第七話「始まりを告げた」
俺は辺りを見回し、人がいないことを確認する。
よし…誰もいないな。
そして俺は、すぐに気になっていることを口にした。
「颯太…お前、頭でも打ったか…?」
今の出来事に必要になる要素ないだろ…
大丈夫か…?まさか言ノ葉に洗脳されて…
そんなことを考えていると、颯太は話し始めた。
「言ノ葉恵、だったか?お前、今日から兄がいるかを聞いて回ってくれ。女子高生にな」
「「は?」」
その瞬間、俺も言ノ葉も、同じ言葉が出た。
「あの…颯太さん…すみません…それはどういう…?」
ふと後ろを見ると、目に光のない、幻滅した顔をした言ノ葉がそこにいた。
「ま、まて言ノ葉、きっと何か理由があるんだ…うん…そうだよな…?」
俺は颯太の方に振り向く。
すると、呆れた顔をして颯太は俺達を見つめていた。
「あのなぁ…流れ的にどう考えても未練に関係してるからに決まってんだろ…」
言ノ葉の目が一気に輝きを取り戻す。
「なーんだ、そういうことですか!!」
俺も正直安心したわ…
「なあ、」
颯太はそう言うと、少し考え込み、一言。
「未練、話すよ」
「な…そ、そうか」
拍子抜けだ…もっとかかると思っていたが…
「ほ、ほんとですか!!なら、早く話してください!!早く!」
「分かってる分かってる。話すよ」
言ノ葉が焦らしてくるのを軽くあしらうと、すぐに話を始めた。
「俺には妹がいてな、病気だったんだけど、結構まずい状況になってさ。ドナーがいるようになったんだよ。でも、ドナーが見つかる前に俺は死んだ。だから、妹が元気なのか…それとも…」
そのとき、颯太の顔が曇った気がした。しかし、その気持ちを抑えるようにして、颯太はさらに話を続けた。
「まあ、ようするにさ、それを確かめたいんだよ。だから言ノ葉には妹を探してほしい。それだけだ。ほら…これでいいだろ?」
「それだけって、お前…」
あまりにも軽い言葉…しかしその内容は、軽いではすまされないほどの内容だ。
「お前、そんなこと軽く言うもんじゃないだろう…」
「重い雰囲気なるよりはいいだろ?正直、説明するのも面倒くさいしな」
颯太のやつ、本当にそういうところ…
まあ、聞いたのは俺達だ。そんなの、俺が決めることじゃないよな。
「颯太さん!」
急に言ノ葉が叫んだ。
ビクリと俺と颯太の肩が動く。
「び、びっくりさせるなよ、」
あれ?ーーふと、気づいた。
言ノ葉のやつ、さっきから何も話してなかった。いつもは自分のことしか考えてないのに、、、
それとなく言ノ葉に目を向ける。
ーーそのとき、俺の目に映った言ノ葉は俺の見たことがない、そんな言ノ葉の姿だった。
それは見た瞬間、表情や空気から直感で読み取れた。
言ノ葉の顔はいつもと違い、目や口が全体的に引き締まり、真剣だというのが全面から伝わってくる。
こんな真剣な言ノ葉見たことあったか?いや、ない。どうしたんだ、言ノ葉、さっきまではあんなに間抜けだったのに…
すると、言ノ葉が口を開いた。
「颯太さん、きっとまだ何か隠してるんでしょう?でもそれは無理に言わなくていいです。私はただ、颯太さんの未練解決に集中します。でも、だけど、気が向いたら話してくださいね!私も坂口さんも、颯太さんの味方ですから!」
そう言って言ノ葉は、にこやかに微笑んだ。
「言ノ葉恵…」
「はい、なんですか?」
「まだ俺はお前らに話すつもりはない」
「はい」
「でも、これから気が向いたら話すよ」
「分かりました!じゃあ、それまで待ってますね!」
「…わかった」
その言葉は颯太にも届いたのか、どこか颯太の声が丸くなったような気がした。
「さて、とりあえず坂口さんの家に行きましょう!!お腹が空きました!!」
ーー「は?」
「颯太、ご飯炊けたか?」
颯太は炊飯器の蓋を開け、確認する。
「ああ、炊けてる」
「ん、」
お昼どきのキッチン、俺と颯太は昼ご飯を作っていた。料理と言っても、豚の生姜焼きをご飯にのせて丼にするだけの簡単なものである。
なぜ豚か…それは勿論の如く、牛が高いからだ。
