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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第四章 魔族と人間の友和を願う者との出会い

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第141話 斬り裂かれた平穏

緊急事態です!

 静寂を無慈悲に斬り裂いた鐘の音は一度、二度と重なるたびに鋭さを増し、俺たちの鼓膜を執拗に震わせた。

 先ほどまでの穏やかな語らいが嘘だったかのように遠のいていく。


「ファミーナ様!」

「ジュウロン! それにカリュミノも……っ」


 ファミーナの邸宅へと引き返そうとした俺たちの前に、彼女の側近であるジュウロンとカリュミノが飛び込むような勢いで現れた。


「……ねえ、この音。ただ事じゃないわね?」


 シャーロットが剣の柄に手をかけ、低く鋭い声で問う。


「はい。この集落における、放置すれば大変なことになる緊急事態を知らせる音でございます」


 ジュウロンは焦燥を必死に押し殺しながら説明しており、事態の深刻さを物語っている。


「……迂闊でした。狙い澄まされたのか、それとも単なる不運か。私が休息に入った隙を突かれるとは……!」


 諜報を担うカリュミノが自らの掌を強く握り締めている。

 昨日までこの集落に危険が及ばないように諜報に奔走していたため、さっきまで休息を取っていた。

 故に今の状況は失態以外の何物でもないのだろうと感じているかのように悔しさを滲ますその表情を見て、ファミーナがその肩にそっと手を置いた。


「自分を責めないでカリュミノ。貴女一人のせいではありません。今は、これからどう動くべきかを考えましょう。力を貸してください」

「勿体なきお言葉です。もちろんでございます」


 彼女は自分の失態を悔いているものの、ファミーナは責めようとしなかった。


「ファミーナ、私たちにも手伝わせて!」


 シャーロットが踏み出しながら提案をした。


「えっ?ですが、皆様にまで……」

「いいえ、これは私たちの戦いでもあるわ。迫っているのが魔王軍なら、それは紛れもなく人類の、そして勇者パーティの敵!見過ごせるはずがないわ!そうでしょ!?」

「当然だろ」

「この集落に住まう魔族は優しくて暖かい方ばかりです!わたくしはそれを守りたいと心から思います!」

「あたしも同意!理屈抜きで、あいつらをぶっ飛ばしたい気分なのよ!」

「あぁ、速攻で片づけてやるよ」


 シャーロットの言葉を聞いた俺に続き、メリス、ロリエ、ジャードが次々と声を上げる。

 ファミーナは驚きに目を見開いた後、こぼれそうになる涙を堪えるように深く、深く頭を下げた。


「皆様……本当にありがとうございます……」


 その感傷を断ち切るように、一人の村人が転がるようにして駆け込んできた。


「ファミーナ様!大変です!……近くの林を焼き払いながら、魔王軍の軍勢が迫っています!間違いありません!」

「何ですって?」

(やはりか!)


 集落に住まう魔族の一人が大慌てで駆け付け、状況を説明してくれた。

 少なくとも、脅威がすぐそこまで迫っている証拠だ。


「皆!状況は一刻を争うから行きましょう!」

「「おう!」」

「えぇえ!」

「はい!」

「ファミーナ様。私も勇者パーティの皆様と行かせてください。ジュウロン」

「心得ております。ファミーナ様、まずは中へ……」

「はい。皆様、カリュミノ。どうかお気をつけて」


 やるべきことは決まった。

 ジュウロンに促され、後ろ髪を引かれるような思いでファミーナが邸宅に入っていき、その背中を一度だけ振り返り、俺たちはカリュミノの先導で駆け出した。


「私が案内します!付いて来てください!」


 カリュミノが先導する形で俺たちは目的の場所へ駆け出していった。


◇———


「ゴガァアアア!」

「「「「うわぁあああ!」」」」

「グォオオオオオ!」

「「「「キャァアアアア!」」」」

「ハハハハハハ!いいぜいいぜ!田畑も焼き尽くせ!」


 既に魔族や魔物の集団が集落の建物や田畑を蹂躙している。

 魔族が手当たり次第に荒らしていき、魔物が我が物顔のように踏み躙っていく。


「もっと暴れろ!歯向かう者は殺し、金品も奪い尽くせ!」


 黒くも重厚な鋼の鎧を鳴らし、頭頂部に突き出た一本角を生やした巨大な戦槌を振りかざしている鉄紺色の髪をしたゴレドアが高らかに笑みを浮かべながら叫んでいる。


「我が魔王軍の前に跪くがいいわ!」


 すみれ色のローブを纏ったうなじから反り返った二本の角を生やしたリチェナスは手に握る杖を振るいながら魔法を繰り出し、黒炎を撒き散らしては現場を阿鼻叫喚な地獄を作り出していく。

 既に集落の三割近くが火の海と瓦礫の山へと変わり始めており、住まう魔族たちは逃げ惑い、傷つけられていき、逃げ遅れた者は物言わぬ骸へと変わっていく。


「あっ!」

「ママ!」

「「ッ!?」」


 その中で母親と思しき魔族の女性が衝撃で躓き、その子供が駆け寄った。

 魔王軍の兵士二名が醜悪な表情で近づく。


「へっへへへ。俺たちから逃れるなんざできねえんだ。悪く思うなよ」

「うっ。うぅう……」

「あっ、あぁあ……」


 争いを望まないはずの親子の魔族が無粋かつ理不尽に何もかもを奪わんとする魔王軍に与する魔族によって命を奪われようとするその時だった。


「シュッ!」

「グオッ!?」

「ガハッ!?」

「「えっ……?」」


 突如として、親子を手に掛けんばかりの魔族二名のこめかみや喉辺りにそれぞれの一矢が貫き、致命傷となったことで力なく倒れ伏した。

 突然の出来事に親子の魔族は呆然としていた。


「フリージングレイン!」

「「「「「グギャァアアアア!」」」」」


 続いて女性の声が響くと、槍のようなサイズと形状をした大量の氷柱が魔物たちの身体に突き刺さっていき、半分は動けなくなった。


「な、何よ?」

「何者だ?」

(この集落にこんな高度な魔法が使える魔族がいたか?)


 ゴレドアとリチェナスが明後日の方角を向くと、そこにいたのは……。


「お前らの好きにはさせないわ!魔王軍!」


 エレミーテ王国の勇者パーティの面々だった。

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