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『乱世にて、我は待つ』~知略を秘めた軍師は、やがて天下を動かす~  作者: ダイヤマ
第一章 失われた名

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第三十七話 忘れていた戦場



夜明け前、景継は目を覚ました。


しばらく天井を見つめたまま、身体を起こすことができなかった。


夢を見ていた。


そう呼ぶしかないのだが、もう普通の夢だとは思えない。


乾いた風が吹く平原。


尾張では見たこともない鎧をまとった兵たち。


風にはためく、読めないはずなのに意味だけは分かる旗。


そして、そのすべてを高い場所から見下ろしていた、自分ではない誰か。


景継はゆっくり身体を起こした。


以前なら、目覚めれば夢の景色は少しずつ薄れていった。


だが今朝は違う。


目を閉じれば、まだ見える。


川がある。


その向こうに低い山があり、山裾から平地へ向かって敵兵が並んでいる。


自分の軍勢は川を背にしているのではない。


少し離れて陣を敷いていた。


景継は机へ向かい、紙を広げた。


筆を取る。


川。


山。


平地。


軍勢。


考えるより先に手が動いた。


夢の中で見た配置を、一つずつ紙へ落としていく。


敵が山を下りてくる。


こちらは動かない。


まだ。


もう少し。


敵が平地へ出る。


それでも動かない。


相手がこちらを臆したと思い、さらに前へ出てくる。


そこで初めて――。


景継の筆が止まった。


「……何をしているんだ」


紙の上には、見知らぬ戦場が出来上がっていた。


それだけではない。


この後、どう戦えばいいのかまで分かる。


敵を完全に囲んではいけない。


退路を一つだけ残す。


逃げ道があると思えば、兵は戦うより逃げることを考える。


追い詰めれば死兵になる。


逃げられると思わせれば、軍は自ら崩れる。


誰かに教わった覚えはない。


少なくとも、林道景継としては。


「若様?」


戸の向こうから弥兵衛の声がした。


「起きています」


戸が開き、弥兵衛が入ってくる。


景継の顔を見た後、その視線が机の上の紙へ移った。


「……これは?」


「夢で見た場所です」


弥兵衛の眉が寄る。


「また、でございますか」


景継は小さく頷いた。


三十六話の頃から、弥兵衛には少しずつ話している。


知らない戦場を見ること。


自分ではない誰かの目を通しているように感じること。


そして、その人物が考えていることまで、自分の考えのように分かること。


弥兵衛は紙を手に取った。


「どこの土地なのでございます?」


「分かりません」


「尾張では?」


「ありません」


「美濃や三河は」


「違うと思います」


弥兵衛は紙を見つめた。


「では、なぜこのように詳しく描けるので?」


「それが分かれば困っていません」


景継は自分の描いた布陣へ目を落とす。


「ただ……」


「ただ?」


「この場所で戦ったことがあるような気がするんです」


弥兵衛の顔から、わずかに表情が消えた。


景継自身、口にしてから妙なことを言ったと思った。


十三年間。


自分は尾張で生きてきた。


これほど大きな戦場へ出たことなど一度もない。


なのに。


知っている。


そうとしか思えなかった。


弥兵衛はしばらく黙った後、紙を机へ戻した。


「若様」


「はい」


「一つだけ、よろしいですか」


「何でしょう」


「今見えているものが何であろうと、あまり一人で抱え込まないでくださいませ」


景継は弥兵衛を見る。


「私では役に立たぬこともございましょう。ですが、黙って見ているくらいはできます」


景継は少しだけ笑った。


「それは役に立っているんですか?」


「少なくとも、若様が一人で悩むよりはましかと」


「そうかもしれませんね」


景継はもう一度、紙を見る。


知らない戦場。


知らない軍勢。


知らない自分。


それなのに、懐かしい。


その感覚だけが、どうしても消えなかった。


