第211話 外遊を終えて
ホッとする日々がしばらく続きます!
短くて申し訳ございません。
「此度は本当にありがとうございました。また近いうちに、この美しいフォーペウロへ赴きましょう」
「ええ、あなた方でしたら、いつでも大歓迎いたしましょう」
エレミーテ王国を治めるルーフェン国王陛下と王女殿下であるイレーヌ様を伴った外交事業は無事に終わりを告げた。
フォーペウロの女王陛下であるエリザナ様と王女殿下であるレイニース様、そして厳めしい表情を少しだけ緩めたシュナイゼル団長や聖女たちら両国の重鎮たちに見送られ、再会を約束して帰路に就く。
「……」
俺は名残惜しげに城を見上げる勇者パーティの面々から一度離れ、本隊の警護に当たる遊軍調査部隊の隊列へと合流した。
並んで馬を走らせるモーゼル隊長やソフィア副隊長にこの地で起きたすべての出来事を共有した。
魔族との共存を純粋に夢見るファミーナの覚悟、そして彼女が描く未来のビジョン。
さらにはかつての旅路で俺たちが何を信じて戦ってきたのかを退屈な行軍の暇潰し代わりに言葉を尽くして語り聞かせた。
馬蹄の音だけが響く夕暮れの街道や耳を傾けてくれる先輩たちの温かな眼差しに俺は心地よい充足感を静かに噛み締める。
◇——
「……ふぅう。まずはこれで一段落だな……」
完全に日が沈み、夜の帳に包まれた王都エメラフィール。
無事に帰還を果たした俺たちは息をつく間もなく王城での緊迫した勇者パーティと魔王軍が起こした戦後処理や今後についての会合に臨んでいた。
今回のフォーペウロ外交の成果報告、そして今後の魔族領への対応方針。
それらの張り詰めた議論がようやく終わり、王城の門をくぐり抜けた。
短くも、相当に長く感じられた重要任務の終わりを告げる瞬間、お陰で明日から二日間の完全な休日を言い渡されたのは素直に嬉しい。
「……」
だが、夜風に吹かれながら歩いていると、その貴重な連休をどう過ごすべきか、手持ち無沙汰に考え込んでしまう自分もいた。
直近まで勇者パーティの一員として、魔王討伐という巨大な使命の歯車となって世界を駆け巡ってきた。
年がら年中お気楽に過ごせる平和が来るとは思っていない。
事実、今の俺はエレミーテ王国騎士団の遊軍調査部隊に身を置いているため、大なり小なりのトラブルが起きれば、前線で向き合わなければならないのが現実だ。
それでも、一度無視せずにいられない非日常が去ってしまうと胸に来てしまうこともある。
「贅沢な悩みだけど……なんだか少し、寂しいな」
平和であることの素晴らしさを知っていて、ずっとそんな日々が続けばって思っているのに嘘はない。
だけど、張り詰めていた心の拠り所というか、俺個人にとって胸が躍るような何かをどこかで欲している自分がいるのもまた事実だった。
そんな他愛もない空虚さを抱え、夜の隊舎周りを一人でふらりと散歩していた時だった。
「……リュウト?」
「っ!?」
静寂を割って、聞き覚えのある柔らかな声が俺の鼓膜を叩いた。
驚いて声のした方角へ視線を向ける。
「ふふ、やっぱり。いろいろとお疲れ様だね。リュウト」
「……リリナ?」
月明かりに照らされていたのは冒険者時代に同じ志を抱いて共に駆け抜けたリリナの姿だった。
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