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光の杖のアルス  作者: 伏神とほる
第5章 帝都ラインバルド
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第19話 中庭の教会

【前回までのあらすじ】


皇帝と謁見し、宝石を探す旅の協力を得ることに成功したアルス。

しかしその裏で、よからぬ陰謀が働こうとしているのだった。


 謁見(えっけん)の間を後にしたアルスは、敷地内の別の建物にある来賓(らいひん)用の部屋に案内された。


「夜7時にお迎えにあがりますので、それまではこちらの部屋でおくつろぎください。

あと、(うたげ)にはこちらの服に着替えてお越しください。

なお、各部屋は立ち入り禁止ですが、中庭はどなた様もご自由に散策できますので、気晴らしにぜひ」


 執事(しつじ)は「それでは」と締めくくり、部屋をあとにした。


 アルスはゆっくりと部屋を見渡した。

 床も壁も白く、金色の装飾で窓の縁や扉をあしらっている。

 天井には金の装飾とともに華やかな絵画が描かれており、金色のシャンデリアが1つぶらさがっていた。

 部屋の奥には天蓋(てんがい)付きのベッドがあり、人が3人は横になれるほどの幅があった。

 真ん中に置かれている木目の美しいテーブルと椅子は、曲線美が強調されており、使うことすら躊躇(ちゅうちょ)してしまうほどだ。

 壁にかけられた大小様々な絵画は、客人を歓迎しているというよりも、こちら側を監視しているかのような雰囲気をかもし出していた。


 アルスは天蓋(てんがい)付きのベッドの端に腰掛けた。正直、落ち着かなかった。

 じーちゃんの家もアシュヴァルトの長老様の家も、そしてレリーヌの家とも比べ物にならないくらいほど豪華で手が込んでいるが、目がチカチカして居心地は良くない。

 くつろぎやすさよりも見栄を優先した部屋なのだ、と結論づけた。


 アルスは杖を取り出して眺めてみた。

 ダイヤモンドの輝きをみていると、少しずつ心が落ち着いていく気がした。

 いざという時のために、この杖は肌身離さず持ち歩くことにしよう。


 アルスは執事(しつじ)から受け取った服に着替えた。

 (なめ)らかな生地の白いシャツとブラウンのズボンだ。ズボンのすそには金の刺繍が入っている。

 その上から(そで)や襟元に白や金で繊細な刺繍が入ったブラウンのジャケットを羽織った。

 ジャケットは少しサイズが大きいようだったが、ずっと着るわけでもなし、問題ないだろう。

 ジャケットの上から杖を背負い、アルスは中庭に出ることにした。

 一応持ち物はベッドの下に隠すことにした。用心するに越したことはない。


◇◇


 中庭にはどの建物からも階段で降りられるようになっていた。

 綺麗に整備された庭園には季節の花が咲いており、中心に噴水もあった。

 隅の方にベンチもいくつか置かれていたので、貴族たちの(いこ)いの場になっているらしい。


 中庭の奥には教会があった。この城にいる人たちが祈りを捧げる場だ。

 確かラオンダール帝国は、太陽神ロレヌを信仰していたっけ。

 だとしたら、ここにも神様の像のようなものがあるかもしれない。


 幸い教会の扉は開いており、中には誰もいないようだった。

 教会は左右に長椅子があり、奥まで整然と配置されていた。

 アーチ状の柱の上にはステンドグラスの窓があり、太陽の光で床に優雅な模様を映している。

 奥が祭壇(さいだん)になっており、壁には太陽をモチーフにしているであろう、丸い円が3つ重なったような形の紋章が飾られている。


 祭壇(さいだん)はエルディシアの城で見かけたのと同じ、白い台座に男神の彫刻が施されているものだった。

 こちらの彫刻はしっかり健在で、頭に太陽の光を具現化したような、放射線状の後光が施されている。

 台座には美しい花が添えられていた。


「きっとこれがそうだ」


 アルスは一度背後を振り返り、誰もいないことを確認した。

 背中から杖を取り出し、祈りを捧げると、杖が呼応するように光り、声が響いてきた。


「私は太陽神ロレヌの精。あなたは新しい杖の持ち主ですか?」


「はい、アルスといいます」


「エルディシアの最後の王子、アルスですね。よくここまでやってきました。

杖の状態をみたところ、どうやらあなたは本当の力を使いこなせていないようです」


「……本当の力? 」


「エルディシアで“アンクの光”を授かったあなたに、太陽神“ロレヌの導き”を授けましょう」


 宙を浮く杖に、天からまばゆい光が降り注いだ。杖はゆっくりとアルスの手に戻った。


「これで問題ないでしょう。

あなたが闇に囲まれたとき、杖を振ると光の矢で闇を晴らすことができます。

あなたに光の加護があらんことを」


 アルスは杖を戻した。

 ふと彫像(ちょうぞう)の側面や裏側を見ると、周りには何やら文字が刻まれているようだが、解読はできなかった。エルディシアで確認した、走り書きの文字は見あたらなかった。

 そのときだった。


「あれ、あんた誰? 」


 ドキッとして振り返ると、前から3列目の長椅子に、1人の少年が座っていた。

 アルスより少し年上に見える。

 いつの間にいたのだろう。もしかして杖を見られてしまっただろうか?


「見かけない顔だな。もしかして客人?

ここで昼寝していたら、急に(まぶ)しくなるんだもん、びっくりして飛び起きたよ。

で、あんた。そこで何してるの? ここは部外者は立ち入り禁止のはずだけど? 」


「あ、そうだったんですね。すみません。

中庭を散策していたら、扉が開いていたので、つい入ってしまいました」


「ま、いーけど。正直誰が来ようと興味ないし。

しかし君、僕の昼寝を邪魔してくれた罪は重いよ。

あと1時間は寝られる予定だったんだから。あーあ、どうしよっかな〜」


 少年は立ち上がると、入り口へ歩いて行った。アルスは急いで近づいた。


「本当にすみません」


「もういいって。……あれ、その服」


「え? 」


 少年はアルスが来ている服に気づいたようだ。


「それ、兄上が気に入らないって言って使用人を困らせてた服だ。

まさか客人用に回されてたなんて。ウケる(笑)」


「ええっ? 」


 少年はスタスタ歩いて出ていった。アルスはその場に立ち尽くしていた。


 杖はどうやら見られていないようでmその点は一安心(ひとあんしん)だ。

 だけど今の人は何者だったんだろう。

 ここの城に住んでいる人で間違いはなさそうだが、どうも調子を狂わされるというか。



 アルスは用事も終えたことなので、部屋に戻ることにした。

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