昼前。


景継が清洲へ入ると、すぐに信長のもとへ呼ばれた。


部屋には柴田勝家と佐久間信盛もいる。


広げられた地図には、岩倉周辺のいくつかの場所に新しい印がつけられていた。


信長は景継が座るのを待たずに言った。


「岩倉がやり返してきたぞ」


景継は地図へ目を落とした。


「何をしました?」


「お前が声をかけた連中に、信賢が条件を出し始めた」


勝家が続ける。


「兵を出せば所領を安堵する。早く動いた者には加増も考えるとな」


景継は少し考えた。


当然と言えば当然だった。


こちらが岩倉の味方を減らそうとしていることに、向こうも気づいたのだ。


さらに信盛が別の場所を指した。


「それだけではない。こちらと密かに話をしていた者の一人が、急に返事を寄越さなくなった」


「岩倉に知られましたか」


「おそらくな」


信長が景継を見る。


「どうする」


景継は答えず、しばらく地図を眺めた。


岩倉はこちらが国人や土豪を切り崩していると知った。


ならば、こちらと接触した者を一人ずつ問い詰めるだろうか。


違う。


それではかえって不満を増やす。


信賢もそこまで愚かではない。


実際、出してきたのは処罰ではなく恩賞だった。


こちらへ傾きかけた者を、もう一度利益で引き戻そうとしている。


「景継?」


信長に呼ばれ、景継は顔を上げた。


「放っておきましょう」


勝家が眉を寄せる。


「何?」


「今、岩倉へ戻る者は戻らせます」


信長の目が細くなった。


「せっかく切り崩したのにか」


「はい」


「理由は?」


「今ここで条件を上げれば、次も同じことをされます」


景継は地図上の一つの名を指した。


「こちらが百を出す。岩倉が百二十を出す。ならこちらは百五十を出す。そんなことを続ければ、最後に得をするのは条件を吊り上げた者だけです」


信盛が頷く。


「確かにな」


「それより、見たいんです」


「何をだ」


信長が尋ねる。


「岩倉が、誰を本気で引き止めるのかを」


部屋が静かになった。


景継は地図を指でなぞった。


「全員へ同じ条件は出せません。兵が多い者。道を押さえている者。信賢様が失いたくない者には、より良い条件を出すはずです」


勝家が景継を見る。


「信賢に、こちらが狙うべき相手を教えさせるのか」


「はい」


信長の口元が上がった。


「なるほど」


景継はさらに続ける。


「それに、条件で戻った者は忠義で戻ったわけではありません」


金。


領地。


立場。


それで動いたのなら、さらに状況が変わればまた迷う。


「今は岩倉へ戻らせて構いません。誰が何を与えられたのかだけ調べてください」


「その後は?」


「待ちます」


口にした瞬間だった。


景継の耳から、部屋の音が遠のいた。


――待て。


低い声がした。


景継は息を止める。


一瞬だけ。


目の前の地図が消えた。


代わりに見えたのは、果ての見えない軍勢。


馬上の将たち。


誰かが声を荒らげている。


今攻めるべきだ。


敵が乱れている。


好機を逃す。


それでも、あの声は動かない。


――まだだ。


――向こうが動いているのなら、こちらまで慌てる必要はない。


――動いた者は、必ず何かを見せる。


景継は瞬きをした。


清洲の部屋へ戻る。


「……景継?」


信長がこちらを見ていた。


勝家と信盛も同じだった。


「すみません」


「またか」


景継は少し驚いた。


「分かりました?」


「最近のお前は、時々どこかへ行く」


信長は自分の頭を指で叩いた。


「ここだけな」


景継は否定できなかった。


「大丈夫です」


「それも最近よく聞く」


「弥兵衛にも言われました」


「なら直せ」


信長はそれ以上追及しなかった。


代わりに地図へ目を戻す。


「待つのだな」


「はい」


「どれほど」


「岩倉が次に動くまでです」


「長かったら?」


「待ちます」


信長が鼻で笑った。


「お前は本当に待つのが好きだな」


景継は答えなかった。


なぜか。


その言葉が妙に胸に残った。


岩倉が次に動いたのは、それから四日後だった。


