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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第四章 魔族と人間の友和を願う者との出会い

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第149話 攻略の時

ザルヴァとの戦いにピリオドが打たれます!

「カァアアア!」

「くっ!」

「ハッ!」


 俺とシャーロットは魔王軍の幹部の一人であるザルヴァの二刀流に苦戦を強いられている。

 ザルヴァの両手には大きな剣が握られており、それは攻防一体の武器として機能していて、重い剣戟と漆黒に染められた衝撃波の乱舞が攻略を難解にさせている。


(……なんて無茶苦茶な立ち回りだ。あの巨体でこれほどまでの連撃を一人で完結させているのか)


 禍々しくも剛毅な外見に似合わず、皮肉を言いたくなりそうなほどに厄介な立ち回りだと認識しそうになる。

 それでも、この程度で折れるほど、安っぽい修羅場は潜っていない。


「シュッ!」

「ぐぅう……ッ!?」

「ハァアアアッ!」

「フゥウン!」


 俺は一瞬の呼吸を合わせ、特殊矢を含めて複数の弓矢を撃ち、奴の視界と意識を散らす。

 その僅かな隙間にシャーロットが滑り込み、絶えず斬撃を振るってザルヴァの身体を削っていく。

 火花が飛び散り、拮抗した戦況が数分間続いた。

 互いの命を削り合うような状況で先に痺れを切らしたのはザルヴァの方だった。


「小癪な真似を……まとめて挽き肉にしてやるわッ!」


 ザルヴァが深く腰を落とし、双剣を交差させて最大火力の衝撃波を放とうとした瞬間だった。

 俺とシャーロットの視線が戦場の中で一瞬だけ重なる。


(今だ、リュウト!)


 二本の“氷結の矢”を手に取った俺は<感覚操作(センス・コントロール)>の発動と共に集中力を研ぎ澄ませながら詠唱を始めた。

 刹那、世界がスローモーションへと沈んでいくように、心拍音がうるさく響き、風の流れやザルヴァの重心までが視えるような心地だ。


「氷の精霊よ。我が持つ矢に万物を凍てつかせる息吹を……」


 静かな詠唱と共に矢の先端に淡い水色の気流が渦巻き、極限まで圧縮された氷結の魔力が結晶化していく。

 放たれた二本の蒼い矢の内、一本はザルヴァの黒剣によって弾かれたが、もう一本は奴の足元の地面に突き刺さった。

 パキパキパキッと耳障りな凍結音が響き、一瞬で地面から氷の牙がせり上がる。

 ザルヴァの足首をガッチリと捕らえた。


「うおっ!?小癪な真似を……ッ!」


 強引に足を引き抜こうと筋肉を隆起させるザルヴァだったが、その僅かな硬直こそが、俺たちが欲した唯一の勝機だ。

 それを見逃すシャーロットではない。


「天聖貫!」


 間隙を縫うかのような踏み込みと共に放たれたのはシャーロットの光を帯びた突きであり、ザルヴァは咄嗟に首を捻って致命傷を避けるが、光の剣先が奴の頬に浅くない傷を負わせ、その背後にある大岩を粉々に砕いた。


「ぐぅうう……ッ!このっ……虫ケラがぁッ!」

「今だ、リュウトッ!」


 激昂するザルヴァだが、懐に飛び込んだシャーロットが死力を尽くした乱撃で奴に防御を強要させる。

 その背後で俺は既に一矢を引き絞っていた。

 番えられたのは“轟雷の矢”だ。


「逃がさないぜ……」


 放たれた一矢はザルヴァの右肩の防具が僅かに浮いた隙間にへ導かれるように吸い込まれた。


「ギャァアアアアアッ!?」


 強烈な雷撃が奴の神経系を直接焼き、巨体を激しい痙攣が襲う。

 数秒だが、ザルヴァという怪物の動きを止めるには十分すぎるほどの確かな隙。


「もらったぁあ!天聖斬!」

「グォオオオッ!?」


 雷光の残滓の中でザルヴァの目が驚愕に見開かれる。

 奴の視界が捉えたのは得物を駆らんばかりの眼でエクスカリバーを振り上げたシャーロットの姿だ。


(まさか……こいつらの狙いは最初から……っ!)


 シャーロットが放ったのは美しくも容赦のない白銀の袈裟斬り。

 肉を断ち、骨まで裂くように宙を舞ったのは漆黒の装束に包まれたザルヴァの左腕だった。


「あぁ……っ。俺の腕がぁあ……っ!?」


 これによって二刀流の強みの半分を物理的に奪い取った。

 血を噴き出しながらも、ザルヴァは執念だけで残された左腕の剣を振り回す。


「ガァアアアアッ!クソガァアア!」


 深手を負ったとは思えぬ捨て身の一振りだが、死に体の一撃など、今のシャーロットの敵ではない。

 彼女は最小限の動きでそれを躱すと、エクスカリバーを再び正眼に構えた。


「天聖連貫!」

「ギャァアアアアアッ!」


 一拍の間に大雨のような勢いの幾重もの光の筋を帯びた連続突きがザルヴァの巨大な肉体を穴だらけにするのだった。

 ザルヴァの身体から鮮血が舞う中、そこへとどめと言わんばかりに俺の握る聖弓セレスティアロから放たれた二本の“破魔光の矢”が奴の延髄と頭部を正確に射抜いた。


「グォオオオオオオオオッ!」


 突き刺さった箇所から闇を浄化する白光が扇状に広がっていく。

 それはザルヴァの身体を内側から焼き、邪悪な魔力を灰へと変えていく美しくも慈悲なき光。

 それは聖なる力を帯びた一撃を受けた魔族にとっては致命の一手でもあった。


(……ダメだ。もう、抗えな……い……)

「ちく……しょうが……」


 ザルヴァは数秒、何かに耐えるように立ち尽くした後、その身体は膝から力が抜け、大の字になって大地へと倒れ伏す。

 鈍くも虚しい音が戦場に響き渡った。


 それはザルヴァの敗北を告げ、俺とシャーロットの勝利を暗に示すメッセージだった。

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