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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章 魔王軍との戦い、本当の意味での死地へ

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第128話 送別と再会

久しぶりに勇者パーティが揃います!

「いよいよだね。ここでやり残したことはまだあったりする?」

「いいえ。ございません」

「俺も同じくだ」


 俺はシャーロットやメリス、一時帰還している面々はエレミーテ王国の王都エメラフィールから発つ朝を迎える。

 せっかく戻って来たのにって思いつつも、フォーペウロの王都バアゼルホに残っているロリエやジャードをいつまでも放置するわけにはいかない。

 ここでやるべきことは全て果たしたのだからな……。


「それでシャーロット。国王陛下の計らいで見送りがメインの送別会みたいなことをするとかなんとか……」

「変な言い方しないの。激励を込めての送り出しなんだからさ!」

「それも、そうですね……」


 そんなやり取りを交わしながら、王城の広い一室へ向かうのだった。


◇———


 エレミーテ王城にある白亜の大広間。

 普段は静かな空間に包まれるはずのその場所は熱を帯びた声に満たされていた。


「リュウト、いつか必ず帰って来いよ!」

「次会うときは祝杯だ。忘れるなよ!」

「死ぬんじゃないぞ!」

「寂しいぞ!」

「元気でな!」


 王城にある大広間にいたのは予想通りの面子だった。

 そこにはかつて俺が身を置いた遊軍調査部隊のモーゼル隊長やソフィア副隊長、ゾルダーさんやシーナさん、アンリやトロンたち第六班の面々がいる。


 他にも騎士団のトップであるシュナイゼル団長やそれに近い立場の方々、メリスの実姉であるセアラ様やリリナもいる。

 予想はしていたが、これほどの人間に見送られることになるとは思わなかった。


「リュウト! 魔王軍との戦いは佳境だと聞いている。……お前なら、成せると信じているぞ」

「お前ならできる。自分を疑うな」

「モーゼル隊長。ソフィア副隊長。皆……」


 モーゼル隊長とソフィア副隊長たちの言葉は、重く、温かい。

 これが単なる形式上の激励ではなく、一人の戦友に宛てた、心の底からの願いなのだということが分かる。

 その想いと覚悟が腹の底で静かに固まっていく。

 視線を転じれば、パーティのリーダーであるシャーロットがシュナイゼル団長と向き合っていた。


「シャーロット殿。魔王討伐という人類の悲願が叶うことを心から願っている。どうか……どうか、ご武運を」

「はい。この命に代えても」

「それから、ジャードに会ったら伝えてくれ。『お前ならやれる。私は、お前の可能性を信じている』……とな」

「分かりました。必ず伝えます」


 固い握手を交わす二人。

 一方、メリスが実姉であるセアラ様と向かい合っていた。


「メリス、あなたの旅路に神の加護と幸いがあらんことを」

「ありがとうございます、お姉様。聖女として、そして勇者パーティの一員として……必ずや使命を果たして参ります」


 姉妹の絆が決意の言葉となって広間に響く。

 それぞれの別れと約束。

 それらを断ち切るように、一人の伝令兵が鋭い声を上げた。


「報告! フォーペウロへの転移準備、完了いたしました!」


 その瞬間、空気が変わった。

 俺は最後に一度だけ、集まった面々の顔をなぞるように見つめた。

 この光景を魔王軍との戦いという地獄を生き抜くための最高の護符として、脳裏に焼き付ける。


「では、行ってくる!」


 シャーロットの凛とした声を合図に俺とメリスは踵を返した。

 広間から延びる長い廊下の背後で重厚な扉がゆっくりと閉じられていく。


(リュウト……)


 閉まりゆく扉の隙間、最後に視線が重なったのはリリナだった。

 俺の背中を見つめる彼女の瞳には泣き出しそうなのを必死に堪え、唇を噛み締めながら送り出す一つの決意だった。


(私……信じてるから。ずっと、待ってるからね……)


 声にならないその祈りが空気に乗りながら、俺の耳を掠めた気がした。


◇———


とある一室に白い閃光が瞬いた。

鼓膜の奥でキィィンと高い残響が鳴り、平衡感覚が消失する。転移魔法特有の、あの胃の腑が浮き上がるような不快感が通り抜けた後――。


「ここは確か……?」

「フォーペウロの王城だと思いますよ」

「うん、そうだな」


 光に包まれて視界が真っ白になり、次に目に映ったのは転移水晶のある部屋だった。

 見覚えがある。フォーペウロ王城にある、許可された者しか立ち入りを許されない転移の間だ。


「間違いありません。フォーペウロの空気……エレミーテより、少しだけ肌寒く感じますね」


 どうやら座標のズレもなく無事に帰還できたらしい。


「さて、まずは戻って来たことを――」

「おっ!」


 そう言いかけたシャーロットの言葉を遮るように、厚い木製の扉が外側からノックされた。


「誰だ?」


 ガチャリとした音と同時に扉が開く。


「むっ……?おお、あなた方は……勇者様!戻られましたか!」

「はい。ついさっき戻りました」


 現れたのは城内を巡回しているフォーペウロの騎士だった。

 俺たちの顔を見るなり、彼はあからさまに安堵の表情を浮かべる。

 どうやら無駄な警戒だったらしい。

 簡単な事情説明を終え、俺たちは騎士の案内で作戦会議室を兼ねた一室へと向かった。


「あっ!皆、お帰り!」

「お前ら、戻って来たのか?」

「ロリエ!ジャード!」


 呼ぶ手間が省けてよかった。

 それから俺たちは部屋の中に入っていく。


「はい。ジャード。国王陛下やシュナイゼル団長たちが用意してくれた防具よ」

「おぉおお!これが俺の新しい盾か!」


 重厚な布に包まれていた盾を差し出し、受け取ったジャードの腕がその重みに一瞬だけ沈んだ。


「お、おおおお……!こいつは、すげえ……!」


 そこには六角形を基調とした白銀の輝きを放つ大盾であり、無骨ながらも洗練されたフォルムからは以前の盾とは比べものにならないほどの重厚感を放っている。

 何でも、以前使用した盾にはない術式を施されているようであるとのことだ。

 詳しいことはメモも預かっているので、それも手渡した。


「……ジャード、シュナイゼル団長から伝言を預かっている。『お前ならやれる。私はお前の可能性を信じている』……だそうよ。再会したらちゃんとお礼を言いなさいよ」

「分かってる!」


俺の言葉にジャードは溌剌と答え、それから盾の縁を愛おしそうになぞった。


「この盾でお前らを守るぜ!」


 その声には武人としての新たな覚悟が宿っていた。

 俺は視線をロリエへと移す。


「ロリエの方はどう?何か収穫はあったか?」

「あたしも十分、収穫があったよ」

「期待しても良さそうだな」

「任せてよ」


 ロリエは自信たっぷりに胸を張り、唇の端を吊り上げた。

 表情から見るに、何か新しい魔法を会得したのかな?

 だとしたら、更に頼もしく思える。


 こうして、俺たち勇者パーティはしばらく振りに五人全員が揃うのだった。

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