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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第五章 突入。魔王城!

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第197話 久方ぶりの謁見

エレミーテ王国の国王陛下とのしばらくぶりの謁見です!

「面を上げよ」


 白亜の柱と豪奢な金細工に彩られたエレミーテ王国王城内にある謁見の間。

 張り詰めた厳かな静寂が満ちる空間に重みを含んだ声が粛々と響き渡った。


「「「「「……」」」」」


 その言葉に促され、俺たち勇者パーティはゆっくりと顔を上げた。

 真っ直ぐに伸びる赤絨毯の脇には軍事や政治における重鎮をがずらりと居並んでいる。

 その厳格な列の中には俺にとっての直属の上司である遊軍調査部隊のモーゼル隊長とソフィア副隊長の姿もあった。

 二人は無言のまま、俺へと送ってくれている。

 視線を正面へと戻した先にある玉座に堂々たる佇まいで鎮座しているのは……。


「うむ……」


 エレミーテ王国の最高権力者。ルーフェン・フォン・エレミーテ国王陛下、その御方であった。

 その両脇には凛とした美しさを湛えた第一王女セレーヌ様が控え、騎士団のトップであるシュナイゼル団長もおり、国王陛下自身は威厳に満ちた鋭い双眸で俺たちを見下ろしている。

 これまで数々の死線を越えてきた俺たちだったが、一国の命運を握る王族と正面から向かい合う空気は別物だ。

 何度経験しても、喉の奥が渇くような緊張感を覚えてしまう。


「此度の魔王討伐の件、誠に見事であった。勇者パーティの比類なき働きにより、長きにわたり世界を脅かした魔王リザエラの脅威は完全に去った。国を代表し、其方らの武勲に心より感謝する」

「ありがたきお言葉でございます。国王陛下」


 パーティのリーダーであるシャーロットが凛とした声を響かせて一歩前に出た。


「私と共に最後まで戦い抜いたリュウトが魔王リザエラの最期を確かにこの目で見届けました。魔王軍の中枢は完全に崩壊し、大陸を覆っていた闇の脅威が去ったのは紛れもない真実でございます」

「うむ……。建国以来の悲願が今代の勇者たちの手によって達成されたのだな。ようやく肩の荷が下りたような心地であるぞ」


 国王陛下の厳格な面持ちにほんの少しだけ柔らかな色の笑みが浮かび、張り詰めていた謁見の間の緊張感が僅かに緩んだ。

 それを合図に、シャーロットは魔族領への突入からリザエラとの最終決戦に至るまでの経緯、各個人の死闘の様子について、簡潔かつ的確に伝えていく。

 思いつく限りの激闘を語り尽くしたところでシャーロットは言葉を区切った。

 ここからが、真の本題だ。

 外せない話は他でもない、あれについて聞かれることになる。


「……して、書簡にもあった魔族でありながら人間との友和を心から願うという少女ファミーナについてだ。彼女が新たなる魔王を自称し、魔族領の抜本的な改革を謳っているそうだが……エレミーテとして、其方らはこれにどう向き合うつもりなのかを聞いておかねばならん」

「「「「「……」」」」」

「そのファミーナという少女の行動や思想一つで今後の国際情勢に計り知れない影響をもたらすことは明白。一歩間違えれば、再び血の歴史が繰り返されるやもしれん。国を揺るがす決断には大きな責任が伴うが、勇者として、当事者として、どのように向き合う覚悟だ!」


 一国の主としての冷徹な諫言。

 謁見の間の空気がにわかに凍りつき、居並ぶ重鎮たちの視線が俺たちに突き刺さる。口だけで表現しきれないような重圧に身体が縮み上がるような錯覚さえ覚えた。

 沈黙が支配する十秒が経つような静寂が過ぎた後、シャーロットは迷うことなく、その瞳をまっすぐに陛下へと向けた。


「私はファミーナの意志と彼女が掲げる信念を全面的に尊重します!」

「むぅっ!?」


 躊躇いもない断言に国王陛下が思わず眉根を潜めた。

 当然、周囲にも小さなどよめきが走る。


「ファミーナは確かに魔族です。ですが、共に死線を潜り抜け、互いの魂をぶつけ合って対話を重ねた中で彼女の平和への想いが本物であることは私たちが誰よりも肌で感じております。彼女が真に望んでいるのは人間を支配することでも怯えさせることでもなく、人間と魔族の共存です。互いに手を取り合い、憎しみの連鎖を断ち切って助け合っていける未来を彼女は命懸けで望んでいます!ですので、新たな時代の芽を吹かせようとする正しき心を持つ魔族の代表である彼女の意志を私は勇者として支持いたします!」


 そう語るシャーロットの双眸には切の迷いも澱みもなかった。

 その背中を見つめる俺たちの気持ちも一つだ。


「勇者パーティの言い分、そして人間と手を取り合いたいと願う魔族の存在についてはかねてより報告を受けておる。そこまで言うのだ。彼女の願いに嘘偽りがないことは信じよう。だがな、万が一、その理想が潰え、過激な報復を行おうとする魔族が再び人間に牙を剥くという由々しき事態が起きた時、一体どうするつもりだ?」


 の容赦なくも、現実的で最も重い問いが突き刺さる。

 シャーロットは一歩も引かなかった。


「その時は我々今代の勇者パーティが率先して戦線に立ちます。人間と魔族の友和を願うファミーナとの間に立ち、盾となり、矛となり、尽くせる限りの最善を尽くして事態を収拾する所存です。それは国から命じられたからでも、古い慣習に倣った行動でもありません。個人の、いいえ、私たちの意志です!」


 ジャードやロリエ、メリスと俺は黙りながらも、確固たる決意を秘めた目で見据えた。

 その強い輝きをじっと見届けた国王陛下はふっと張り詰めていた肩の力を抜いた。

 少しの感嘆が混ざった溜め息を漏らし、『それが其方らの答えか』と、どこか満足げに諦観したような仕草を見せながら玉座に腰掛け直す。


「これ以上の言葉は不要なようだな。良かろう。勇者パーティには当面の間、エレミーテ王国に及ぶ不測の脅威への対処にあたってもらう。同時に魔族と人間の共存を願う筆頭格、ファミーナらとの協定を結ぶための顔役を命ずる!そのための資金、物資の支援は我が名の下に懸けて約束しよう。ただし、それだけの啖呵を切り、大言壮語を吐いたのだ。その重き責務、意地でも全うしてみせよ!」


 それは一国の主としての絶対的な威厳と若き者に対する未来への賭けを秘めた、最高に粋で重みのある厳命であった。


「「「「「ハッ!!」」」」」


 その新時代への第一歩に応えるように、シャーロットやメリス、ロリエとジャード、そして俺の声が謁見の間の高い天井へと力強く響き渡るのだった。

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