第24話 カストルの過去
カストルと城を後にしたアルスは、帝都ラインバルドを抜け、隣の街・セイガを目指した。
毎年春に行われるフラワーフェスティバルが特に有名で、街中が花で飾られ、華やかな催しが行われるという。
またラオンダール帝国の東の端に位置しているので、今後の旅の準備をするにもちょうどいい街だった。
それともうひとつの理由があった。
「ある人と会う約束をしているんだ」
アルスがそういうと、カストルはしばしポカンとした表情をしたが、次第に顔がカーッと赤くなった。
「えー! もしかして恋人? まだ若いのに恋人がいるの? 」
カストルがややショックを受けた面持ちだったので、アルスは急いで否定した。
「違うって。ラインバルドに来た時にたまたま出会ったんだよ。
城に行く前に、理不尽な理由で兵に襲われてる子がいてね。助けてあげたんだよ」
「へー! アルスもなかなか男らしい一面があるじゃないか。
その子からしたら、アルスは命の恩人なんだな。……応援してるからな、このこのっ」
「だから、そんなんじゃないって! 」
◇◇
しばらく道なりに進んだあと、道の端に座り込み、途中で昼食をとった。
城のコックが腕をふるって作ってくれたサンドイッチだ。
新鮮な野菜やチーズが挟まれており、とても美味しかった。
「アルスってさ、故郷なくなったじゃん。そのあとどこで暮らしてたの? 」
サンドイッチを頬張りながら、カストルが尋ねた。
アルスは水で喉を潤し、一息ついてから話を始めた。
「アシュヴァルトで保護されたあと、森の賢者であるじーちゃんにひきとられたんだ。
ラオンダール帝国の北の端にある小さな家で、ずっと2人で住んでたんだ」
「へー。育ての親ってやつだね。10何年一緒にいたんじゃ、別れるのもつらかっただろうに」
「うん……。別れは突然だったんだけど、ひと段落ついたら、必ず会いにいくんだ。
それまで元気でいてくれるといいな…」
「きっとじーちゃんも、アルスが戻るのを待ってるはずだよ。
血が繋がってないとはいえ、家族には変わりないんだもん」
「そうだね。……そうだといいな。カストルはさ、どんな暮らしをしていたんだい? 」
「…… 」
急にカストルが口をつぐんだ。目線を下げて、寂しげな表情を浮かべている。
「ご、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。
話にくかったら、無理しなくていいよ」
「いいんだよ。どこかで言わなくちゃいけないと思ってたし。
……僕は、昔から兄上や大臣たちから疎まれながら育ったんだ。
昔から兄上たちは勉強ができて、スポーツも万能だった。
僕は何をやってもダメで、常に遅れを取ってて、みんなの笑い者にされてた。
誰かが陰で、『皇帝陛下の息子たちは素晴らしい才能があるけど、一番下のはダメだ』って言ってるのも聞こえて。
でも、母上だけが常に僕の味方だった。
『勉強ができても、スポーツができても、皇帝にはなれない。
一番大事なのは心。おまえが持つ優しい心が、みんなを救うんだよ』って、ずっと言ってくれてたんだ。
……でも僕が小さいときに流行病で死んでしまった。
それからというもの、何もする気が起きなくてさ。
城の生活も嫌になって、よく街に遊びにいってた。
街の人はみんな優しいんだよ。思いやりがあって、僕を笑ったりいじめたりする人は1人もいなかった。
でも、すぐ兵に見つかって、城に連れ戻されてた。
城に戻ると、怖い顔した兄上たちが待ってて、僕をいじめるんだ。
誰も通らないような場所にある納屋に閉じ込められたこともあった。
でも、そんな時は父上が必ず見つけにきてくれたんだ。
公務がたくさんあるはずなのに、手や服を黒く汚して、相当長い間僕を探してくれてたんだって悟った。
……そんな父上を見てしまったら、いつまでもこのままじゃいけないな、って思いはじめて……。
だからさ、こうして旅に出ることができて、嬉しいんだ。
大嫌いな城を抜け出せたっていうのもあるけど、父上が僕を認めてくれたってのもあって」
アルスは、カストルの話をきいてしばらく何も言えなかった。
心なしか、目の前の景色がやんわりと潤んで見えた。
カストルはそんなアルスの様子を見て、何も気づかないふりをして言った。
「さ、この話はもう終わり。早く食べて先を急ごうぜ」
◇◇
セイガについたのは夕暮れ時だった。
街は綺麗に整備され、道の両脇や各家庭の窓には必ず花壇が置かれていた。
また、家の白い壁に花を模したペイントが施されており、非常に華やかな街だった。
ひとまず宿に荷物を預けたあと、街を散策することにした。なにやら広場がにぎわっているみたいだ。
「『シレヌの宴』っていう旅一座が来ているのよ」
広場にいた女性が教えてくれた。
「たしか明日までだってきいたわ。夜になると素敵なショーを見せてくれるのよ」
「へー、そうなんですか。ありがとうございます。
アルス、もしかして例の子がいるんじゃないか」
「うん、いてるかも。行ってみよう」
広場にはすでに大勢の観客が集まっていた。
木を組み上げてつくった舞台が用意されており、ろうそくの明かりがそれを照らしている。
やがて、ショーが始まった。
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