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『乱世にて、我は待つ』~知略を秘めた軍師は、やがて天下を動かす~  作者: ダイヤマ
第七章 覇道布石編

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第百十七話 勝者のもとへ



 北ノ庄で羽柴秀吉が敗れた。


 その報せは、瞬く間に各地へ広がっていった。


 柴田勝家が生き残った。


 上杉が動いた。


 そして、その中心には林道景継がいた。


 どこまでが事実で、どこからが噂なのか。


 伝わるうちに話は少しずつ形を変えていったが、一つだけ、誰もが同じように受け取ったことがある。


 羽柴秀吉は負けた。


 そして林道景継は勝った。


 その事実だった。



 北ノ庄城。


 景継の前には、何通もの書状が置かれていた。


「またか」


 勝家が呆れたように言った。


「はい」


「今度は誰だ」


「近江の国人が二人。それから美濃から一人。こちらは若狭ですね」


「何と書いてある」


「だいたい同じです」


 景継は一通を開いた。


「北ノ庄での御勝利、まことに――」


「そこはどうでもよい」


「では、その後ですね」


 景継は読み進める。


「今後とも変わらぬ御厚誼を賜りたく――」


「それだ」


 勝家が鼻を鳴らした。


「昨日まで何も言ってこなかった連中だろう」


「そうですね」


「現金なものよ」


「普通だと思います」


 勝家が景継を見る。


「腹が立たんのか」


「なぜです?」


「勝った途端に擦り寄ってきたのだぞ」


「私が負けていたら、秀吉様に同じ書状を送っていたでしょうね」


「だから腹が立つと言っておる」


「でも、それが普通ではありませんか」


 景継は書状を置いた。


「自分の家と領地を守らなければならない人たちです。誰が強いのか分からないうちから、一方にすべてを賭ける必要はありません」


「お前はそういうところが妙に冷めておるな」


「勝家様が熱すぎるんです」


「何だと?」


「何でもありません」


「聞こえておるわ!」


 少し離れたところで、一益が笑った。


「ははは! 相変わらずだな、お前たちは」


「一益、お前も笑っておらずにこいつに言ってやれ!」


「何をだ」


「勝った時くらい堂々としろとな!」


 一益は景継を見る。


「まあ、それはわしも思う」


「一益様まで」


「北ノ庄で秀吉を破ったのだぞ。もう少し嬉しそうな顔をしてもよかろう」


「嬉しいですよ」


「見えん」


「顔に出にくいので」


「昔からだな」


 景継は苦笑した。


 そこへ長秀が入ってきた。


「景継」


「どうしました?」


「また客だ」


「今日は多いですね」


「これで六組目だ」


 勝家が露骨に嫌そうな顔をした。


「誰だ」


「越前の国人だ。景継に挨拶したいそうだ」


「わしの城なのだが」


 長秀が少し笑う。


「そのようだな」


「そのようだな、ではない!」


 勝家が景継を睨む。


「お前、わしの城を乗っ取る気か」


「そんなつもりはありません」


「なら、なぜわしよりお前に客が来る!」


「私に聞かれても困ります」


「追い返せ!」


「駄目です」


 景継は即答した。


「なぜだ」


「せっかく来てくれたのですから、会います」


「昨日まで様子を見ていた連中だぞ」


「だからこそです」


 勝家が眉を寄せる。


「どういう意味だ」


「今まで様子を見ていた人たちが、こちらへ来ようとしている」


 景継は机の上の書状へ視線を落とした。


「それは、今の状況が変わったと思っているからです」


「そんなことは分かっておる」


「なら、その変化をこちらから潰す必要はありません」


「全員味方にするつもりか」


「できるなら」


「信用できるのか」


「できません」


「なら駄目ではないか!」


「信用できないことと、使えないことは別です」


 勝家が黙った。


 景継は続ける。


「今来ている人たちは、私が勝ったから来ています。なら、私が負ければ離れるかもしれない」


「分かっておるではないか」


