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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
エピローグ

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第216話 導いてくれた人の想い

リュウトとソフィアが二人っきりの場面。結構久しぶりだと思いますよ!

「ふぅう……」

「お疲れさんだな、リュウト」

「お疲れ様です、隊長……」


 王都エメラフィールを包み込む熱気。

 大通りを行き交う民衆の歓声が響く中、俺は警備の詰め所を兼ねて設営された大型テントの椅子に深く身体を沈めていた。

 汗を拭う俺を労ってくれたのは直属の上司であるモーゼル隊長だ。

 体力的な疲労はまだ耐えられるけど、精神的な疲労は明らかに溜まりつつあった。


「いやぁ……王族のパレード護衛はさすがしんどかったですよ……」

「ハハッ、そうかい。大役だったな」


 そう、俺は遊軍調査部隊の仕事とは別枠でシャーロットたち勇者パーティの一員として、ルーフェン国王陛下やセレーヌ王女殿下の護衛を担っていたのだ。

 民の安全を守る警備に加え、一過性のテロをも警戒する要人護衛まで、まさにてんやわんやである。


「閉会の挨拶で陛下が再び壇上に登られるまでの間は一時休憩を言い渡されてるんだろ?どうするんだ?」

「どうするって言われましても、急に暇になっちゃいまして……」


 突然に空いた時間を持て余しかけていた時だった。


「お疲れ様ね、リュウト」

「ソフィア副隊長!」


 テントの布地を押し開けて姿を現したのはソフィア副隊長だった。


「副隊長も一時休憩ですか?」

「まあね。各班への巡回指示と本隊との連絡調整も一段落ついたからね」


 部隊のナンバー2として、他部隊の上層部と連携しながらこの巨大な祭りを仕切っていた彼女もかなりの強行軍だったはずだ。

 どこか疲労感を覗かせつつも、凛とした微笑みを浮かべている。

 そんな俺たちの様子を交互に見やったモーゼル隊長がニッと豪快に口元を緩めた。


「ソフィア、リュウト。せっかくだから、二人で近くの店なりに行って、息抜きでもしてこいよ。祭りが始まってからあんまり休めてないだろ?」

「「え?」」


 思わぬ提案に俺とソフィア副隊長の声が綺麗に重なった。


「いいから行ってこい。いざって時はこの俺が対処に乗り出すからよ。少なくとも一時間くらいは仕事のことは忘れてゆっくりしてこい」

「「……」」


 豪快ながら温かな気遣いに立ちっぱなしで動き詰めだった俺とソフィア副隊長は顔を見合わせ、お言葉に甘えて束の間の羽休めへと繰り出すことにするのだった。


◇——


「お疲れ様、リュウト」

「お疲れ様です、ソフィア副隊長」


 賑やかな祭りの喧騒から少し離れた、近くにあるカフェのテラス席。

 俺とソフィア副隊長はグラスを軽く交わし合った。

 とはいえ、祭りの警備任務が完全に終わったわけではないので、グラスの中身は黄金色のエールではなく、シュワシュワと泡を弾かせる赤紫色の炭酸葡萄ジュースだ。


「ふぅう……」

「ふふ、ホッとしているのか?」

「ええ、まぁ……。流石にこの規模の祭りは神経を使いますからね」

「私もだ。何事もなく終えられそうで安心したよ」

「「……」」


 街のあちこちから人々の楽しげな笑い声が聞こえてくる。

 時折吹き抜ける静かなそよ風が熱を帯びた肌を心地よく撫でていった。


「どうした? 急に大人しくなって」

「……いえ、ただこう思っていただけです。あぁ、平和になったんだなって」

「何それ。らしくないな」


 俺の柄呟きにソフィア副隊長は悪戯が成功した子供のように微笑んだ。

 思い返せば、この人がこんな風に肩の力を抜いて柔らかく笑う姿を見るのは随分と久しぶりな気がする。

 つい最近まで、魔王リザエラ率いる魔王軍との戦いに身を投じていた俺にとって、目の前に広がる彩り豊かな風景は平和とは何かをしみじみと胸に刻み込ませてくれた。


「確かに、こんな風に穏やかな空気は……私も好きよ」

「そうですか?」

「……ねえ、リュウト」

「はい?」


 少しの静寂を挟んだ後、ソフィア副隊長がどこか感慨深げに言葉を紡ぐ。


「覚えているか?私とあなたが初めて出会ったときのこと」

「……もちろんです。今でも鮮明に覚えていますよ」

「ふふ、それは嬉しい限りだな」


 脳裏にあの日の記憶が色鮮やかに蘇る。

 かつての冒険者パーティを脱退し、行き場を失っていた俺。

 そんな俺の可能性を見抜き、エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊へ入れてくれたのがこの人だった。

 間違いなく、俺に新しい生き方と誇りを与えてくれた恩人の一人なのだ。


「だからこそ、なんだろうな。リュウト。……私はな、年齢もキャリアも自分よりずっと下であるはずのお前のことを心から一人の隊員として、男として認めているんだ。我が部隊で傷だらけになりながら結果を出し、勇者パーティの一員として戦い抜いたことは……自分のことのように誇りに思っている」

「……ソフィア副隊長?」

「だから、聞いてほしい」


 その真剣な眼差しには上官としての顔だけではなく、一人の人間としての確かな願いと決意が満ちているように見えた。


「リュウト。私は……お前と共にこのエレミーテ王国遊軍調査部隊をもっともっと良い組織に、強い部隊にしていきたいと思っている。これは騎士団の理念でも、遊軍調査部隊の副隊長としての言葉でもない。この私自身の意思だ」

「……」


 その言葉の重みと一緒に込められた情熱。

 何を求め、どれほど俺を必要としてくれているのかが胸に伝わってきた。

 俺は深く息を吸い込み、視線を真っ直ぐに返した。


「これからの将来や自分の役割について、考えるべき課題は山積みですけれど……俺からも言わせてください」

「……ええ」


「俺も同じ気持ちです。だからこそ、これからもよろしくお願いしますよ!ソフィア副隊長!」


 迷いなく応えると、ソフィア副隊長は一瞬目を見開き、それから今日一番の晴れやかな笑顔を浮かべるのだった。


 祭りの終盤に差し掛かるまでの間、暖かくも忘れてしまいたくない空気が周りを包んでいたように思えた。

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