第20話 晩餐会
【前回までのあらすじ】
中庭にある教会で、新しい神の加護を得ることができたアルス。
しかしその直後、椅子で寝ていた少年に声をかけられたのだった。
夜7時になった。アルスは時間前に部屋を訪ねてきた執事に連れられて、大広間へ向かった。
縦に長いテーブルに白い生地のテーブルクロスが敷かれ、食器やお皿、キャンドルなどが配置されていた。
一番奥はおそらく皇帝が座る席で、豪華な装飾の椅子が置かれていた。
左右の長辺の部分には10席ずつ椅子が置かれ、すでに大臣など位の高い人たちが座っていた。
アルスが案内されたのは、皇帝と向き合う位置にある手前の短辺の席だ。
アルスが座ると、大臣たちは物珍しそうにアルスを見たり、チラッと一目みて踏ん反り返る人まで様々だった。
少しして皇帝が奥の部屋から姿を現し、上座の席に腰掛けた。
「諸君、今日もよく国のために頑張ってくれた。
さて、皆に紹介したい方がいる。私の目の前に座る方……アルス殿だ。
彼のことをまだ知らない者に教えよう。
彼は、今はなきエルディシアの最後の生き残りであり、れっきとした王家の者である。
どうしても我々に協力を得たいことがあるため、遠路はるばる訪ねてきてくれたのだ」
ざわざわざわ、と大臣たちが騒ぎ始めた。
「エルディシア? あのエルディシアか? 」
「王家は国もろとも滅んだのではなかったか? 」
アルスは聞こえてくる情報をシャットアウトしたい気持ちにかられた。
「さあ、今夜はアルス殿を歓迎して、楽しい宴にしようではないか」
各々酒の入ったグラスをかかげ、「乾杯」と言った。
アルスはまだ未成年なので、高級なジュースを振る舞われた。
やがて一段落したところで、自己紹介が始まった。
内務大臣、外務大臣、司法大臣、財務大臣、経済大臣、その他内政に関わる人たち。
そして、「私の大切な3人の息子たちだ」と言い、皇帝から見て左側に座る3人を紹介した。
「まず1番上のアルディス。次期皇帝有力候補として帝王学を学ばせている」
アルディスは生真面目な青年で、表情を変えることなく、アルスに会釈をした。
「続いて2番目のベクレス。将来はアルディスの右腕として支えるために、兵たちと共に各地を回り、この世界の全てを見せているところだ」
ベクレスも正義感の強そうな見た目で、キリッとした目でアルスに会釈した。
「最後に一番下のカストル」
カストルはやる気がなさそうにアルスを見たが、驚いたように目を見開いた。
それはアルスも同じだった。
中庭の教会で出会った少年がカストルといい、皇帝の3番目の息子だというのだから。
紹介が終わったところで、料理が次々と運ばれてきた。
まずは温かいジャガイモのスープ。続いて冷やした野菜のマリネ。メインに近くの山で採れた鹿肉のグリル。最後にフルーツの甘蜜がけ。
酒も次々と運ばれてきて、大臣たちはすぐほろ酔いになった。
アルスに絡んでくる者も数名いたが、適度に流すことにした。
◇◇
宴は長く続き、ようやく部屋に戻った頃には日付が変わろうとしていた。
アルスは心身ともにクタクタで、早くベッドに入りたい気持ちでいっぱいだった。
部屋の扉を開けると、正面にある窓が開いており、カーテンが風に揺れて泳いでいた。
「あれ、窓を開けっ放しだったかな? 」と思ったのも束の間、続いてベッドの付近に動く影が目に入った。
ハッとして瞬時に疲れがふっとんだ。
「誰だ……! 」
アルスは背中の杖に手をかけ、相手に問うた。
何者かはとっさにこちらを向いた(ように見えた)が、外からの逆光で顔ははっきりと判別できなかった。
相手は何かをブツブツつぶやくと、そのまま開いている窓から外に飛び降りた。
「ちょっ……!! 」
アルスは急いで窓にかけよったが、外には誰の姿も見られなかった。
雲ひとつない空には満月がかかり、中庭を明るく照らしていた。
「今のは誰だったんだろう……。いや、そんなことより」
急いでテーブルの上のろうそくに火をともし、ベッドの付近を照らした。
何かを探していたらしく、床に物が散乱している。
壁にかかっていた絵画もゆがんでおり、あらゆる箇所をくまなく探していたと見受けられる。
ベッドの下に隠していたバッグも、もののみごとに物色され、中のものが周りに散らかっていた。
たいしたものを入れていなかったのが幸いだった。
わずかな金銭はおろか、じーちゃんからもらった短剣もバッグの中に残ったままだった。
……とすると、犯人が探していたのはただひとつ。
「この杖を、探していたんだ……」
アルスは背筋がゾクッとした。
肌身離さず身につけていて正解だった。
どうやらこの杖が欲しくてたまらない人がいるらしい。
「杖の存在を知っている人は限られているはずだ。
今日謁見の間で杖を見た人の中の誰かかもしれない。
大臣かもしれないし、厳重に警備にあたっていた大勢の兵かもしれない。
それとも、話を聞きつけた誰かか……」
いや、相手が誰だとしても、この城に長居することはできない。
隙をついて、あらゆる手を尽くしてでもこの杖を奪いにくるだろう。
アルスは眠れる気分ではなかったが、意識はそれに反し、気づけば杖を抱くように眠りに落ちていた。
陽が昇る頃に目を覚ましたが、幸い杖は手の中にあった。
午前中に会議があると言っていた。それが終われば、この城を、国をすぐに出て行こう。
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