「はい」


「それでも受け入れるのか」


「離れるかもしれない人だと分かった上で付き合えばいいんです」


 長秀が景継を見た。


「最初から忠義を求めぬのか」


「求めても仕方ありません」


 景継は答えた。


「私だって、まだ何も渡していないのですから」


「何?」


「領地も与えていない。家を守ってもいない。長い間一緒に戦ったわけでもない。それなのに、命を懸けて忠義を尽くせと言う方がおかしいでしょう」


 長秀の目がわずかに細くなった。


 景継は何でもないことのように続ける。


「まずはこちらが、この人についていけば大丈夫だと思ってもらわなければなりません」


「それから忠義か」


「その後も忠義を持ってくれるかは、その人次第です」


 一益が笑った。


「随分と気の長い話だな」


「急いで裏切られるよりはいいでしょう」


「違いない」


 勝家だけが不満そうだった。


「わしには合わん」


「知っています」


「即答するな!」



 同じ頃。


 岐阜。


 織田信孝のもとにも、北ノ庄の報せは届いていた。


「秀吉が……負けた?」


 信孝は何度目か分からない言葉を口にした。


「間違いないのか」


「はい」


 家臣が頭を下げる。


「賤ヶ岳では羽柴方が優勢となり、柴田様は北ノ庄まで退かれました。しかし、その後――」


「上杉が出た」


「はい」


「そして景継も」


「はい」


 信孝は黙った。


 清須会議の後。


 織田家は、かつての形を失った。


 父、信長はいない。


 兄、信忠もいない。


 残された者たちは、それぞれの思惑を抱えて動き始めた。


 秀吉。


 勝家。


 そして自分たち織田家の者。


 その中で、景継だけは少し違う場所にいるように見えていた。


 信長の家臣。


 有力な武将。


 知恵の回る男。


 それ以上ではない。


 少なくとも、信孝はそう思っていた。


「……景継は、どれほどの兵を持っている」


「林道様の直属の兵であれば、北ノ庄の戦以前と大きくは変わっていないかと」


「五千ほどか」


「おおよそは」


 信孝の眉が寄った。


「それで、なぜ勝てる」


 家臣は答えられない。


「勝家を動かした。上杉まで動かした。今度は長秀と一益が景継のところにいるという」


「そのようです」


「五千ではないではないか」


 信孝は吐き捨てるように言った。


 兵の数だけを見れば、大大名とは呼べない。


 だが。


 景継が声をかけた時、誰が動くのか。


 そう考えれば、話はまるで違ってくる。


「殿」


「何だ」


「我らも、林道様へ使者を送るべきでは」


 信孝はすぐには答えなかった。


「わしが景継に頭を下げろと言うのか」


「そうは申しておりません。ただ、今後のことを話す必要はあるかと」


「……」


「羽柴様がこのまま引き下がるとも思えませぬ」


 それは信孝にも分かっていた。


 秀吉は一度の敗北で終わる男ではない。


 ならば次に何をする。


 そして景継は。


「使者は送らん」


「殿」


「わしが行く」


 家臣が顔を上げた。


「自らでございますか」


「景継が何を考えているのか、自分で聞く」


 信孝は立ち上がった。


「父上の天下が壊れた後、あの男が何を作るつもりなのかをな」



 一方。


 織田信雄のもとにも、同じ報せは届いていた。


「兄上が動く?」


「はい。信孝様は北ノ庄へ向かわれるとのこと」


 信雄は露骨に顔をしかめた。


「何をしにだ」


「林道様と話をされるものと思われます」


「景継と……」


 信雄は考え込む。


 秀吉が負けた。


 勝家が生き残った。


 それだけなら、織田家の主導権争いが再び振り出しに戻ったとも言える。


 だが、実際には違う。


 勝家の後ろには上杉がいる。


 そして、その間をつないだのが景継。


 長秀と一益まで景継のもとへ行った。


「兄上は、景継につくつもりなのか」


「そこまでは」


「なら、何を話す」


 家臣は答えない。


 信雄は立ち上がり、部屋の中を歩いた。


 自分も行くべきか。


 だが、自分から景継のもとへ行けば、周囲からどう見られる。