信賢は、清洲へ傾きかけた者たちへ条件を出す一方で、一つの家だけには使者を二度送っていた。


丹羽郡の土豪。


兵は多くない。


だが、その領地は岩倉へ米を運び込む道に近かった。


報告を聞いた景継は、地図を見ながら小さく息を吐いた。


「ここですか」


弥兵衛が横から覗く。


「岩倉が最も手放したくない場所、ということでございますか」


「少なくとも、その一つでしょう」


「では、こちらも使者を?」


「送りません」


弥兵衛が景継を見る。


「また待つので?」


「いいえ」


景継は別の場所を指した。


その土豪の領地を通らず、岩倉へ物を運ぶことのできる脇道。


「こちらを押さえます」


「道を?」


「商人をです」


岩倉がその土豪を必要とする理由は、兵ではない。


道だった。


ならば、その道の価値そのものを変えればいい。


清洲方の商人には別の街道を使わせる。


岩倉へ向かう商人にも、そちらを使った方が安全で得になるよう条件を整える。


完全に止める必要はない。


流れを少し変えるだけでいい。


「相手を奪うのではなく」


弥兵衛が言う。


「相手が必要としているものを、必要ではなくする?」


景継は弥兵衛を見る。


「よく分かりましたね」


「長く若様のそばにおりますので」


少し誇らしげだった。


「ですが」


弥兵衛は続ける。


「随分と遠回りなことをされますな」


「直接奪えば、取り返しに来ますから」


「では、奪わずに価値をなくす」


「その方が争わずに済みます」


景継はそこまで言って、また妙な感覚を覚えた。


争わずに済む。


違う。


もっと正確には。


相手に、争う価値がないと思わせる。


その考え方を、自分は知っている。


いつから。


どこで。


答えは出なかった。


その夜。


景継は再び夢を見た。


今度は、これまでよりはるかに鮮明だった。


巨大な城壁が見える。


清洲とは比べものにならない。


城というより、街そのものを壁で囲っているようだった。


その前に、無数の兵がいる。


千や二千ではない。


どこまで見ても人がいる。


旗がある。


馬がいる。


土煙が上がっている。


景継は馬上からそれを見ていた。


自分の手が目に入る。


十三歳の手ではなかった。


節が太く、皺が刻まれている。


年老いた男の手。


その手が手綱を握っていた。


一人の将が馬を寄せてくる。


顔を見る。


知らない。


はずなのに。


景継の胸に、妙な親しさが生まれた。


この男を知っている。


短気で。


勇猛で。


命じれば迷わず動く。


だが、勢いに任せて前へ出すぎることがある。


そんなことまで分かる。


「敵が退いております」


将が言った。


言葉そのものは聞いたことがない響きだった。


なのに意味が分かる。


「追撃を」


自分の口が動いた。


「追うな」


「しかし」


「追うな」


声は低い。


年老いている。


それでも将はすぐに口を閉じた。


「退路を残せ」


自分が言う。


「逃げられると思う者は逃げる。逃げられぬと知った者は、死ぬために振り返る」


将が頭を下げた。


景継はその光景を見ながら、身体の奥が冷えていくのを感じた。


今朝。


自分が紙へ描いた戦場でも、同じことを考えていた。


追い詰めるな。


逃げ道を残せ。


あれは。


自分で思いついたことではなかったのか。


景色が変わる。


薄暗い部屋。


病床に一人の男がいる。


身体は痩せている。


だが目だけは鋭かった。


周囲には何人もの男が控えているのに、部屋を支配しているのは病床の男ただ一人だった。


自分は、その前で頭を下げている。


怖い。


景継はそう感じた。


同時に。


懐かしい。


尊敬している。


警戒している。


何度も試された。


何度も疑われた。


それでも。


この男の下で長い年月を過ごした。


病床の男がこちらを見る。


口元が、わずかに上がった。


何かを言う。


その瞬間。


景継の胸が強く鳴った。


知っている。


