表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/37

第三十二話 幾つもの処刑

 斉は塔のココロとも言うべき、真っ赤なコアや歯車が動く箇所を見つける。

 美衣は後ろでぜぃぜぃと呼吸を荒げ、脚も乱雑な姿で階段に腰掛けていた。

 斉はちらりと美衣の姿を見やる。


「見事な生足」

「あ!? 何だとこら?!」

「何でも無いよ、此処へ連れてきてくれて感謝してるといいたいんだ。いや、本当だよ。さて、ココロに触れるか」

 斉はコアに触れ、じぃっとコアや。美衣があちこちを照らしてくれる塔の内部を見つめる。


 コアに触れればスクリーンが空中に映し出され、エキシビジョンのようになっている。

 斉が目を瞑ってる限りは、スクリーンは稼働してくれそうだ。


『お前がいるから千湖が、斉様に捨てられるのだ! 君塚の姓を貰い恥ずかしくないのか! このうつけが!』

『ごめんなさい、ごめんなさい父上――!』

 何度も殴打される小さな少年は、幼き頃の刃鐘だ。

 刃鐘が白上家当主から片目を守るように片手で覆い隠しながら、殴られている光景。

 お世辞にも気分の良い光景ではなかった。

『お前はもういい、死ぬがよい、それが我が家にとっての最善だ!』

『父上! おやめくだ――がはっ』

『安心しろ、庭にくらいは埋めてやる』


 ――その首に手がかけられている瞬間に、刃鐘が塔に招かれた。

 塔のてっぺんに刃鐘は気付けばいて、刃鐘の傍に、過去の黒鳩が近寄る映像。


『――塔主様はどこへ消えなすった、これまた小さいのが』

『……けほっ、何、此処。どこ、どこ、なの』

『此処は世界の王になれる塔、君塚斉という我が子孫が塔主をつとめておったのですが、はてさてどこかへ行きなさったなぁ』

『世界の、王?』

『何かを願えば、一生涯叶え続けられる塔に御座い――最後に斉が何かを願っていたのは見ていたが、はて、どうしてこの子に塔主を譲られたのか』

『願えば、叶うの、か――それなら、生きたい。ずっと、ずっと、ずっといつまでだって生きたい!』


 美衣は映し出されている過去の刃鐘の願いに目を見開いた。

 一族の歴史を勉強してきた身でありながら、実際に経緯を見るのは心苦しいモノだ。

 だが、白上の者としては目を背けることは決してできない。



『では全人類が不老不死となりましょう』

『へ?』

『腐った身体で生きられないでしょう? 不老不死になれば皆様大変健やかに生きられます』

『……何で、全人類、なの』

『己には判りかねます、この塔は非常に塔主の本質を見なさる。貴方様が心の何処かで、皆平等になれとでも願ったのでしょう』

『そんな……! なしだ、なかったことに! なかったことにする!』

『それは無理な話に御座います、矛盾を越える矛盾で無い限り、塔はよっぽどの無茶を取り消しが出来ませぬ』

『――……それなら』


 美衣は目を細めて黒鳩に視線をやる。

 黒鳩自身も驚いていた、過去の己に――。

 こんな出来事ついぞ覚えてはおらぬ、とばかりに美衣へ首をふる。


『それなら、願いが取り消せるまで、他の願いで不老不死が解除されるか実験しつづける。実験台は、オレだ』

『宜しい、それでしたら叶えられそうです』

『黒いジャコピンの鳩、お前に刑を任せるよ。人の手を借りないと実験できないときは、お前に殺せるか試して貰う。ただ、お前だけが悲しい思いをしないように――毎度記憶は消す、これが願い』




「やめろ」


 斉はコアから手をばっと離した。


『斉と似た心を持つ奴は、いつ産まれる?』

『だいぶ未来ですよ――未来を見ますか?』

『うん、――ああ、やっぱり産まれるんだね、いつか。それなら、そいつが産まれるまでは人類が不老不死になりそうになる度に、この身を捧げて償おう』

『いつか貴方様の身体にがたがきたら、人類は不老不死となる』

『その頃にはそいつが産まれてる、皆の、俺の希望だ――そいつが塔主になり、人類の正義の味方となって、あくを倒せば平和な日々が戻る。それじゃ、最初の刑を行うか。最初は何にする? ギロチンかな』



「やめろ、刃鐘!!!!!」

 大声で叫んだ斉の慟哭は、とうに遅かった――刃鐘は散々死罪を体験した上で、不老不死になる未来を取り消せなかった身。

 諦観の価値観を持つ理由が分かり、美衣は機嫌悪そうにコアを蹴飛ばす。



「何だよ、あいつ……――試した結果、次の塔主へ渡すしかないって諦めたのかよ」

「惨い運命を引き受けたものだ、美衣さん、上へ急ごう。より惨いことを、龍臣さんにさせたいか?」

「絶対嫌だね!!!!」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