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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第五章 突入。魔王城!

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第194話 【Sideシャーロット】かつての盟友がいる地へ再び

かつての勇者パーティの一員が再び登場します!

「すっかり日が暮れてきたな……」


 御者の座席から後ろを振り返り、リュウトが夕闇に染まりゆく空を見上げて呟いた。


「そうだな。ちょうどいい、あそこで一泊していくってことでいいか?」

「う、うん……。賛成」


 ジャードの提案にロリエが同意する。

 フォーペウロで一夜を過ごした私たち勇者パーティはエレミーテへ帰還するための帰路に着いている。

 それからというもの、街道沿いでの野宿や町での宿泊を繰り返しながら、馬車に揺られて先へ先へと進んでいる。

 やがて、燃えるような夕日が地平線の彼方へと沈み、夜の帳が静かに降りてくる頃に辿り着いたのは……。


「ここも随分と久しぶりになるな……」


 私は窓の外を眺めて、小さく息を漏らした。

 いつぶりになるか分からない馴染みのある街、ネウリオだ。

 すっかり日が暮れようとしている時間帯だというのに、漏れ聞こえてくる街の活気は以前と変わっていない。

 むしろ、以前よりもどこか沸き立っているようにも感じられた。

 思わず、私は胸に去来する感慨をそのまま口に呟いていた。


「魔王リザエラを倒した後でこうして来てみると、いやに懐かしい気持ちになるものね」

「同感だな」

「ええ、わたくしも同じです。今ではまるで遠い昔の出来事のようですね」


 隣に座るリュウトとメリスがしみじみと同意する。

 馬車を降りて街へと足を踏み入れようとするその時だった。


「オォオオオッ!? おい、見ろ!あの方たちは!」

「ん?」


 住民の一人が上げた叫び声を皮切りに、街の往来を行き交っていた人々が一斉にこちらを振り返った。

 そして、弾かれたようにこちらへと駆け寄ってくる。


「勇者パーティだ!エレミーテが誇る、本物の勇者パーティの方々だ!」

「本当に魔王討伐を果たされたのか!?」

「まさか生きているうちに、このような英雄の方々にお目にかかれるとは……何たる幸運だ!」


 それはネウリオに住まう人々からの熱烈な大歓迎だった。

 フォーペウロに滞在している間にエレミーテへ魔王討伐に関する公式の書簡が送られたとは聞いていたけど、まさかこんな場所にまで噂が届いていたなんてね。


「あ、あははは……ありがとう……」

「これはまた……凄まじい熱気ね」

「歓迎してくれるのは嬉しいですけど、それはそれで……」

「リアクションに困るな」


 私たちは内心で冷や汗をかきながらも、露骨に戸惑った顔を出さないように必死に心掛けた。

 笑顔を貼り付け、応えられる限りの身振りと握手で歓声に応えるものの、押し寄せる群衆のパワーを受け流すのは中々に精神を消耗する。

 そんな中、メリスだけは流石というべきか、どこまでも淑やかに、慈愛に満ちた完璧な対応をしていた辺り、ある意味凄いと思うしかない。

 そうして揉みくちゃになりながら、なんとか大通りを進もうとしていた、その時だった。


「――あっ」

「あなた……」

「やぁ……」


 喧騒の隙間を縫うようにして届いた、一つの聞き覚えのある男性の声。

 釣られるような形で、私たちが一斉に視線を向けた先に佇んでいたのは……。


「シャーロット。ジャード、ロリエ、メリス。それに……リュウト」

「うん……」

「久しぶりだね。無事で本当に何よりだ」


 パーティの中では一番の新参であるリュウトはともかく、私たちにとって彼よりも長く、血と泥に塗れながら苦楽を共にしてきた一人の男がそこに立っていた。

 一本の木製の杖にすがり、片足を少し庇うようにして立つその姿。


「おかえり……皆……」

「……うん。ただいま、クラーク」


 愛おしそうに目を細める彼の名はクラーク。

 私たちの前任のレンジャーであり、かつての勇者パーティに欠かせない、大切な仲間の一人だった。

 私たちは魔王討伐という壮大な目標を掲げ、死線を何度も潜り抜けて旅をしてきたけれど、魔王軍の幹部の一角であったギルダスとの激戦の際、彼は私たちを庇って大怪我を負ってしまったのだ。

 一命は取り留めたものの、その傷が原因で再起は不可能となり、志半ばで涙を呑んでパーティを脱退せざるを得なくなった。

 そうして傷心の彼がこのネウリオの街で療養生活に入る際、その後任として選ばれたのがリュウトだったのだ。

 クラークはコツン、コツンと杖を突きながら、人だかりを割って私たちの前へと進み出た。


「皆……。エレミーテに届いた定期の手紙で君たちの活躍や旅路はずっと読ませてもらっていたよ。だけど……本当にあの魔王をやり遂げてしまうなんてな」

「ありがとう。クラークが私たちの基盤を作って、繋いでくれたからよ」


 私がパーティの代表として一歩前に出て、彼の手を優しくも、固く握りしめた。

 クラークは嬉しそうに微笑んだ後、私の肩越しに少し後ろで控えていたリュウトへと視線を移した。


「リュウト……俺の代わりに勇者パーティの一員となり、シャーロットたちの背中を預かってくれたのが君で本当に良かった。前任者として、心からお礼を言わせて欲しい。ありがとう」

「……いや、礼には及ばないよ。俺はただ、レンジャーとして……勇者パーティの一員としてやるべきことを必死にやっただけだからな」


 突然話を振られたリュウトは一瞬驚いたように瞬きをしたが、すぐに真っ直ぐクラークの前に立ち、右手を差し出した。

 クラークもまた、杖を左手に持ち替え、リュウトの手を力強く握り返す。

 勇者パーティの新旧のレンジャーが交わした固い握手を見つめながら、クラークはふっと微笑んだ。


「シャーロットたちは本当に幸せ者だな」

「ん?どういうこと?」

「リュウトって言う、こんなに素晴らしいレンジャーを新しく仲間にできたんだからさ。同じレンジャーとして、俺も自分のことのように誇らしいよ」

「え……?」


 大絶賛を受けたリュウトは予想だにしない言葉に「俺が?」と言いたげに、軽くポカンと口を開けてフリーズしてしまった。

 そのあまりにも彼らしい素朴な反応に張り詰めていた私たちの表情も自然とふわりと緩んでいく。


「ま、まぁね……。クラークの言う通り、リュウトには何度も助けられたわ」

「たまに無茶しすぎるのが玉にキズだけど、最高のレンジャーだわ」

「本当です。リュウトさんがいなければ、今ここに全員が揃っていることはありませんでした」

「言えてるぜ!」

「な、なんなんだよ、急に……」


 そんな彼を中心にして、言葉にできないほど暖かく、優しい空気がその場に広がっていった。

 その後はクラークの計らいもあって、ネウリオを挙げて大きな祝勝の宴を開いてもらえることとなった。

 大通りには長いテーブルが並べられ、美味い酒と豪勢な料理、場を賑わせる軽快な音楽や華やかな演芸などが次々と振る舞われる。


 まだまだ曖昧でいながら、平和の始まりを告げる夜。


 私たちは時間を忘れて、リュウトたちとただただ最高に楽しい時間を過ごすのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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