この人を。


名前も。


声も。


どのように笑うのかも。


どれほど恐ろしい人間なのかも。


全部。


知っている。


思い出せ。


景継は夢の中で必死に男の顔を見ようとした。


だが、霧がかかったように輪郭がぼやける。


名前だけが出てこない。


再び景色が変わった。


夜だった。


遠くに炎が見える。


向かい合う二つの軍勢。


そして、その向こうに一人の男がいた。


手に羽で作られた扇を持っている。


顔は見えない。


それなのに。


その姿を見ただけで、胸の奥にいくつもの感情が湧き上がった。


警戒。


苛立ち。


疲労。


そして。


認めたくないほどの敬意。


この男も知っている。


何度も戦った。


何度もこちらを動かそうとしてきた。


何度も策を仕掛けられた。


そのたびに。


自分は――。


待った。


羽扇の男が何かを仕掛けてくる。


兵たちがざわつく。


周囲の将が攻めるべきだと訴える。


それでも自分は動かない。


「待て」


また、その言葉。


「まだ動くな」


敵が挑発する。


それでも待つ。


相手が焦るまで。


相手の兵糧が減るまで。


相手が自ら退くまで。


ただ。


待つ。


景継は夢の中で震えた。


知っている。


この戦いを。


この相手を。


そして。


この自分を。


「誰なんです」


声が出た。


これまでとは違う。


ただ記憶を見ているのではない。


景継自身の声だった。


「あなたは、誰なんです」


答えはない。


羽扇の男の姿が遠ざかっていく。


「待ってください!」


景継は追おうとした。


その時。


背後から声がした。


誰かが自分を呼んでいる。


振り返る。


人影がある。


顔は見えない。


だが確かに、自分へ向けて呼びかけていた。


「都督!」


景継の身体が止まる。


都督。


知らない言葉。


いや。


違う。


知っている。


その呼び方をされたことがある。


何度も。


別の場所からも声がする。


「太傅!」


胸が締めつけられた。


これも知っている。


自分に向けられた言葉だ。


だが。


名前ではない。


もっと。


何か。


自分そのものを示す言葉がある。


「私は……」


景継は夢の中で、自分の胸へ手を当てた。


「誰なんだ」


遠くから。


また声がした。


今度こそ。


名前だった。


景継は耳を澄ませる。


最初の音が聞こえそうになる。


だが。


その瞬間、地面が揺れた。


軍勢。


城壁。


病床の男。


羽扇を持つ男。


すべてが崩れていく。


「待って!」


手を伸ばす。


届かない。


最後に見えたのは。


大きな旗だった。


そこに一文字だけが記されている。


今度は。


はっきり読めた。


『魏』


景継は目を覚ました。


身体を起こす。


全身に汗をかいていた。


息が荒い。


だが、恐怖より先に別の感情があった。


分かった。


一つだけ。


ようやく分かった。


「魏……」


声に出す。


知っている。


間違いなく。


自分は、この国を知っている。


景継はすぐに机へ向かった。


紙を広げる。


忘れる前に、覚えているものをすべて書いた。


『魏』


『都督』


『太傅』


『巨大な城』


『病床の男』


『羽扇を持つ男』


『待つ』


筆が止まる。


しばらく、その文字を見つめた。


これまでは、誰かの記憶を見ているのだと思っていた。


だが。


もう、そうは思えなかった。


知らない誰かの人生なら。


なぜ、その人物の部下を見ただけで性格まで分かる。


なぜ、病床の男を見て懐かしいと思う。


なぜ、羽扇を持つ男を見ただけで、これほど強い感情が湧く。


なぜ。


都督と呼ばれて。


太傅と呼ばれて。


それが自分のことだと分かる。


景継は自分の手を見る。


十三歳の手。


林道景政と志乃の子として生まれ。


兄の景久と育ち。


弥兵衛と過ごし。


信長と出会った。


それは間違いなく自分の人生だ。


