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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第6章 花の街セイガ
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第24話 カストルの過去

 カストルと城を後にしたアルスは、帝都ラインバルドを抜け、隣の街・セイガを目指した。

 毎年春に行われるフラワーフェスティバルが特に有名で、街中が花で飾られ、華やかな(もよお)しが行われるという。

 またラオンダール帝国の東の端に位置しているので、今後の旅の準備をするにもちょうどいい街だった。

 それともうひとつの理由があった。


「ある人と会う約束をしているんだ」


 アルスがそういうと、カストルはしばしポカンとした表情をしたが、次第に顔がカーッと赤くなった。


「えー! もしかして恋人? まだ若いのに恋人がいるの? 」


 カストルがややショックを受けた面持ちだったので、アルスは急いで否定した。


「違うって。ラインバルドに来た時にたまたま出会ったんだよ。

城に行く前に、理不尽(りふじん)な理由で兵に襲われてる子がいてね。助けてあげたんだよ」


「へー! アルスもなかなか男らしい一面があるじゃないか。

その子からしたら、アルスは命の恩人なんだな。……応援してるからな、このこのっ」


「だから、そんなんじゃないって! 」


◇◇


 しばらく道なりに進んだあと、道の端に座り込み、途中で昼食をとった。

 城のコックが腕をふるって作ってくれたサンドイッチだ。

 新鮮な野菜やチーズが挟まれており、とても美味しかった。


「アルスってさ、故郷なくなったじゃん。そのあとどこで暮らしてたの? 」


 サンドイッチを頬張りながら、カストルが尋ねた。

 アルスは水で喉を潤し、一息ついてから話を始めた。


「アシュヴァルトで保護されたあと、森の賢者であるじーちゃんにひきとられたんだ。

ラオンダール帝国の北の端にある小さな家で、ずっと2人で住んでたんだ」


「へー。育ての親ってやつだね。10何年一緒にいたんじゃ、別れるのもつらかっただろうに」


「うん……。別れは突然だったんだけど、ひと段落ついたら、必ず会いにいくんだ。

それまで元気でいてくれるといいな…」


「きっとじーちゃんも、アルスが戻るのを待ってるはずだよ。

血が繋がってないとはいえ、家族には変わりないんだもん」


「そうだね。……そうだといいな。カストルはさ、どんな暮らしをしていたんだい? 」


「…… 」


 急にカストルが口をつぐんだ。目線を下げて、寂しげな表情を浮かべている。


「ご、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。

話にくかったら、無理しなくていいよ」


「いいんだよ。どこかで言わなくちゃいけないと思ってたし。

……僕は、昔から兄上や大臣たちから(うと)まれながら育ったんだ。

 昔から兄上たちは勉強ができて、スポーツも万能だった。

僕は何をやってもダメで、常に遅れを取ってて、みんなの笑い者にされてた。

誰かが陰で、『皇帝陛下の息子たちは素晴らしい才能があるけど、一番下のはダメだ』って言ってるのも聞こえて。

でも、母上だけが常に僕の味方だった。

『勉強ができても、スポーツができても、皇帝にはなれない。

一番大事なのは心。おまえが持つ優しい心が、みんなを救うんだよ』って、ずっと言ってくれてたんだ。

……でも僕が小さいときに流行病(はやりやまい)で死んでしまった。


それからというもの、何もする気が起きなくてさ。

城の生活も嫌になって、よく街に遊びにいってた。

街の人はみんな優しいんだよ。思いやりがあって、僕を笑ったりいじめたりする人は1人もいなかった。

でも、すぐ兵に見つかって、城に連れ戻されてた。

城に戻ると、怖い顔した兄上たちが待ってて、僕をいじめるんだ。

誰も通らないような場所にある納屋(なや)に閉じ込められたこともあった。


でも、そんな時は父上が必ず見つけにきてくれたんだ。

公務がたくさんあるはずなのに、手や服を黒く汚して、相当長い間僕を探してくれてたんだって悟った。

……そんな父上を見てしまったら、いつまでもこのままじゃいけないな、って思いはじめて……。


だからさ、こうして旅に出ることができて、嬉しいんだ。

大嫌いな城を抜け出せたっていうのもあるけど、父上が僕を認めてくれたってのもあって」


 アルスは、カストルの話をきいてしばらく何も言えなかった。

 心なしか、目の前の景色がやんわりと(うる)んで見えた。

 カストルはそんなアルスの様子を見て、何も気づかないふりをして言った。


「さ、この話はもう終わり。早く食べて先を急ごうぜ」


◇◇


 セイガについたのは夕暮れ時だった。

 街は綺麗に整備され、道の両脇や各家庭の窓には必ず花壇が置かれていた。

 また、家の白い壁に花を模したペイントが施されており、非常に華やかな街だった。

 ひとまず宿に荷物を預けたあと、街を散策することにした。なにやら広場がにぎわっているみたいだ。


「『シレヌの宴』っていう旅一座が来ているのよ」


 広場にいた女性が教えてくれた。


「たしか明日までだってきいたわ。夜になると素敵なショーを見せてくれるのよ」


「へー、そうなんですか。ありがとうございます。

アルス、もしかして例の子がいるんじゃないか」


「うん、いてるかも。行ってみよう」


 広場にはすでに大勢の観客が集まっていた。

 木を組み上げてつくった舞台が用意されており、ろうそくの明かりがそれを照らしている。


 やがて、ショーが始まった。

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