第八十七話 連れて帰る
有岡城の門は、まだ完全には閉じられていなかった。
毛利との合流を急ぐため、荒木村重は先ほど五百の兵を追加で城外へ送り出している。その余韻が残る城門では、人の出入りが普段より多く、兵たちの意識も西へ向けられていた。
毛利が来た。
その報せが、有岡城全体を浮き足立たせている。
数日前まで「毛利は来ない」という噂に怯えていた者たちほど、その反動は大きかった。
景継は弥兵衛を含む十数人とともに、城へ近づいていった。
全員が織田方と分かる格好をしているわけではない。城周辺を出入りする者たちに紛れられるよう、武具は目立たせず、刀もすぐには見えないようにしている。
とはいえ、一度疑われれば終わりだった。
十数人で有岡城を落とせるはずがない。
目的は一つだけ。
黒田官兵衛を見つけ、連れて帰る。
それ以外の戦いは、すべて避けなければならなかった。
「若様」
隣を歩く弥兵衛が、小さな声で呼びかけた。
「本当に北側だと思われますか?」
「思っているだけです。確証はありません」
景継は前を向いたまま答えた。
弥兵衛が一瞬だけ景継を見る。
「随分と素直に言われますな」
「ここで分かったふりをしても、黒田殿は見つかりませんからね」
景継は苦笑した。
報告では、官兵衛が捕らえられた頃から北側の一角だけ警備が厳しくなったという。
そこに官兵衛がいる可能性は高い。
しかし、あくまで可能性だ。
荒木村重が途中で場所を変えているかもしれないし、そもそも別の理由で警備が増えていた可能性もある。
未来を見ることなどできない。
手元にある情報から可能性の高いものを選び、違っていればその場で変える。
戦場では、それしかできない。
「もし違っていた場合は、予定どおり一度だけ探します。それでも見つからなければ退きます」
「黒田様を残して?」
「残します」
景継は迷わなかった。
弥兵衛の表情が少し険しくなる。
「冷たいと思いますか?」
「いえ。ただ、林道様なら見つけるまで探すと言われるかと思っておりました」
「それで全員死んだら、誰が黒田殿を助けるんです?」
景継の答えに、弥兵衛は何も言わなかった。
助けたいからこそ、退くことも決めておく。
それができなければ、救出ではなく道連れになる。
景継は前方を見る。
城門が近づいてきた。
門の向こうでは兵が走っている。
西から何か報告が届いたのか、一人の武将が大声で指示を出していた。
その瞬間、景継たちは人の流れへ紛れた。
誰も声を上げない。
走ることもしない。
できるだけ自然に門を抜ける。
景継の横を荒木方の兵が通り過ぎた。
呼び止められない。
そのまま十歩、二十歩と進んだところで、弥兵衛が小さく息を吐いた。
「入りましたな」
「まだです」
景継は答えた。
「出るまでが仕事です」
一行はそのまま北へ向かった。
◇◇◇
同じ頃、有岡城の西。
羽柴秀吉は、前方から届いた報告に顔をしかめていた。
「毛利方、さらに接近しております!」
「数は!」
「先行する兵だけでも千を超えるかと! 後方には物資を運ぶ一団もおります!」
秀吉は舌打ちした。
「簡単に言ってくれるわ、あの男は」
景継から与えられた役目は明確だった。
毛利を村重軍と合流させない。
だが、毛利を追い払う必要もない。
勝つ必要もない。
官兵衛を救出するまで、ただ時間を稼げ。
言葉にすれば簡単だった。
実際にやらされる側からすれば、たまったものではない。
毛利を強く叩けば本格的な戦闘になる。
弱く当たれば突破される。
しかも背後からは、有岡城を出た村重軍が迫っている。
下手をすれば挟まれる。
「殿! 荒木方も動いております!」
「分かっておる!」
秀吉は地図を睨んだ。
