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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
エピローグ

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第208話 会合の時

人間と魔族の因縁が変わる話し合いが始まります!

「見えてきたな……あそこだな」

「うん。もうすぐ着くね」


 フォーペウロに到着した翌朝、俺たちは馬車に揺られながら、目的地へと向かっていた。

 車内には俺やシャーロットにメリス、ロリエやジャードといった勇者パーティの面々が揃っている。

 加えて馬車の周囲にはエレミーテ王国騎士団のトップであるシュナイゼル団長や俺の上司であるモーゼル隊長率いる精鋭の護衛たちが隙のない陣形を固めていた。

 外に広がるのは最小限の自然を残すばかりのどこか殺風景な辺境の景観だけど、そこを進む一行の空気には異様な緊張感が漂っていた。


「……ある意味、かつてリザエラや魔王軍の最強幹部たちとやり合った時以上のプレッシャーを感じるな」


 俺がぽつりと零した言葉に仲間たちも深く頷く。

 それもそのはず、俺たちが護衛する車列の中心にはエレミーテ王国の頂点に君臨するルーフェン国王陛下とその愛娘であるイレーヌ王女殿下がご乗車されている。

 一歩間違えれば国家の平和が破綻に繋がりかねない緊張感。

 赴く場所が場所だけに、この厳戒態勢も当然と言えた。

 それからしばらくして、馬車は一つの大きな集落の前で静かに停車した。


「お待ちしておりました。エレミーテ王国の王族の皆様。そして、勇者パーティの皆様」


 静寂を突くように流れてきたのは耳に心地よい凛とした少女の声だった。


「私は新たな魔族領を治めさせているファミーナと申します。エレミーテ王国国王陛下ルーフェン・フォン・エレミーテ様。ならびにイレーヌ王女殿下。この度は私たちの要望に応じ、遠路はるばる足をお運びいただきましたことを心より深く感謝申し上げます」


 まだ幼さの残る風貌ながら、仕立ての良い華やかな紫紺色のドレスの裾を繊細な指先で静かにつまみ、息を呑むほど流麗で気品に満ちたお辞儀を見せた。

 柘榴石に紫の雫を落としたような妖しくも透き通った瞳と溶かした黄金を思わせる黄土色の美しい長髪。

 そして、側頭部からまるで優美なティアラを模したかのように伸びる艶やかな二本の角。

 その所作と存在感から溢れるのは魔族という言葉の威圧感よりもむしろ、どこか高貴な異国のお姫様と言われた方がしっくりくるほどだった。


「このファミーナが太古より縛り続けてきた悪しき因習から解き放とうとする新たな魔族の代表として、皆様を心からおもてなしすることをここにお約束いたします」


 二人の忠実な従者を背後に従え、堂々と挨拶を述べるこの少女こそがファミーナだ。

 人間と魔族の間にある負の連鎖を断ち切らんとする革新派の若きトップであり、俺たち勇者パーティにとっては共に死線を潜り抜け、決して切ることのできない強い繋がりで結ばれた掛け替えのない存在の一人であった。

 その毅然とした誇り高き振る舞いを前に、ルーフェン国王陛下とイレーヌ王女殿下もまた、一国の王族にふさわしい威厳に満ちた所作で礼を返された。

 俺たちは緊張とどこか誇らしい胸の高鳴りを静かに抱きながら、その門を潜り抜けるのだった。


◇——


 魔族領の辺境付近にある集落の中心に佇む石造りの大きな屋敷。

 その一角にある会議室は十数人が一堂に会しても窮屈に感じさせるほどの広さがあり、見上げる天井も高く開放的だ。

 部屋の装飾そのものは最低限ながらも実用性を重んじたシンプルな作りになっている。

 張り詰めた厳かな空気が満ちる中ファミーナが礼節をもって深く頭を下げた。


「皆様、此度ははこの地へ足をお運びいただき、心より感謝申し上げます」

「うむ……」

「……」


 円卓を挟んで向かい合うのは新たなる魔族の統治者たるファミーナとルーフェン国王陛下、そしてセレーヌ王女殿下だ。

 ファミーナの背後には彼女の右腕であるカリュミノやジュウロンを筆頭に忠誠を誓う従者や護衛が静かに控えている。

 対するエレミーテ側にはシュナイゼル団長率いる本隊の精鋭騎士たち、そして俺たち勇者パーティの面々がいつでも動けるよう鋭い視線を走らせていた。

 俺たちが王都へ帰還した際、ファミーナの高潔な人となりや平和への思想は国王陛下に詳しく伝えているとはいえ、両陣営が公式の場で直接相まみえるのはこれが本当に初めてのことだ。

 故に、互いに警戒と敬意を尽くし、万全の備えで臨むのは当然の摂理と言えた。

 沈黙を破り、ルーフェン国王がその威厳ある声を響かせる。


「其方のことはかねてより勇者たちを通じて聞き及んでいる。魔族として生を受けながらも、人間と手を取り合おうとする先達たらんとするその志をな……」

「はい。私は心からそれを望んでおります。太古より延々と続いてきた、魔族と人間の間にある血塗られた負の連鎖もとい、その歪んだ歴史に今度こそ大きな楔を打ち込む。我が理念に一片の嘘偽りもございません」


 毅然と言い放つファミーナの瞳が真っ直ぐに国王の視線を受け止める。


 種族の壁を越えた新たなる歴史の幕開けが懸かった確信を願う魔族の新たなトップとエレミーテ王国トップを交えた会合。その緊迫した一瞬を俺たちは固唾を呑んで見守るのだった。

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