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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第五章 突入。魔王城!

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第198話 【Sideシャーロット】勇者パーティだけの楽しみ

リュウトが初めて、シャーロットたちの拠点に来ます!

そして、シャーロットが……。

「ここに戻って来るのも、ずいぶんと久しぶりね……」


 木製の大扉を押し開けながら、私はどこか感慨深げに呟く。


「時期としては、まだ一年も経っているかどうかだというのに、妙に懐かしく感じるわね」

「ほぉお……。ここがシャーロットたちの……」


 私は少し緊張気味なリュウトを招き入れ、共に懐足を踏み入れた。

 そこはエレミーテ王国の王都エメラフィールの閑静な一角にある大ぶりな邸宅。

 しばらくの間空けていた、私たち勇者パーティの邸宅だ。


「ここがシャーロットたちの本拠地ってわけなんだな。中にまで入るのは初めてだけど、立派じゃないか」

「ええ。近くで魔王軍の幹部や国を脅かす大きな勢力とやり合う時の前線基地だったの。激戦の合間の休息にはいつもここで過ごしていたわ」


 私やメリス、ロリエやジャードにとっての実家のような場所だが、リュウトがこの拠点の敷居を跨ぐのはこれが本当に初めてのことだった。

 まあ、あいつがクラークの後釜として私たちの仲間に加わり、その名前を知るきっかけになったのは本当に特殊で切迫したケースだったからね。

 じっくりと本拠地を紹介する暇もないまま、私たちはそのまま世界を救う旅へと飛び出してしまったのだ。

 広々としたダイニングキッチンを兼ねたリビングやいくつかの清潔な客間を巡りながら、リュウトはどこか好奇心に満ちた眼差しで室内を散策している。


「魔王討伐やそれに関連する遠征が無い時はここで暮らしていたんだな」

「うん、まぁね。リュウトはこれまでエレミーテ王国騎士団の隊舎で暮らしていたんだっけ?」

「そうだな。一人暮らしをする分にはあそこの部屋でも何の不自由も無かったんだけどな。この広さに慣れると、あっちが窮屈すぎるって思えそうだ」

「あはは、それもそっか!」


 ちょうどその時だった。


「ただいま戻ったわよ~!」

「おっ、みんな帰って来たみたいね」

「お待たせー!なんとか買い出しをすり抜けてこれたわ!」

「本当にいろいろありましたけど、今夜に必要な物は揃いました!」

「揃ったのはいいんだけどよ……っ!俺だけ半分以上の荷物を持たされてるんだ!?ちょっと不服なんだけど!」


 扉を開けて入ってきたのは同じメンバーであるロリエやメリス、ジャードの三人だった。

 ロリエの両手には高級そうなヴィンテージ物のワイン瓶が数本。

 メリスは今夜の宴のための食材が詰まった籠バッグを大事そうに抱えている。

 そしてジャードはといえば、まるで荷物持ちの従者のように、巨大な紙袋や木箱をいくつも身体に括り付けるようにして抱え込んでいた。

 ふふっ……ジャード、本当にお疲れさま。

 それからリビングの大きな木製テーブルに食材や酒瓶を次々と並べていく。


「一応、半分くらいはそのまま広げるだけで食べられるおつまみや加工肉、それに上質な酒なんだけどさ。問題はこの新鮮な野菜や肉の類をどう調理しようかなってことで……」

「……」


 ロリエがそこで言葉を切り、わざとらしくチラリと視線を泳がせる。

 それにつられるようにして、メリスやジャードに私も、一斉にリュウトへと視線を注いだ。

 彼もまた、そんなお約束の空気に苦笑いを浮かべた。


「……はは、わかったよ。よし!それじゃあ、俺が一肌脱ぐとしますか!」


 腕捲りをしながら立ち上がったリュウトが台所へ向かう。

 幸いなことにキッチン周りの設備や調味料は整っているし、旅の過酷な野宿でさえ絶品の飯を作ってのけたあいつにとって、この環境はまさに理想的だった。

 リュウト手際よく、あっという間に新鮮な魚の刺身を用いた彩り豊かなマリネやニンニクと香草の香りが鼻腔をくすぐる、野菜と肉の熱々のアヒージョなどが次々と仕上げられていった。


「さぁ、お待たせ。できたぞ!」

「「「「オォオオオッ!!」」」」


 テーブルの上には美味しそうな料理が並べられていた。

 もちろん、高級ワインや冷えたエールといった最高の酒も全員のグラスに惜しみなく注がれた。

 私はグラスを高く掲げ、仲間たちの顔を一人ずつ見つめた。


「では、私たち勇者パーティの成し遂げるべき使命を果たし、こうして誰一人欠けることなく、我が家へ戻って来れたことを祝って……カンパ~イ!」

「「「「カンパ~イ!!」」」」


 小気味よいクリスタルガラスの交わる音が、部屋中に心地よく響き渡った。

 明日になれば、また国王陛下からの呼び出しや政治的な面倒事が山ほど舞い込んでくるかもしれない。

 だけど、今この瞬間だけは……私たち勇者パーティだけで気兼ねなく、ただただ楽しみたい。

 リュウトとジャードががっしりと肩を組み合いながら豪快に酒を煽り、ロリエが赤くなった顔で軽快なノリの掛け合いを見せ、メリスが暖かい笑顔でそれを見守っている。

 私はその中心で純粋に笑うリュウトの横顔をそっと盗み見ながら、グラスに口を付けた。

 私たちは今、誰にも邪魔されることのない、細やかでながらも、何より至福の時間を噛み締めるのだった。


◇——


 宴の席が終わってしばらくした頃。


「……シャーロット。あの……」

「ごめんね。リュウト……」


 一部屋に狭すぎずとも、心地良い広さのある私の自室にリュウトが来ている。

 隙を見て、「大事な話があるから来て」って私からこっそり伝えておいたのだ。


「話とは何なんだ?」

「あのね……リュウト……。その……」


 言葉に詰まりかけたけど、撃ち滅ぼした魔王リザエラと向き合う時とはまた違ったような気持ちで言う。


「今日だけでいいから……。私と一緒に寝て欲しい……。てね……」

「ほえ?」


 今この時にどんな顔をしているのかさえ考えようとしないか分からないような表情を浮かべながら、そう言う私なのであった。

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