幸い、景継が選んだ場所は悪くない。
道幅が狭く、大軍が一度に広がれない。
毛利が兵数に任せて押し込もうとしても、先頭に出せる人数には限界がある。
だが、いつまでも持つ場所ではなかった。
秀吉は近くの兵へ命じた。
「鉄砲を前へ出せ。ただし撃ち続けるな」
「撃たぬので?」
「撃つ。だが近づいた時だけだ。奴らを倒す必要はない。前へ出れば撃たれると思わせればよい」
「はっ!」
「槍隊も前へ。追うなよ。下がったら、こちらも戻れ」
家臣が戸惑う。
「敵が退いても追わぬので?」
「今日は勝つなと言われておる」
秀吉は苦々しそうに言った。
「まったく、妙な戦をさせおる」
その時、遠くで銃声が響いた。
毛利方の先陣が近づいたのだ。
秀吉は前を見る。
「官兵衛」
誰にも聞こえない声で呟く。
「早く戻ってこい。長くは持たせられぬぞ」
◇◇◇
景継たちは北側の一角へ到着していた。
事前の報告どおり、周囲には武装した兵がいる。
しかし数は少ない。
毛利との合流のため、ここからも兵を抜いたという情報は正しかったようだ。
景継は建物を見た。
窓は少なく、出入口も限られている。
人を閉じ込めておく場所としては不自然ではない。
「六人」
弥兵衛が呟く。
見える範囲の守備兵だ。
奥にもいる可能性はある。
景継は周囲を確認した。
できれば戦いたくない。
ここで騒ぎを起こせば、城内全体に知られる。
だが、いつまでも待てない。
外では秀吉が時間を稼いでいる。
「二人を裏へ」
景継が小声で命じる。
「逃げる者だけ止めてください。できる限り声を出させないように」
二人が離れた。
残った者たちは少しずつ建物へ近づく。
一人の守備兵がこちらへ気づいた。
「おい。何者だ」
景継は止まらなかった。
「西からの命令です」
「何?」
「毛利方との合流に兵が必要だと」
兵の顔に迷いが浮かぶ。
今の有岡城では十分にあり得る話だった。
「聞いておらぬぞ」
「急ぎです。責任者は?」
景継が自然に距離を詰める。
兵が建物の方へ振り返った。
その瞬間だった。
弥兵衛が一気に間合いへ入る。
兵の口を塞ぎ、そのまま地面へ押さえ込んだ。
同時に景継の兵たちが動く。
一人。
二人。
残りの守備兵も異変に気づいたが、声を上げるより早く制圧された。
完全に無音とはいかなかった。
何かが倒れる音がした。
景継は建物へ走る。
「急ぎます」
扉を開けた。
中には細い廊下が続いている。
二つの部屋。
さらに奥に一つ。
景継たちは順番に確認していった。
一つ目。
誰もいない。
二つ目。
物置だった。
最後の扉には錠がかかっている。
「ここか」
弥兵衛が錠を壊した。
扉が開く。
景継が中を見る。
そして、足が止まった。
誰もいなかった。
「……違う」
弥兵衛が室内へ入る。
「黒田様はおりませぬ」
景継は答えなかった。
床を見る。
人がいた形跡はある。
だが、それが官兵衛なのかは分からない。
「移されたのでしょうか」
「分かりません」
景継は即答した。
時間がない。
ここで探し回れば見つかる可能性はある。
同時に、自分たちが見つかる可能性も急激に高くなる。
最初に決めた。
一度探して見つからなければ退く。
ならば退くべきだった。
景継は目を閉じた。
ほんの一瞬だけ。
その時だった。
外から声が聞こえた。
「西へ回せ! まだ兵が足りぬ!」
続いて、複数の足音が遠ざかっていく。
景継は目を開いた。
「弥兵衛」
「はい」
「ここへ来る途中、妙な場所はありませんでしたか?」
「妙な場所?」
「城中がこれだけ騒がしいのに、静かだった場所です」
弥兵衛が考える。
景継も来た道を思い返した。
皆が西を見ていた。
兵も伝令も、毛利との合流のことで頭がいっぱいだった。
