第170話 【Sideシャーロット】ぶつかり合う一撃
VS. メーディル戦、クライマックスです!
「決着の時は近いようね……」
「「「……」」」
私はメリスやファミーナと共に魔王軍の最強戦力とされるメーディルと向き合う。
ヤツの口から漏れたその言葉はどこか諦念の混じった確信に近い響きを持っていた。
言葉は無くとも、私たちも相手も肌で感じ取っている。
次の一手で勝負が決まるかもしれないことを……。
その場にいる全員の意識が一点に収束した刹那。
「行くわよッ!!」
私の号令が静寂を切り裂く。
瞬時にファミーナが杖を構え直し、その影からメリスが魔法を発動させる。
「ホーリーバインド!!」
その声と共にメーディルの足元から純白の魔法陣から鎖が噴き上がった。
まっすぐな軌道で獲物の手足を捉えんとする。
だが、メーディルが意もしない行動に出た。
「フゥウンッ!」
メーディルは回避を選ばない代わりに、身に纏うマントを大きく翻し、自らの身体をコマのように激しく旋回させたのだ。
「なっ……!?あんな方法で……!」
次の瞬間、光の鎖が捉えたのは宙を舞う黒いマントの残骸だけだった。
拘束の魔法を蛇の脱皮でもしたかのような形で無効化したヤツの肩が剥き出しのドレスから露わになる。
そのまま重力を無視したような跳躍でメーディルは天井付近まで一気に舞い上がった。
「テリブルクライシス!!」
「「「ッ!?」」」
メーディルの背後に幾重もの禍々しさを抱かせる黒い魔法陣が瞬時に展開される。
そこから放たれたのは不気味さを感じさせるような黒紫色の弾丸が雨あられのように降り注ぐだった。
メリスの魔力は底を突く寸前であることを考慮すれば、広範囲をカバーする防御壁を作る余裕なんてどこにもない。
「やらせないっ!!」
絶体絶命の瞬間、前に出たのはファミーナだった。
「ディストーションウォール!!」
ファミーナがかざした杖から黒い魔法陣が展開され、こちらは無機質な黒い壁が顕現した。
「ファミーナ?」
「お二人とも!姿勢を低くして、私の後ろへ!!」
直後、降り注ぐ魔弾とファミーナが築いた無機質な魔力障壁が正面から衝突した。
辺りに轟音が響き渡り、砕け散った石床の砂塵が視界を埋め尽くす。
「くぅうううっ!」
「ハァアアアッ!」
歯を食いしばり、魔力の逆流に耐えるファミーナに対して、空中から無慈悲に火力を注ぎ続けるメーディル。
意外にも互角にぶつかり合っていた。
「むぅう!?」
(ファミーナがここまでやるとは?だが……)
思わぬファミーナの善戦ぶりをみたメーディルは少なからず驚嘆するも、すぐに落ち着きを取り戻す。
(ディストーションウォールは強固な壁を作った上で相手の魔力を弱めながら防ぐ魔法。それ故に消耗する量は半端ではない。このまま撃ち続ければ、先にファミーナの魔力が底を尽く。勇者パーティの聖女も満足な支援や援護もできる状態ではない。後は勇者ただ一人……。これで勝てる!)
一瞬で気持ちを切り替え、膠着状態でも思考を巡らせながら冷静さを失わない辺り、流石は魔王軍の最強戦力の一角と認めざるを得ない。
一方、ファミーナの顔からは急速に赤みが消え、その瞳が疲労で霞みつつある。
持ってもせいぜい十秒……誰もがそう確信した時だった。
「ぐぅっ、ぁあ……!!」
「ここだっ!」
ファミーナの集中力が途切れた一瞬、彼女が形成した壁に揺らぎが生じたのを捉えたメーディルは勝負を懸けるように出力を上げていった。
「終わりよ!!」
勝利を決定づけるべく、メーディルは残る全魔力を集中させていく。
魔弾の雨はもはや全てを飲み込まんばかりの濁流となり、防御の失われた空間を蹂躙せんばかりに広間全域を飲み込む大爆発が引き起こされた。
視界は濃密な砂煙によって完全に遮断された。
「……ふふ、うふふふっ!この勝負、私の———」
メーディルが確信と共に微笑んだ、その時。
砂煙を真っ二つに切り裂いて、一筋の黄金が彼女の瞳に飛び込んできた。
「な……っ!?」
「ハァアアアッ!」
一点として愕然とする彼女の眼前にいたのは聖剣エクスカリバーを上段に構え、弾丸のように肉薄するこの私だった。
砂煙が晴れるのを待たず、メリスが最後に残した支援魔力を注ぎ込み、直感に身を委ねたままの一撃に何もかもを賭けて跳んだのだ。
「うおぉおおおおおおお!!これで最後だぁああ!!」
意地でも負けんばかりの気迫と勢いで迎撃の意志を見せるメーディル。
だが、ファミーナへの攻撃に意識を割いた分、その反応はコンマ数秒、致命的なまでに遅れていた。
両手にエクスカリバーを握る私が振り下ろしたのは……。
「極・天聖斬!」
仲間の想い、これまでの旅路、そして世界を救うという信念。
私の何もかもを乗せた渾身の一太刀が黄金に輝く光を纏って振り下ろされる。
「ガァアアアアアアアアッ!!」
その一閃はメーディルの身体に容赦ない一太刀を浴びせるのだった。
ヤツの断末魔が響き、光の残滓が舞い散る中、静かに……確かに告げるのだった。
私たちの勝利を……。
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