させるとかさ」
「果たしてうまくいくだろうか……」
「僕はうまくいってほしいな」
「この杖をちゃんと使ったのは、まだ1回程度だし……。
わからないことの方が多いんだ」
アルスは不安な表情を浮かべた。カストルはうーん、と唸った。
「僕が言えた立場じゃないけども、そういうのは教科書とかないわけだから、自分で見つけるしかないんじゃないかな」
「ねえカストル。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
突然の質問に、カストルはとまどった。
「な、なんだい? 」
「僕、この世界の神様についてあまり知らなくて……。もしよければ、教えてもらえないかな」
「そんなことなら、お安い御用だよ」
2人は道行く先に教会を見つけた。
「ちょうどいいや、あそこで教えてやるよ」
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