だが、一か所だけ。
兵が西を気にしていなかった場所がある。
景継が振り返った。
「ありました」
「どこです?」
「ここへ来る少し前です。小さな蔵のような建物があったでしょう」
弥兵衛の表情が変わる。
「あそこにも二人ほど兵がおりましたな」
「ええ」
たった二人。
だから気に留めなかった。
だが今考えれば不自然だった。
城内から少しでも多く兵を集めている状況で、なぜ二人だけ残す必要がある。
重要な物があるのか。
あるいは。
重要な人間がいるのか。
「行きます」
景継は建物を出た。
予定とは違う。
確証もない。
それでも、今ある情報の中では最も可能性が高かった。
◇◇◇
毛利方の兵が前進する。
銃声が響く。
先頭の兵が止まる。
「撃て!」
秀吉の命令で二度目の銃声が響いた。
毛利方が再び下がった。
「追うな!」
前へ出ようとした兵を秀吉が止める。
敵を倒す必要はない。
時間だけ稼ぐ。
だが、後ろからも声が聞こえ始めていた。
荒木方だ。
「殿!」
「分かっておる!」
秀吉は振り返った。
このままでは本当に挟まれる。
「景継め……まだか」
秀吉が歯を食いしばる。
その時、毛利方の動きが変わった。
先ほどまで慎重だった兵が、明らかに強く押し始めた。
こちらの目的に気づいたのかもしれない。
織田軍が勝とうとしていない。
ただ道を塞いでいる。
ならば何か別の目的がある。
そう判断されてもおかしくない。
「もう一度撃て!」
銃声。
しかし今度は毛利方が止まらない。
秀吉の顔から余裕が消えた。
「槍隊、前へ!」
ここからは、本当に戦わなければ止められない。
景継が決めた時間は。
確実に短くなっていた。
◇◇◇
小さな蔵の前には、確かに二人の兵が残っていた。
先ほどとは違い、騙して近づく時間はない。
景継が合図する。
弥兵衛たちが一気に飛び出した。
「何者だ!」
一人が叫んだ。
今度は止められなかった。
「敵だ!」
声が響く。
弥兵衛が一人を倒し、もう一人も景継の兵が押さえる。
だが、もう遅い。
遠くから、
「どうした!」
という声が返ってきた。
景継は扉へ向かった。
「開けてください!」
錠が壊される。
扉を開ける。
暗い。
景継が中へ入る。
最初は何も見えなかった。
目が暗さに慣れてくる。
壁際。
一人の男が立っていた。
痩せている。
髪も乱れている。
以前とは明らかに姿が違う。
それでも。
見間違えるはずがなかった。
「黒田殿」
男が景継を見る。
しばらく何も言わなかった。
そして、小さく笑った。
「本当に来られましたか」
黒田官兵衛だった。
景継は息を吐いた。
その瞬間だけ。
肩から何かが落ちた気がした。
「迎えに来ました」
「林道殿自ら?」
「色々ありまして」
官兵衛は笑おうとしたが、すぐに顔をしかめた。
足を痛めている。
景継はそれを見て表情を変えた。
「歩けますか?」
「歩けると言いたいところですが、少々厳しいですな」
景継はすぐに弥兵衛を見る。
「肩を貸してください」
「はっ」
外から声が近づいてくる。
「こちらだ!」
「敵が入り込んでいるぞ!」
見つかった。
景継は刀を抜いた。
「話は後です。帰ります」
官兵衛が景継を見る。
「帰れるのですか?」
景継は少し笑った。
「そのために来たんです」
◇◇◇
城内に鐘の音が響いた。
侵入者。
その知らせが一気に広がっていく。
景継たちは官兵衛を支えながら走った。
来た時と同じように人へ紛れることは、もうできない。
前方から三人の兵が現れる。
「いたぞ!」
景継が刀を構えた。
弥兵衛たちが前へ出る。
激しい斬り合いになった。
時間をかけるわけにはいかない。
一人を押し退け、道を開く。
