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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第5章 帝都ラインバルド
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第23話 とある場所で

【前回までのあらすじ】


会議が終わったあと、アルスとカストルは2人だけで早めに出発をするのだった。

「ついにこの時がきた」


 薄暗い地下牢(ちかろう)に声が響いた。黒いローブをまとった男が独居房の前に立ち、(いびつ)な形をした牢の鍵を取り出した。

 鍵穴に差し込むと、扉に鎖のような模様が浮かびあがった。鍵をひねるとその模様は自由に動き出し、やがてロックが外れる音がした。

 男は鉄製の重い扉に手をかけた。長らく開けられたことがなかったのか、扉はところどころ()びており、静寂を壊しながらゆっくりと開いていった。

 男は手にしていた灯りで中を確認した。牢の奥には、鎖を巻かれ、手枷(てかせ)足枷(あしかせ)で一切身動きがとれないように宙に縛られている少年がいた。

 顔はうつむき、生気がなく、長くのびた髪は床まで届かんとしている。

 まともな食事も与えられておらず、手足は骨の形が浮き出ており、かろうじて命を(なが)らえている状態だった。

  

 フードの男はゆっくりと中に入り、少年を見上げた。何かをつぶやくと少年を拘束していた(かせ)と鎖が黒い煙のようになって消え、自由を得た少年は重力に従って落下し、男に抱き留められた。


「今までよく耐えたな、我が息子よ。さあ、来なさい。みんなに紹介しよう」

 

 久しぶりに人の声を聞いた気がする。しかし何を言っているのかうまく聞き取れなかった。

 なんとも言えない温もりが伝わってくる。あまりの懐かしさに、込み上げてくるものがあった。


 男は少年を背負い、元きた道を歩いて行った。


 とても懐かしく、それでいて不思議な感覚がした。

 長らく光を見なかった目は視界も悪く、景色がぼんやりと(かす)んで見えた。

 生きているのか、死んでいるのか。それすらもわからなかった。

 風が正面から吹きぬけていった。冷たい風だ。肌の表面がヒリヒリと痛んだ。

 陽がでているのだろうが、寒さが優っている。

 指先の感覚が麻痺(まひ)し、足の下から冷気が()い上がってくるかのようだ。


◇◇


 しばらく進むと男が歩みを止めた。

 そういえば風が(さえぎ)られている。屋内だろうか。

 周りに数人の気配がする。

 呼吸のタイミングや香りが違うことから、男女様々な年齢の者が集まっているらしい。


 男は皆の姿が見えるであろう場所に立つと、話し始めた。


「皆の者、待たせたな。

まず紹介しよう。ここにいるのは私の大切な息子だ。

今はまだしゃべることも、自分の意思で動くこともままならないが、いずれ元に戻るだろう。

とても優秀で素晴らしい力の持ち主なのだ。どうか仲間にいれてもらいたい」


 皆の息遣いが変わった。警戒心を示す者から、様子を伺っているであろう者。

 突如紹介された相手に対し、手探りをしているといったところか。



「さて、集まってもらったのはほかでもない。

おまえたちに、“光の使者”を殺してもらいたいからだ。

彼らは世界中に散らばる宝石を集め、再びこの世界を光で支配しようとしている。

大いなる脅威だ。なんとしてもくいとめねばならない。

この地を再び“エシュア”のものにするために、我々は今立ち上がらねばならない」


 男が話している声は耳に入らなかった。

 それよりも今までのことをゆっくり思い出そうとしたが、頭がズキンと痛み、よく思い出せなかった。

 確実にわかることは、薄暗い空間にいたことだ。

 おそらく何年も。かなり長い期間だ。…… それはなぜだったか? 思い出せない。


 男は引き続き何かを話していたが、だんだん意識が朦朧(もうろう)とし、そこで記憶がなくなった。


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