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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章 魔王軍との戦い、本当の意味での死地へ

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第125話 【Sideジャード&ロリエ】今よりもっと

ジャードとロリエ視点のお話です!

 リュウト、シャーロット、そしてメリスの三人がエレミーテ王国へと一時帰還した翌日。

 フォーペウロの王都バアゼルホ。


「フンッ!ハッ!」

「がはっ……!?」


 王城内の稽古場の乾いた土が舞う。

 俺の振るった木剣が騎士の剣を払い、地面に伏せさせた。

「大丈夫か?」

「……ああ。流石だな。完敗だ」


 差し伸べた手を掴み、騎士が苦笑いを浮かべて立ち上がる。

 これで十人抜きだ。

 シャーロットたちが装備の新調や魔王軍との戦いの報告をするために一時帰還する中、俺とロリエはこのバアゼルホに残ることを選んだ。


「部隊長を相手に見事な戦いぶりだ」

「強い……。あの巨体でこれほどまで精密な剣を振るうとは」

「あれがエレミーテ王国の勇者パーティの戦士か。先の戦場での活躍も納得だぜ」


 外周から聞こえる騎士たちの囁きに俺は無言で応える。

 彼らの評価は素直にありがたい。

 だが、どこか俺の心に空虚な響きを残していた。


「……」


 木製の剣や盾で稽古をしているものの、俺には目下の悩みがあるからだ。


「防具の問題が解決すれば、完璧なんだけどな……」


 視線を落とせば、そこにあるのは鍛錬用の簡素な木楯だ。

 エレミーテ王国騎士団に籍を置いていた頃から、幾多の死線を共に潜り抜けてきた愛用のミスリル盾だったが、魔王軍幹部との激闘の末、修復不能なまでに砕け散ったあの重みが今の俺には決定的に欠けていた。

 俺がバアゼルホに残ると決めたのも、そこで自分に見合う防具がないかを探したかったのもあるけど、こうして他国の騎士と手合わせを兼ねた鍛錬もしておきたいのも理由の一つでもある。

 この場で他国の騎士を相手に稽古を繰り返しているのは一種の足掻きでもあった。


「やあ、精が出るな。勇者パーティの戦士殿」

「……アルフラドさん」


 背後からかけられた声に俺は背筋を正した。

 現れたのはフォーペウロ王国騎士団の頂点に立つ男、アルフラドさんだ。

 その身から放たれる静かな威圧感は彼が一線級の武人であることを雄弁に物語っている。


「調子はどうだ?ここの連中では君の退屈を紛らわすこともできんか」

「とんでもない。皆さん、フォーペウロの騎士らしい素晴らしい練度です。……ただ、装備の問題さえ解決していれば、より集中できたのでしょうが」

「盾、だったな。……君の仲間たちが今この瞬間もそのために奔走してくれているのだろう?」


 アルフラドさんの言葉に俺は言葉を詰まらせた。


「自分一人で強くなろうとするのも騎士や戦士の美徳の一種だろう。だがな、君と同じ方向を見据え、君のために走ってくれる仲間がいる。その事実を誇りに思いなさい。仲間を信頼して背中を預けることもまた、戦う者の強さなのだよ」


 穏やかながら、芯の通った助言が凝り固まりかけた俺の肩から余分な力を抜いていく。

 アルフラドさんは不敵な笑みを浮かべ、傍らに立てかけてあった剣を手に取った。


「さて、講釈はこのくらいにしよう。……どうだ?次は私と一戦、やってみないか?」

「……え?団長自ら、ですか?」

「勇者パーティに選ばれた戦士の力、この肌で確かめてみたいと思ってね。本気で来てもらわねば、私の気分が害されてしまいそうでね」


 周囲の空気が一変した。

 観戦していた騎士たちが固唾を呑み、稽古場に張り詰めた緊張が走る。

 だが、俺にとってもこの状況はありがたかった。

 フォーペウロ国内でも最強と謳われる男の挑戦を断る理由など、どこにもない。


「……はい!是非とも、よろしくお願いします!」


 俺は深く腰を落とし、木剣と木楯を構え直した。

 歴戦の騎士を前に、俺の心臓の鼓動が激しく高鳴る。


「本気で行かせてもらうぞ、ジャード!」

「全力で参ります!」


 互いの闘気がぶつかり合って爆ぜる。

 数刻の静寂の後、俺たちは同時に地面を蹴り、鋼のような意志を乗せた一撃を突き合わせた。


 今よりも……もっと強くなる。


◇———


「あっ。これだこれだ」


 あたしはこのバアゼルホ王城の最奥にある外界の喧騒も、柔らかな陽光すらも拒絶せんばかりに肌を刺すひんやりとした空気は古びた紙と革、そして微かな魔力の残り香が混ざり合った独特の匂いを孕んでいる。

 そこは本来ならば一般人はおろか、王城の末端の使用人すら入れない場所なのだけど、勇者パーティの一員であることや魔王軍との戦いに備えて腕を上げたい旨を伝えると、フォーペウロの第一王女であるレイニース様が書物の閲覧の許可を出してくれた。


「それにしても……改めて見ると圧巻ね。これ、全部が本だなんて」


 書庫の中はまるで別の世界ようであり、見上げるほどに高い天井まで届く本棚が迷路のように連なり、ところどころで細い通路が十字に交差している。

 五メートルはあろうかという棚には魔術書はもちろん、建国以前の系譜書、滅んだ国の詩集、遠い東の風習を記した羊皮紙、果てはマイナー極まりないだろう写本までが、隙間なく詰まっている。

 エレミーテの王宮書庫だって立派だけど、量や深さ、匂いすら桁が違うのではって思えてならない。

 もしも魔王軍との戦いが絡まず、プライベートだったら缶詰状態で何日に渡ってでも魔術に関する本を読み漁っていただろう。


「あっ、これも。この魔術書もっと……」


 テーブルに向かう途中で何冊か本を手に取った。


「まずはこんなところかな?」


 あたしは五冊ほどの魔術書をテーブルに置いた。

 それから一冊を手に取って本を開いて読み込んだ。


「もっと強くならないと……」


 今以上に力を付けるため、あたしは一時的とは言え、シャーロットやメリス、リュウトと離れる決断を決めた。

 魔王軍との戦いで感じたあたしの足りないモノを埋めるためだ。

 術式形成の効率化や詠唱の省略化、新しい魔法の開発やあたしが見聞きしたことのない魔法の知識収集など、やるべきことがたくさんある。

 昨日のうちにレイニース様へお願いして要望が通ったのも、シャーロットたちが掛け合ってくれたお陰でもあるからね。

 だからこそ、得る物を得ないと、申し訳が立たない。

 試したいことがあれば、稽古場の空いたスペースを自由に使っていい許可ももらっているから、後でやろう。

 それから数時間後……。


「……ふぅ。まずは、こんなところかしらね……」


 あたしは魔術書から書き記した数枚の書簡をまとめた。

 羽ペンを置き、凝り固まった肩を回しながら時計を見渡すと、夕方になりかけている。


「昔っからこうなのよね」


 魔法に関しては研究肌だからね、あたしは。

 元あった場所に本を戻したあたしは一旦、書庫から出て行くことにした。


「あら……?」


 そんな時、視界の端に一冊の背表紙が引っかかった。

 他のと比べてみると、ひっそりしつつ、妙な存在感を放つ古い装丁に一つのタイトルが記された書物が目に入った。


「『人間と魔族の融和物語』……って……」

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