「進んでください!」
景継は官兵衛の隣へ戻る。
官兵衛は足を引きずっていた。
速くは進めない。
後ろからも兵が迫ってくる。
「林道殿」
官兵衛が息を切らしながら言った。
「私を置いていった方が早いですぞ」
「それでは何のために来たのか分かりません」
「しかし――」
「黒田殿」
景継は前を向いたまま言った。
「今は黙って助けられてください」
官兵衛が一瞬黙る。
やがて苦笑した。
「随分と言うようになられましたな」
「黒田殿と付き合っているせいです」
「それは心外ですな」
こんな状況でも官兵衛は笑った。
その直後。
前方から大きな音が聞こえた。
門だ。
城門を閉じようとしている。
「急げ!」
弥兵衛が叫ぶ。
景継たちが走る。
官兵衛の足では間に合わない。
景継は一瞬だけ門との距離を測った。
「黒田殿、失礼します」
「何を――」
景継は官兵衛の片腕を自分の肩へ回した。
弥兵衛も反対側を支える。
ほとんど官兵衛を持ち上げるようにして走った。
門が少しずつ閉まっていく。
その向こうには城外が見える。
あと少し。
だが門の横から荒木方の兵が現れた。
五人。
さらに後ろからも来る。
景継は官兵衛を弥兵衛へ預けた。
「先に!」
「若様!」
「行ってください!」
景継が振り返る。
刀を構えた。
荒木方の一人が斬りかかる。
景継は受け流し、そのまま体当たりするように押し退けた。
二人目。
刀が肩をかすめる。
痛みが走った。
それでも止まらない。
ここで勝つ必要はない。
一歩だけ。
あと一歩だけ、前へ出させなければいい。
「景継!」
官兵衛の声が聞こえた。
初めて。
敬称のない呼び方だった。
景継は振り返る。
弥兵衛と官兵衛が門を抜けている。
「若様!」
景継も走った。
門がさらに閉まる。
身体を横にする。
その隙間へ飛び込んだ。
直後。
背後で大きな音が響いた。
門が閉じる。
景継は地面へ転がった。
しばらく息ができなかった。
それでも顔を上げる。
弥兵衛がいる。
他の兵たちもいる。
全員ではない。
何人かが傷を負っている。
だが。
官兵衛もいた。
城の外に。
「……帰れましたね」
景継が言った。
官兵衛は地面に座ったまま、景継を見ていた。
「無茶をされますな」
「黒田殿にだけは言われたくありません」
官兵衛が笑った。
「確かに」
遠くから銃声が聞こえる。
秀吉がまだ戦っている。
景継は立ち上がった。
「まだ終わっていません」
弥兵衛が驚く。
「戻られるので?」
「秀吉殿を回収します」
官兵衛が景継を見る。
「回収とは、随分な言い方ですな」
「黒田殿も回収したところです」
「私は荷物ですか」
「今は似たようなものです」
官兵衛が呆れたように笑った。
景継は近くの兵へ命じる。
「合図を送ってください」
「はっ!」
狼煙が上がる。
それは秀吉へ伝えるため、事前に決めていた合図だった。
黒田官兵衛を確保した。
もう時間を稼ぐ必要はない。
◇◇◇
「殿!」
秀吉が振り返った。
「狼煙です!」
秀吉の目が遠くへ向く。
一筋の煙が上がっている。
その意味を理解するまで、一瞬も必要なかった。
「やりおったか!」
秀吉が笑った。
「全軍、退け!」
周囲の家臣が驚く。
「今ですか!?」
「今だからだ! 官兵衛は戻った!」
織田軍が少しずつ後退を始める。
毛利方は追おうとした。
だが秀吉は鉄砲隊を最後まで残し、一定の距離を保ちながら退いた。
村重軍との合流を完全に防ぐ必要も、もうない。
目的は達した。
毛利を倒すための戦ではなかった。
有岡城を落とすための戦でもなかった。
一人の男を取り戻すために。
毛利も。
村重も。
そして有岡城そのものさえ利用した。
◇◇◇
夕刻。
