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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第6章 花の街セイガ
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第26話 奇跡の歌姫

【前回までのあらすじ】


広場で旅一座「シレヌの宴」の公演をみていたアルスたち。

想像を上回るパフォーマンスに感動していた矢先、ついにリンが舞台に登場するのだった。

 舞台に登場したリンは、目元に華やかなピンクのメイクをほどこし、頭に花飾りをつけ、キラキラ輝く白いドレスを着ていた。

 アルスは胸が高鳴った。再会できた嬉しさ以上に、舞台で見るリンは見違えるように美しかったのだ。

 舞台から目が離せなくなっているアルスをみて、カストルは(さっ)しがついた。


「もしかして、あの子なの? 帝都で出会った子って? ……超絶(ちょうぜつ)可愛いんですけど!! 」


 カストルが横で顔を赤く染めて大はしゃぎした。

 リンは観客に向かって腕を広げ、深々と挨拶(あいさつ)をした。観客から声援が出た。

 リンはひととおり客席を見渡したあと、胸の前で手を組んで、舞台にひざまずき、祈るようなポーズをとった。


(あの時のポーズだ…… )


 とアルスは思った。

 兵に追われていた時に、暗い路地裏の袋小路でとったポーズと同じだった。


 何が始まるんだろう、と皆が見守る中……。リンは、歌った。

 今までに聞いたこともないような、透明感のある美しい声だった。

 それはまるで小鳥が窓辺で歌を歌っているかのような。

 それはまるで女神様の子守唄のような。

 優しくて、温かくて、懐かしい記憶を思い出させてくれるような……。


 ある者は静かに涙を流し、またある者は目を閉じてパートナーと抱き合った。

 観客たちは最初こそ驚きざわついていたが、次第にリンの歌声に聞き惚れていった。


 ふと、空から花が降ってきた。


「あれ、花だ。空から花が降ってきた」

「これはどういう仕掛けだ? 」

「なんて素敵なの…… 」


 観客から様々な声があがった。


 続いてリンは、歌いながら舞台の上で踊りだした。

 それにあわせて、空を舞う花も風に誘導(ゆうどう)されているかのように、客席の周りを舞い続けた。

 花の(かぐわ)しい香りがあたりを包み込んだ。


「すごい! まるで魔法のようだ! アルス、あの子は一体何者なのさ? 」


 カストルは大興奮でリンに釘付けだった。


「わからない……」アルスは圧倒されて、何も言えなかった。「僕も初めて見たよ……」


 リンの踊りは軽快なステップで、春の訪れを祝うかのような、見るものを幸せにする力を持っていた。

 観客から自然に手拍子が起こると、より一層舞台が盛り上がった。

 やがてクライマックスが近づくと、リンの周りに花が集約していった。

 観客の盛り上がりも最高潮に達した。

 リンが歌の終わりに手を頭上にかかげたのと同時に、花は空へ舞い上がり、見事な花火が夜空を彩った。

 スペシャルな演出に観客たちは大歓声を上げた。アルスとカストルも心を奪われたように見惚れていた。


 この日のパフォーマンスがすべて終了し、一座のメンバーが舞台に勢ぞろいした。


「みなさん、今宵のショーはいかがでしたかな?」


 観客から大喝采(だいかっさい)が起こった。


「明日の夜もみなさんをお待ちしております。

今宵(こよい)とは違うラインナップで、素敵な夢の世界へご案内いたしましょう。

それではみなさん、おやすみなさい。素敵な夢を見れますように」


 メンバーたちが手を振り、舞台を後にした。


 興奮冷めやらぬ観客たちは、各々(おのおの)幸せな面持ちで帰路に着いた。

 アルスとカストルはその場に立ちすくしていた。

 とんでもないショーを見てしまったという衝撃(しょうげき)から、舞台の余韻(よいん)(ひた)っていたいとさえ感じていた。

 リンに会えたらいいや、という軽い気持ちで見に来たものの、メンバー1人1人はもちろん、リンの実力の高さにも心底驚いてしまった。


 アルスに迷いはなかった。


「カストル、少し時間をちょうだい。リンに会いに行きたいんだ」


 カストルは意表(いひょう)をつかれて驚いたようだが、すぐにうなずいた。


「ああ、行こう。僕も気になってたんだ。裏にいけば会えるんじゃないか? 」


 舞台の裏手には、一座が移動に使っている馬車が止まっており、舞台道具や、彼らが寝泊まりしてるテントもあった。2人は早速裏手に回った。


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