なら。


夢の中の、あの年老いた男は何なのか。


景継は紙の端へ、ゆっくりと書いた。


『あれも、私なのか?』


書いた文字を見た瞬間。


怖くなった。


同時に。


知りたいと思った。


どちらの感情が強いのか、自分でも分からなかった。


翌朝。


景継は弥兵衛へ頼んだ。


「書物を集めてください」


「何の書物でございます?」


「大陸のものです」


弥兵衛の表情が変わった。


「昨夜、また?」


「はい」


景継は紙を見せた。


一番上。


『魏』


弥兵衛が読む。


「魏……」


「知っていますか」


「名くらいは。大陸にあった国でございましょう」


景継の胸がまた鳴った。


あった。


やはり実在する。


夢の中だけの国ではない。


「できるだけ古い戦について書かれたものを。人物の名が載っているものなら、なおいいです」


「承知しました」


弥兵衛は部屋を出かけて。


一度だけ振り返った。


「若様」


「はい」


「答えが見つかるとよろしいですな」


景継はすぐには答えられなかった。


答えが欲しい。


だが。


その答えを知った後。


自分が今までと同じ林道景継でいられるのか。


それだけは分からなかった。


「……そうですね」


景継は静かに答えた。


その日の午後。


集められるだけの漢籍が、景継の前へ積まれた。


決して多くはない。


それでも手掛かりにはなる。


景継は一冊ずつ開いた。


魏。


その文字を探す。


やがて、一冊の書の中に見つけた。


指が止まる。


そこには、魏という国について記されていた。


さらに頁をめくる。


人名が出てくる。


知らない名。


知らない名。


また知らない名。


だが。


時折。


名前を見るだけで胸の奥がざわつく。


理由は分からない。


そのうち、一つの名で手が止まった。


景継は文字を見つめる。


頭の奥に。


病床の男が浮かんだ。


「……この人」


なぜか分かる。


夢で見た。


あの男だ。


文字を指でなぞる。


声に出そうとした。


その瞬間。


頭の奥で声が響いた。


笑い声。


鋭い目。


自分を試すような言葉。


そして。


誰かがその男を呼ぶ声。


――孟徳。


景継の指が震えた。


「孟……徳……?」


聞いたことのないはずの名。


なのに。


知っている。


景継は急いで頁へ目を戻した。


魏。


孟徳。


病床の男。


羽扇を持つ男。


都督。


太傅。


ばらばらだったものが、少しずつ近づいている。


あと一つ。


あと一つあれば。


全部がつながる。


景継は頁をめくった。


一枚。


もう一枚。


魏に仕えた者たち。


将。


文官。


皇族。


いくつもの名前が並んでいる。


その中を、景継の目が追っていく。


そして。


ある場所で。


指が止まった。


そこに。


一人の男の名があった。


景継は息を止めた。


胸の奥で。


何かが音を立てた。


懐かしい。


そんな言葉では足りない。


その文字を見た瞬間。


十三年間、自分の中に閉じ込められていた何かが。


扉の向こうから。


一斉にこちらを向いたような気がした。


景継の唇が、わずかに動く。


だが。


声にはならなかった。


まだ。


読んではいけない。


そんな恐怖にも似た感覚が、身体を縛っていた。


景継はただ、その名を見つめ続ける。


知らないはずの名前。


初めて見るはずの名前。


それなのに。


自分よりも。


誰よりも。


知っている気がする名前。


そして景継は、まだ知らない。


次にその名を声に出した時。


巨大な城壁も。


病床の男も。


羽扇を持つ宿敵も。


待ち続けた数々の戦場も。


すべてが一つの人生として、自分の中へ戻ってくることを。

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曹操司馬懿ペアか。 強い。
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