景継と秀吉は再び顔を合わせた。
その少し離れた場所には、横になった官兵衛がいる。
手当てを受け、ようやく落ち着いたところだった。
秀吉は官兵衛を見るなり、その前へ座り込んだ。
「馬鹿者」
最初に出た言葉は、それだった。
官兵衛が少し笑う。
「随分な出迎えですな」
「誰が敵の城へ一人で入れと言った!」
「止められましたが」
「ならば止まれ!」
「それでは荒木殿を説得できませぬ」
「説得できなかったではないか!」
官兵衛は返す言葉がなかった。
秀吉はしばらく官兵衛を睨んでいた。
やがて大きく息を吐く。
「……生きておればよい」
その声だけは小さかった。
官兵衛の表情から笑みが消える。
「ご心配をおかけしました」
景継は少し離れたところから二人を見ていた。
自分が入る必要はない。
そう思って立ち去ろうとした。
「林道殿」
官兵衛に呼び止められた。
景継が振り返る。
「何でしょう?」
「まだ礼を申し上げておりません」
「必要ありませんよ」
「必要です」
官兵衛は身体を起こそうとした。
景継が止める。
「そのままで」
官兵衛は景継を見た。
「ありがとうございました」
景継は少し困ったように笑った。
「黒田殿を有岡城へ行かせることを認めたのは私です。戻ってきてもらわないと困ります」
「それでもです」
官兵衛はしばらく景継を見ていた。
「しかし、一つだけ分からないことがあります」
「何です?」
「毛利が本当に来ることを、最初から読んでおられたのですか?」
景継は首を横に振った。
「いいえ」
官兵衛の目が少し細くなる。
「では、毛利が来なければ?」
「別の方法を考えていました」
「今回の策は最初から決まっていたわけではない?」
「途中で変えました」
景継は地図へ目を向けた。
「私は『毛利は来ない』という噂を流しました。本当に来ない可能性もあると思っていましたよ」
「しかし、来た」
「ええ」
「だから利用した」
「そういうことです」
官兵衛は黙った。
景継は未来を知っていたわけではない。
毛利の動きを完全に読んでいたわけでもない。
最初に立てた策は、途中で前提そのものが変わった。
それでも景継は止まらなかった。
変わった状況を見て。
次の手を選んだ。
官兵衛は小さく笑った。
「なるほど」
「何か?」
「林道殿を少し誤解しておりました」
景継が眉を上げる。
「どんなふうに?」
「何もかも先に読んで動く方なのだと思っていた」
「そんなことができれば苦労しません」
「今日、分かりました」
官兵衛は景継を見る。
「あなたの恐ろしいところは、読むことではない」
景継は黙って続きを待った。
「読み違えた後でも、次の手を出せることです」
その言葉に。
景継は少しだけ目を細めた。
かつて。
別の時代でも。
何度もそうしてきた。
敵が思いどおりに動かなければ。
待った。
状況が変われば。
策も変えた。
勝てないなら退いた。
勝てる時が来れば動いた。
それだけだった。
「褒め言葉として受け取っておきます」
景継が答える。
官兵衛は笑った。
「もちろんです」
その夜。
黒田官兵衛が生きて戻ったという報せが、織田方へ伝えられた。
だが。
有岡城はまだ落ちていない。
荒木村重も健在だった。
毛利との戦いも終わってはいない。
一つの戦が終わったわけではない。
ただ。
景継は一人の男を取り戻した。
それだけだった。
そして数日後。
その報せを聞いた織田信長から。
景継と秀吉のもとへ、新たな命令が届くことになる。
今度の相手は。
城に籠もる荒木村重ではない。
播磨。
別所長治。
そして。
三木城。
有岡城で敵を動かして勝った景継は。
次の戦では。
自分から動かないことを選ぶことになる。




