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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第五章 突入。魔王城!

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第186話 力と勇気を振り絞り……

リザエラ戦がヒートアップしていきます!

 真の力を解放したリザエラを前に立ち上がる俺たち。


「まだ歯向かおうとするのかっ?勇者たちよ!ファミーナ!」


 辺りを満たす黒い瘴気の向こうからリザエラの声が響く。

 そこには先ほどまでの絶対的な余裕はなく、苛立ちと不快感がはっきりと滲んでいた。


「当たり前よ!」


 不快感を滲ませながら問うリザエラに対し、シャーロットは確かな芯と凛とした声を乗せて力強く答えながら、エクスカリバーを正中に構え、その切っ先を恐れることなく向ける。


「私たちは最後まで絶対に諦めない!お前がどれほどの力を見せようとも、この世界を、未来を、絶対に渡したりしないわ!かかってきなさいよ!リザエラ!」

「「……」」


 俺とファミーナもまた、無言のまま強い眼差しをリザエラへと向けた。

 真の姿を取り戻したリザエラが放つ押し潰さんばかりのプレッシャーは皮膚がピリピリと焼け付くような錯覚すら覚えるその脅威を前にして、不思議と俺たちの心に怯えはなかった。

 俺たちの胸にあるのは揺るぎない覚悟だ。

 そして何よりも……。


「私は……もう二度とお前に怯えたりはしない。諦めない……!」


 一歩、前に踏み出したのは魔族でありながら俺たちの側に立つと決めたファミーナだった。

 彼女の瞳には怯えや迷いの色は一切残っていない。


「私は今日という日のために生きてきた。お前とたもとを分かち、血を吐きながら、生きて生きて、生き延びて……ようやくこの場所に辿り着いたのだから!リザエラ、お前だけは必ず私の手で滅ぼす!人間と魔族の友和を願っていたお父様のためにも!」


 ファミーナが魂を絞り出すように吠えるその姿は彼女のこれまでの過酷な半生と揺るぎない覚悟が乗った宣戦布告だった。


「くっ、ふふふ、ははははははっ……!」


 少しの静寂を経て、リザエラの喉の奥から乾いた冷酷な笑い声が漏れ出た。

 その悍ましい間を経て……。


「ならば、望み通りに我が力に溺れ、惨めに散るがいい!!」


 再び戦いの幕が上がった。

 刹那、リザエラの周囲の空間がガラスが割れるような音を立てて歪む。

 その中心から広範囲に渡って展開されたのは幾重にも及ぶ、漆黒に染まった幾何学模様の魔法陣の数々だった。

 それらは呼吸を合わせるようにして、どす黒い輝きを放ち始める。


「ダークネスディザスター!!」

「「「ッ!?」」」


 魔法陣の群れから一斉に放たれたのは禍々しき漆黒の魔力の渦と雨あられのように撃ち出される無数の闇の弾丸だった。

 視界を完全に埋め尽くさんばかりの勢いで俺たちへと襲い来る。

 その時、ファミーナが鋭く前に躍り出た。


「リフューズドーム!」


 彼女が両手を天空へと掲げた瞬間、そこを中心に白と黒の魔力が複雑に入り混じった球状の結界が急速に展開される。

 直後、無数の闇の弾丸が結界の表面に激突し、鼓膜を潰さんばかりの大爆音と衝撃波が吹き荒れた。


「「うおっ……!」」


 俺とシャーロットは思わず腕で顔を覆う。

 リザエラの放つ攻撃は純粋な悪意と負の感情しか込められていない一撃だけど、それを防いでいるファミーナの結界からは強烈な破壊の衝撃の裏で不思議と自然の優しさに触れているような、どこか暖かく包み込まれるような感覚を覚えた。

 それが今、この絶望の弾幕を確かに防ぎ止めている。


「リュウトさん!シャーロットさん!今ですっ!」


 汗を滲ませたファミーナの声が響き、その言葉を合図に俺とシャーロットは同時に動き出した。

 俺は右へ、シャーロットは左へ分かれて走り出す。

 吹き荒ぶ嵐のような魔力の奔流を紙一重で掻い潜り、捌きながら、俺たちはリザエラの懐へと肉薄していく。


「ふぅううんっ!」

「ハァアアアッ!」


 リザエラが真の力を解放した時、一抹の恐怖も抱かなかったと言えば、それは真っ赤な嘘になる。

 足が竦み、このまま全てを投げ出して逃げ出してしまいたいという誘惑が頭を過らなかったと言えば、それも嘘だ。

 それはシャーロットもファミーナも同じはずだ。

 だけど、今の俺たちの心にはその恐怖を遥かに凌駕する熱い炎が灯っていた。


「「ッ!!」」


 並走するシャーロットと一秒にも満たない刹那のアイコンタクトを交わす。

 言葉は要らない。


「……」


 走りながら俺はセレスティアロの弦を限界まで引き絞り、指先から溢れる魔力を矢に込め、短い詠唱の後に、三本の矢を同時に放った。

 だけど、さっきとは違うところがある。


「ぬぅううっ!?」


 リザエラの目が僅かに見開かれる。

 俺が放ったのは二本の“爆撃の矢”とその中心で鋭い軌道を描いて突進する一本の“破魔光の矢”だった。

 最初に“破魔光の矢”をあえて使わなかったのはシャーロットが決定的な一撃を叩き込むための()()()()()()()()()()だ。

 魔族にとって絶対的な天敵である聖属性の輝きを前にリザエラと言えども無視することはできない。


「喰らえぇえええ!」

「カァアアアアッ!!」


 リザエラは咄嗟に杖を振るい、瞬間的に生み出した黒い刀剣の塊でその矢を阻んだ。

 凄まじい光と闇の衝突。

 直後、大爆発と共に激しい砂塵が辺りに舞い散り、互いの視界を完全に遮る。

 それから一拍の余韻すら無い時間。


「ハァアアアッ!」

「むぅう!?」


 視界を閉ざしていた濃霧を内側から爆散させ、一筋の金色の光が突進した。

 全身に眩いばかりの神聖なオーラを纏い、エクスカリバーを天高く掲げたシャーロットだ。

 俺の一撃を防ぐために一瞬の隙が生じたリザエラは迎撃の態勢がおざなりになっている。


 この一撃なら届く確信しかけた時。


「その程度でこの我を獲れると思うな!勇者がぁああああ!」


 リザエラは強引に姿勢を立て直すと、手に握る漆黒の杖に仰々しいほどの濃密な闇の魔力を凝縮させ、肉薄するシャーロットに向けて容赦のない突きを放った。


「「ヤァアアアアッ!」」


 二人の叫びが重なる。

 闇を照らし、世界を救わんとする純白の勇者の光とそれをも貪り喰らい、何もかもを虚無に帰さんとする深淵の闇。


 二つの相反する力が激しく激突した。

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