第25話 シレヌの宴
【前回までのあらすじ】
帝都ラインバルドを出たアルスとカストルは、お互いの過去の話をするのだった。
夕方セイガにたどり着いた2人は、「シレヌの宴」という旅一座が来ていることを知る。
舞台にスーツをまとい、シルクハットを被った男性が現れた。
「レディィーース・エーンド・ジェントルメェーーーン!
今宵も月が美しい夜がやってきました。
それはつまり? ……そう、『シレヌの宴』のショーが始まるって意味だ!
さあ、今宵我々を楽しませてくれるのは、どんな子たちかな?
イッツ・ショーーーー・ターーーーイム! 」
男性が舞台から姿を消すと、入れ替わりで2人の女の子が登場した。
背は1mほどで、2人とも似たような顔つきをしている。
顔にカラフルなペイントを施し、体型にフィットした白い衣装を身につけている。
先ほどの男性のアナウンスが入る。
「はじめにみなさんを魅了するのは、双子のナリー&ダリー!
彼女たちはとにかく体がやわらかい。
くれぐれも、真似しないようにね!元に戻らなくなっても保障できないからね」
観客から笑いがこぼれる。
ナリー&ダリーの2人は、手始めに軽く準備体操を披露してくれた。
何気ない一連の動作が続く中、その流れで足を180度開いて舞台に寝そべったり、うつむけの状態のまま腰を持ちあげて頭の上に両足を持ってきたりと、凄技をつぎつぎ披露してくれた。
双子ならではの息のあったパフォーマンスは安定感があり、ときおり観客から短い悲鳴が上がったりしたが、それでも見続けてしまう魅力があった。
最後に舞台裏から中が透けて見える箱を持ってきたかと思うと、その中に体を折りたたんで完全に箱の中に収まってしまうボックスアクトも見せてくれた。
再び箱から順に足や腕を出し、舞台の上に生還した2人に拍手喝采の雨が降り注いだ。
◇◇
続いて、顔に白いペイントを施し、鼻に赤い飾りをつけた男が現れた。
ポップなストライプの三角帽子に、カラフルな模様が入った衣装が特徴的だ。
おどけた表情や仕草に、観客から思わず笑い声があがった。
「続きまして、一座を代表する道化師のポピー!
まず彼を見た目で判断するのは大きな間違いだ!
スリリングなパフォーマンスは完成させるのに10年もかかってるからね。
え? 12年だって? ……どっちでも一緒さ。
そんな努力家・ポピーのショーを、とくとご覧あれ! 」
ポピーは深々とお辞儀をすると、手始めにポケットからボールを1つ、2つと取り出し、器用にボールジャグリングを始めた。
追加で3つ、4つ、5つとボールが増えた。観客から拍手が起こった。
気をよくしたポピーは、舞台裏から大きな玉を持ってきた。
玉乗りをしようと試みるが、バランスを崩して何度も転がり、舞台に倒れ込んでしまう。
それをみて観客からドッと笑いが起こった。
ポピーは「おてあげ」といった様子でいたが、アイデアを閃いたのか、舞台袖に走っていった。
何が起こるのだろう、と皆が見守る中、勢いよくホップステップジャンプ、からの宙返りをして、玉の上に逆立ちをして立って見せた。
観客からは拍手が波のように起こった。
ポピーは器用にそのまま玉の上に足をつけると、玉乗りで舞台の上をぐるぐる回った。
裏方からジャグリングを渡され、3本を器用に回しながら、なおも舞台を回り続けた。
続いてジャグリングの先に火をつけ、いとも簡単にファイヤージャグリングを成功させた。
その状態のまま玉乗りで舞台を3周回り、最後に玉から降りて、火をフッ、フッ、フッ、と消した。
観客が総立ちで拍手をする中、ポピーはお辞儀をして退場していった。
◇◇
続いて登場したのは、宙づりにされた銀色の大きな輪っかだ。
地上から2〜3mほど高い位置に吊られている。
それと同時に、妖艶な雰囲気をまとった女性が登場した。
目元に紫色のメイクを施し、神秘的な雰囲気を醸し出していた。
「さあ、皆さん。ミレニアの不思議な世界へようこそ。
彼女の自慢はなんといっても猫のように柔軟な動きと、重力を感じさせない演出が魅力的だ。
くれぐれも、息をするのを忘れないようにね! 」
紹介されてもイマイチピンとこなかったが、ショーが始まるとその理由がよくわかった。
宙づりにされた輪の下にいたミレニアは、しばらく舞台上で奇妙なダンスを披露したあと、輪の下部分を掴んでそのまま体を回転させた。
輪がくるくると回るのに合わせて、足を広げたり、片手で支えたりとパフォーマンスをしてみせた。
続いて腕力で体を持ち上げて、輪の中心部分に立ちあがった。観客よりも高い位置にいることになる。
回転する輪の縁に絡みついたり、足を引っ掛けて逆さ吊りになったまま回ったり、回転を早めたりし、観客は無意識のうちに不思議な動きの数々に魅了されていた。
輪が高速回転するとミレニアの姿すら残像でしか捉えられなかったが、回転の度にポーズを変えており、まるで美しい万華鏡の虜になっているかのような感覚に陥った。
パフォーマンスが終わると、観客たちはハッと現実に戻された。
本当に息をするのを忘れていたかもしれない。
拍手が起きた頃には、ミレニアは舞台から退場していた。
「すごいショーだったね」隣のカストルが言った。
「それにしても、アルスが言ってた子はまだ出てないんじゃないかい? 」
「うん、そうだね。まだ出番じゃないみたい」
「一体どんな子なんだろー? これだけ実力派揃いだと、ますます楽しみになってきたなー」
アルスも、気にはなっていた。
ラインバルドで出会ったものの、実質どんなパフォーマンスをする子なのかはわからなかった。
「さぁーてみなさん、ここまでのショーは楽しんでいただけたかな? 」
再びアナウンスがきこえた。
「今宵最後を飾るのは、今一番の人気を誇る、大注目の少女……リン!
彼女の魅力はなんといっても、おそらく世界中探しても彼女だけであろう、その美しい歌声。
それと、魔法にかかったような素晴らしい演出。
我々でさえも、どういう仕掛けなのか全くわからないのだから困ったもんだよ。
それでは登場してもらおうか! 奇跡の歌姫、リン! 」
拍手喝采に包まれて、リンが舞台に登場した。
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