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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第四章 魔族と人間の友和を願う者との出会い

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第142話 あれゆく集落

戦いの幕が上がります!

 人間との友和を夢見る魔族たちが住まう集落とその近辺は戦場と化している。

 そこには尖兵として部隊を率いているゴレドアとリチェナスを筆頭に進んで来た。

 家々の石壁は砕かれ、慈しみ育てられた田畑には無慈悲な傷跡が刻まれていた。

 混沌と化した集落で俺たちは絶望の波を押し返していた。


「この集落は荒らさせない!」

「「ギャァアアアアア!」」

「ホーリーシールド!皆さん、わたくしの後ろへ!」

「ありがとうございます!」

「ハッ!」

「「ガァアアアア!」」


 シャーロットが武装した魔族の兵士二名を斬り裂き、メリスが光の壁を生成して集落で暮らす魔族を守り、俺は二本の“爆撃の矢”をリスクレベルBのマッドオーガ二体の頭に当てて爆発させた。


「オラァアア!地雷斬!」

「デュアルストーム!」

「「「「「グワァアアアア!」」」」」

「皆さん!こちらへ!」


 ジャードによる大地を叩き割るような一撃がリスクレベルAのジャイアントオークを股下から一両断にし、ロリエの二つの風属性の魔法陣から放たれた竜巻が群がる魔物どもを宙へと放り出す。

 ファミーナの側近の一人であるカリュミノは避難誘導に当たっており、混乱する住人たちを鋭い声で統制し、確実に安全圏へと導いている。

 中心まで踏み込まれてこそいないが、あちこちに火の手が上がっており、現場は混沌と化している。


「ほう。勇者パーティの連中が直々に接待してくれるとはな。運が良いぜ」


 この軍勢を率いる魔王軍の幹部の一人であるザルヴァが低く笑っており、その瞳には手柄を渇望する野心がぎらついていた。


「何にしても、勇者パーティの連中がここに来ていたとはな。タイミングが良いぜ」

「ここで武功を挙げれば、幹部の座も夢じゃないかもね!」

「そうかもしれんな。お前ら……やれ」

「「ハッ!」」


 ザルヴァの発破と共に、ゴレドアとリチェナスが弾丸のような速さで突進してきた。


「む……っ!?」

(この気配は?)


 魔物や末端の魔族の兵士を倒しているジャードは何かを気取った。

 次の瞬間。


「潰れな!オラァアア!」

「フゥウン!」


 ゴレドアが振り下ろしたのは鉄塊のような戦槌であり、ジャードは咄嗟に盾を構え、全身の筋肉を硬直させてそれを受け止めた。

 大地を陥没させると同時に凄まじい衝撃波が周囲の瓦礫や倒れている魔物を吹き飛ばす。


「ぬぅう……ッ!」

(何なんだ?この重さは……?コイツは!?)


 火花を散らしながら、二人は互いに弾け合うように距離が空く。


「お前、そこらの雑兵とは格が違うな」

「ああ、そうだ。俺は魔王軍精鋭が一人、ゴレドア。……まさか盾一つで俺の一撃を止めるとはな。やはり勇者パーティの戦士は骨がある」

「それはどうも……」


 ゴレドアの高揚したような表情をよそにジャードは素っ気ない返事を返す。

 しかし、今の一撃で互いの力量はある程度把握したようであり、ジャードは剣と盾を、ゴレドアは得物である戦槌を構えて向き直るのだった。

 その時。


「――隙ありよ」

「なっ……!?」

(まるで気配が無かった)


 ジャードの背後から実体を持たない煙のようにどろりと女の魔族が這い出した。

 黒く塗られたロングナイフがジャードの無防備な背中を狙って突き出されようとしたその瞬間。


「――シッ!」


 鋭い金属音が響き、ジャードを襲う凶刃が弾かれた。


「むぅ……!」


 そこに割り込んだのはファミーナの側近の一人であるカリュミノだ。


「ハッ!」

「フンッ!」


 カリュミノが握るロングナイフに力を込めた一撃は奇襲してきた女の魔族を引き剥がした。


「やっぱり、あんたが出張って来るなんてね!カリュミノ!」

「そんな言葉は受け付けないわよ。ヒディニス!」


 二人の女の魔族はこの場が「狭すぎる」ことを悟るように、一瞬の硬直の後、二つの影はもつれ合うようにして戦場を脱し、集落の外へと消えていった。


「おやおや、ヒディニスにとっては因縁の同僚とここで決着を着けたい感じかな?」


 ゴレドアが肩を竦め、血に飢えた悦楽を瞳に宿しながら再び鉄槌を構え直す。


「それはどういう意味だ」

「別に。こっちの話さ……」


 鋭い視線で見据えながら構えるジャードに対し、ゴレドアは開き直るような仕草を見せるのだった。


◇———


 集落の混乱の渦から少し離れた静けさが漂う原野。


「シュッ!」

「ヒュンッ!」


 そこでは二つの剣閃が響き、火花が散っている。

 カリュミノの鋭い刺突をヒディニスが紙一重の体捌きでいなし、返しの刃で急所を掠めるを繰り返している。

 その合間を縫うように、袖口から放たれた暗器が空を裂き、互いの肌を薄く切り裂いていく。


「腕は落ちていないようね、カリュミノ。ちょっと安心したわ」

「……貴女こそ相変わらずね」


 軽口のようなやり取りを交わす両名だが、視線に宿る殺気は触れれば指が凍り付きかねないほどに鋭く、カリュミノはロングナイフを握り直す指先に力を込めた。


「ヒディニス!なぜ……なぜ貴女ほどの者がリザエラに与するの?先代様が描いた人間との和睦……あの高潔な夢を共に追っていたはずでしょう!?あれは全て嘘だったの?」

「人間との和睦?んー、そんな話に付き合わされたこともあったかしらね。でも、ごめんなさい。私はリザエラ様の思想の方が合っているのよ」

「何……?」


 カリュミノは説得したい気持ちを交えながら訴えていたが、ヒディニスは馬の耳に念仏かのように聞き流した。


「……やっぱり、心底反吐が出るわ。あんたのことも、ギラドルスの青臭い綺麗事も、それに縋って生き延びているファミーナなんていう遺物もね。全部、まとめて叩き潰してあげたいのよ」

「――貴様ッ!」


 ヒディニスは吐き捨てるように言い切り、それを聞いたカリュミノの瞳に烈火のごとき怒りを宿しながら、重心を前にやや深く落とした。


 因縁に終止符を打たんばかりのもう一つの戦いの狼煙がここに上がるのだった。

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