キッチンにほかほかとしたご飯の匂いが漂い始めた。
それにつられたのか、リビングでテレビを見ていた言ノ葉がキッチンまで来た。
「お腹すいたんだけど、まだなの?」
「まだだ。ちょっと待っとけ」
ご飯が炊ける前に作った豚の生姜焼きをレンジに入れ、三分程度。
「はぁ、レンジ待ってる時の時間って、すげえ暇だよな」
颯太が突然そう言った。
なんとなく既視感のあるその言葉に、薄っすらと、昔の記憶が蘇る。
「ああ、たしかにすげえ暇だ…」
ーー「ぐぅぅううう」
言ノ葉のお腹が鳴った。
それを聞いた颯太が口を開く。
「ふっ、お腹も減るしな!!」
「か、からかわないでください!!」
「からかってねぇよ!」
そう言いながら、顔を赤くする言ノ葉を見て颯太が笑った。
ーー「ピーピーピー」
そんな二人を眺めていると、レンジが鳴った。
「よし、ほらお前ら、飯食うぞ」
「やったー!」
一人一つ、丼を手に持ち、リビングまで持っていく。
そして適当に席につくと、各自が「いただきます」と箸を持ち、食べ始めた。
「坂口、思ったより生姜焼き丼、いけるな」
「だろ?簡単だからお勧めだ」
「坂口さん!牛の方がやっぱり美味しいですね!」
「今からでも食うのやめるか?」
「ごめんなさい」
そんなくだらない会話を交わしながら、ダラダラと食べ進める。
他愛のない日常ーーしかしそれは、俺も、颯太も、言ノ葉も、全員が久しぶりで、どこかぎこちなくも、楽しい、そんな時間となった。
丼というのもあり、颯太、俺、言ノ葉と順々に食べ終わり、空になった皿を机に置いた。
「坂口、俺が皿洗っとく」
「ああ、すまんな」
颯太は家事がどこか手慣れていて、下手をすれば俺よりも上手いのではないかと思うほどだった。
妹がいたというのもあって、家事を手伝ったりしていたのだろうか…
「言ノ葉、ちゃんと見習えよ」
俺は何もせずテレビを見る言ノ葉に呟いた。
しかし、言ノ葉はこちらを向くことすらなく、ひたすらにテレビを見続ける。
「おい、返事くらいしろよ」
「はいはい」
こいつ…
俺はゆっくりと言ノ葉の背後まで忍び寄る。
そして、無防備な腰辺りをコショコショとしてやった。
「ちょ、坂口さ、やめ、あはっあははは!」
それから数秒、息が止まりそうになるまで何回も笑かしてやった。
「…これでこりたか?」
「…はぁ、はぁ、は、はい、はぁーー」
笑い疲れて、息切れまでしている。
さすがにやりすぎたか?とも思ったが、言ノ葉なのでまあ、いいだろう。
「なんか面白そうなことやってんな」
食器を洗い終わったのか、颯太がリビングまで戻ってきた。
「まあな」
…颯太って、ほんとに霊なんだよな。
…どうしてもそうは思えない。
「なぁ、お前ってほんとに霊なのか?」
「もちろん霊だ」
やっぱ霊なのか…
俺は言ノ葉とは違い、霊というのがどんなものなのか、何一つ知らない。
せっかくだし、少し聞いてみるか…
「なあ、霊が物を触るとそれはどうなるんだ?」
俺は最初にそんな質問をした。
単純に気になる疑問だったからな…聞いといて損はないだろう。
「物か…説明面倒くさいんだよな…なあ、別にそんなことよくないか?」
「普通に気になるだろ、俺はまだ生きてんだからな」
「…まあ、気が向いたら話してやるよ」
気が向いたらって…絶対言わないやつじゃねぇか…
俺はモヤモヤした気持ちを抑えつつ、諦めてこの話を辞めた。
「そうだな。気が向いたら、話してくれ」
つい昨日まで、何もなかったこの家。しかし今日はこんなにも賑やかになっている。これが俺にとってどれだけ嬉しいことか…こいつらにはきっと分からないだろう。
俺はこいつらに救われたのかもしれない。何もかもを失って、ただ自暴自棄になっていた、クズな俺を…
ーーだからこそ、颯太の未練、絶対に解決してやる。
前の話も色々修整したりしてて、大幅に変わってるところもあると思います。ほんとすみません。なるべく一回の投稿で完成させれるように頑張るのでよろしくお願いします!




