第23話 とある場所で
【前回までのあらすじ】
会議が終わったあと、アルスとカストルは2人だけで早めに出発をするのだった。
「ついにこの時がきた」
薄暗い地下牢に声が響いた。黒いローブをまとった男が独居房の前に立ち、歪な形をした牢の鍵を取り出した。
鍵穴に差し込むと、扉に鎖のような模様が浮かびあがった。鍵をひねるとその模様は自由に動き出し、やがてロックが外れる音がした。
男は鉄製の重い扉に手をかけた。長らく開けられたことがなかったのか、扉はところどころ錆びており、静寂を壊しながらゆっくりと開いていった。
男は手にしていた灯りで中を確認した。牢の奥には、鎖を巻かれ、手枷・足枷で一切身動きがとれないように宙に縛られている少年がいた。
顔はうつむき、生気がなく、長くのびた髪は床まで届かんとしている。
まともな食事も与えられておらず、手足は骨の形が浮き出ており、かろうじて命を永らえている状態だった。
フードの男はゆっくりと中に入り、少年を見上げた。何かをつぶやくと少年を拘束していた枷と鎖が黒い煙のようになって消え、自由を得た少年は重力に従って落下し、男に抱き留められた。
「今までよく耐えたな、我が息子よ。さあ、来なさい。みんなに紹介しよう」
久しぶりに人の声を聞いた気がする。しかし何を言っているのかうまく聞き取れなかった。
なんとも言えない温もりが伝わってくる。あまりの懐かしさに、込み上げてくるものがあった。
男は少年を背負い、元きた道を歩いて行った。
とても懐かしく、それでいて不思議な感覚がした。
長らく光を見なかった目は視界も悪く、景色がぼんやりと霞んで見えた。
生きているのか、死んでいるのか。それすらもわからなかった。
風が正面から吹きぬけていった。冷たい風だ。肌の表面がヒリヒリと痛んだ。
陽がでているのだろうが、寒さが優っている。
指先の感覚が麻痺し、足の下から冷気が這い上がってくるかのようだ。
◇◇
しばらく進むと男が歩みを止めた。
そういえば風が遮られている。屋内だろうか。
周りに数人の気配がする。
呼吸のタイミングや香りが違うことから、男女様々な年齢の者が集まっているらしい。
男は皆の姿が見えるであろう場所に立つと、話し始めた。
「皆の者、待たせたな。
まず紹介しよう。ここにいるのは私の大切な息子だ。
今はまだしゃべることも、自分の意思で動くこともままならないが、いずれ元に戻るだろう。
とても優秀で素晴らしい力の持ち主なのだ。どうか仲間にいれてもらいたい」
皆の息遣いが変わった。警戒心を示す者から、様子を伺っているであろう者。
突如紹介された相手に対し、手探りをしているといったところか。
「さて、集まってもらったのはほかでもない。
おまえたちに、“光の使者”を殺してもらいたいからだ。
彼らは世界中に散らばる宝石を集め、再びこの世界を光で支配しようとしている。
大いなる脅威だ。なんとしてもくいとめねばならない。
この地を再び“エシュア”のものにするために、我々は今立ち上がらねばならない」
男が話している声は耳に入らなかった。
それよりも今までのことをゆっくり思い出そうとしたが、頭がズキンと痛み、よく思い出せなかった。
確実にわかることは、薄暗い空間にいたことだ。
おそらく何年も。かなり長い期間だ。…… それはなぜだったか? 思い出せない。
男は引き続き何かを話していたが、だんだん意識が朦朧とし、そこで記憶がなくなった。
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