第21話 作戦会議
【前回までのあらすじ】
夜の晩餐会で皇帝の3人の息子を紹介されたアルス。
その中に、中庭の教会で出会った少年も含まれていることに驚くのだった。
さらに部屋に戻ると、何者かが侵入しており、その者は杖を探していたことに気づく。
この城に長居することはできない。
用事が終わり次第、すぐに城を出ようと決意するのだった。
朝食のあとに、会議が開かれた。
会議の席には晩餐会に座っていた大臣や皇帝の息子3人、そして軍隊をまとめる元帥や大佐も出席していた。
円卓には世界地図が開いて置かれ、それを取り囲むようにして各々席についていた。
皇帝に促され、アルスは一通り説明をした。
故郷のエルディシアは竜の紋章がついた黒い異国の兵に滅ぼされたこと。
アシュヴァルトで王家の宝である「ダイヤモンド」を引き継いだこと。
自分は闇を消す“光の使者”に選ばれたこと。闇の勢力が近づいているであろうこと。
その流れで背中から杖を取り出し、全員に見せると、一様に驚きの声があがった。
それまで空言だと思っていた人も、杖を見ると現実味を帯びたのか、見る目が変わっていった。
ここまで話したところで、様々な声があがってきた。
「黒い異国の兵……。竜の紋章……。
兵として各地を回ることが多いが、そのような国はみたことがない。
確固たる証拠が見つからないのも、気味が悪いものだ」
大佐が首を傾げながら言った。大臣も続けて発言した。
「エルディシアの滅亡は我々への宣戦布告とも取れる。
あれから14年経過しているが、これで終わりだとは到底思えない。
異国の兵はおそらく力をつけて次の計画を立てているはずだ。
つまり、どこかの国が、いつ襲われてもおかしくない状況だ
相手が何者なのか、どこにいるのかさえわからない今、我々はどう対策すべきなのか……」
これを聞いて一同は黙り込んだ。
アルスはここで宝石の説明をした。
6つの宝石を集めると、闇を打ち消す力が得られること。そして、持ち主を探す必要があること。
今わかっているのは
・ルビーは東の果ての火山の国
・サファイアは北の氷で閉ざされた国
・アメシストは西にある城壁で囲まれた国
・エメラルドとトパーズは行方がわからない
・持ち主は必ずしも王家とは限らないこと
「僕1人の力では、世界中の国を回るのは不可能です。
途中でどのような災難に襲われるかもわかりません。
しかし、皆さんの協力を得られれば、すぐに見つかることでしょう。
これは僕個人のためではなく、この世界を救うために必要なことなのです。
どうか、力を貸していただけないでしょうか」
これをきいて、大臣たちが各々意見を出し合った。
「東の果ての国は、おそらくファイデン王国のことだろう。ここからだと広い砂漠を越えないといけないが」
「サファイアは北にあるゴルドヴァキア王国だろう。しかし年中吹雪に覆われている霊峰を越えねばならん」
「アメシストはまさかあの国か? たしかどの国とも関わりを持っていないのではなかったか? 」
「確実にわかるところから探していけば、残りも自ずとわかるのではないか? 」
「ならばこうしようではないか」
皇帝が話をまとめた。
「ここから東西南北、それぞれ4方向に分かれて各国を訪れようではないか。いける国は全て回るのだ。
東ルートは山岳地帯の聖都ガルトデウス、砂漠のオアシス国家ダルウィン、極東の火山の国ファイデン王国まで。
西ルートは海沿いの国を経由して、極西のルマグアートまで。
アメシストはおそらく途中にあるレガルディアだと思うが、簡単に入れてくれないだろう。
あそこは200年も前からどの国とも国交を断絶している。
南ルートは港町リンダラスや水都ファランシス。
各地から商人が集まっているから、手がかりを得られるだろう。
北ルートは氷の王国ゴルドヴァキア。霊峰を超えられない場合、迂回ルートを探そうではないか。
各方面、途中の小さな町や村も訪ねること。
なにかあれば兵を使って逐一進捗を報告するように」
続いてだれだれはどこどこ、いついつ出発で……と話が進んでいく。
これが帝国を束ねる皇帝の力……。アルスはおもわず関心してしまった。
話の内容をざっくりまとめると、
・大佐率いる連隊は北ルート
・第1皇子アルディスと兵長Aの分隊は西ルート
・第2皇子ベクレスと兵長Bの分隊は南ルート
「アルス殿には東ルートを頼もう。
一番長く過酷な道のりではあるが、国も多いうえに、有力な情報を得られるはずだ。
同行するのは兵長Cの分隊とそれから……。そうだ、カストル。お前が行きなさい」
「えっ」
意表をつかれたのか、皇帝の第3皇子カストルが驚きの声をあげた。
上の兄たちも少し驚いた表情をし、すかさず父である皇帝に抗議をした。
「お言葉ですが父上、カストルにこのような役が務まるでしょうか。
皆さんも承知のように、カストルは勉強もせず、毎日のらりくらりしている身。
知らぬ間に城を抜け出しては、下民たちと遊んでばかりおります。
このような者に、世界を救う任務を果たせるはずがありません」
第1皇子のアルディスは実情を交えながら訴えた。
カストルは視線を落とし、兄の言葉を聞かまいとしているようだった。
アルスはそれを見て、カストルが普段からよく思われていない人物なのだと悟った。
続いて第2皇子のベクレスが言った。
「わたくしも兄上と同じ意見です。
アルス様はわたくし達よりも若くして、この世界を救うために人並み外れた責任感と行動力を持ち合わせていらっしゃいます。
この先どんな危険が待ち受けているかもわからずに、ですよ。
そのようなお方に、カストルを付けるのは考え直していただけませんか。
もしアルス様に万が一のことがあれば、どう責任をとるおつもりですか」
カストルはさらに申し訳なさそうな表情で、視線をさらに下に落とした。
少し間があったあと、皇帝が口を開いた。
「お前たちの言いたいことはわかる。しかし、ちょうどいい機会ではないか。
これを機にカストルが大いに成長してくれるかもしれないし、そうでもないかもしれない。
だがわたしがお前たち3人をここに呼んだのには、それなりに理由があることを知ってほしい。
わたしが第一線から引いたあと、誰がこの国を、そしてこの世界の均衡を守っていくというんだね。
……ここまでいえば、わかってもらえるだろうか。
だからカストル、お前がアルス殿と一緒に回りなさい。そして世界を知りなさい。
第1皇子のアルディスのように、この城の中で勉強をしているだけでは、世界の全てを知ったとは言えん。
第2皇子のベクレスのように、兵に守られながら各地を回るようでは、本当の厳しさは理解できん。
2人とは違う道を歩んでいるおまえだからこそ、アルス殿と共に旅をしてもらいたいのだ。
だから、わたしはおまえを選んだのだ」
「…… 」
カストルはまだ視線を下げてうつむいている状態だったが、肩を震わせて静かに泣いていた。
2人の兄たちはまだ納得いかないといった様子だったが、これ以上反論する余地もないので、しぶしぶ黙っていた。
アルスはホッとした気持ちになった。
「さて、善は急げだ。これにて会議は終了とする。
皆の者、これはこの世界を守る一大プロジェクトだ。心してかかるように」
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