 信雄が景継を頼った。


 そう受け取られるかもしれない。


「……」


 信雄は足を止めた。


「もう少し様子を見る」


 家臣がわずかに顔を上げた。


「よろしいので?」


「兄上が何を話すのか見てからでも遅くはない」


「承知しました」


 家臣は頭を下げた。


 だが。


 その判断が正しいのか。


 信雄自身にも、まだ分からなかった。



 北ノ庄。


 夕刻。


 ようやく客が途切れた頃。


 景継は城の一室で、一人地図を見ていた。


 そこへ長秀がやってくる。


「まだやっているのか」


「少しだけです」


「勝った直後くらい休め」


「休んでいますよ」


「どこがだ」


 長秀が向かいに座る。


「景継」


「はい」


「お前、これからどうする」


 景継の手が止まった。


「どうする、とは?」


「とぼけるな」


 長秀は景継を見る。


「秀吉殿には勝った」


「一度だけです」


「それでも勝った。勝家殿は生き残った。上杉との道もできた。わしと一益もここにいる」


「はい」


「お前が天下を目指すという話も、もう冗談では済まなくなってきたぞ」


 景継は黙った。


「ここからだ」


 長秀は言った。


「勝つより難しいぞ」


「何がです?」


「勝った後だ」


 景継が長秀を見る。


「戦に勝てば人は寄ってくる。今日だけで、お前も十分分かっただろう」


「はい」


「だが、寄ってきた人間をどう扱う」


 長秀は机の上に置かれた書状を見る。


「勝家殿もいる。一益もいる。上杉は味方ではあるが、お前の家臣ではない。わしもお前の下で働くとは言ったが、わしの家臣や領地まで一夜で林道家のものになったわけではない」


「分かっています」


「これから信孝様も信雄様も動くだろう。三法師様をどうするかという問題も残っている」


 景継は地図を見る。


 織田家。


 信長が作り上げた巨大な勢力。


 その中心だけが、突然なくなった。


 だから今、残された者たちはそれぞれ別の方向へ動こうとしている。


「全員を私の下に置くつもりはありません」


 長秀が眉を動かした。


「何?」


「少なくとも、今すぐは」


「では、どうする」


「一緒にいられる理由を作ります」


「理由?」


「はい」


 景継は顔を上げる。


「勝家様には勝家様の考えがあります。一益様にも。長秀様にも。上杉様にもあります」


「当然だ」


「それを全部捨てて、今日から私だけを見てくださいと言っても無理でしょう」


「だから求めない?」


「はい」


「甘くないか」


「そうかもしれません」


 景継は否定しなかった。


「でも、無理に一つにまとめれば、私が少し弱っただけで崩れます」


 長秀が黙る。


「なら、私と一緒にいる方が得だと思ってもらえばいい」


「得、か」


「それでも十分です」


「忠義ではなく?」


「忠義だけで国は動かないでしょう」


 景継は少し笑った。


「人には、それぞれ守りたいものがありますから」


 長秀は景継を見つめた。


「それで天下を取れると思っているのか」


「分かりません」


「お前はすぐそれを言うな」


「分からないものは分かりません」


「だが、目指す」


「はい」


 迷いのない返事だった。


 長秀は小さく息を吐く。


「やはり変な男だ」


「長秀様まで言うんですか」


「勝家殿の気持ちが少し分かってきた」


「それは困りますね」


 その時だった。


 廊下の向こうから足音が近づいてきた。


「林道様」


「どうしました」


 家臣が部屋へ入る。


「織田信孝様がお見えになりました」


 長秀が景継を見る。


「ほら来たぞ」


「早かったですね」


「どうする」


「会います」


 景継は立ち上がった。



 しばらくして。


 信孝が部屋へ入ってきた。


「景継」


「信孝様」


 景継は頭を下げる。


 信孝はその姿を見ていた。


 以前と何も変わらない。


 少なくとも、見た目は。


 勝者らしくふんぞり返っているわけでもない。


 勝家の城を我が物顔で歩いているわけでもない。


「久しぶりだな」


「はい」


「北ノ庄のことは聞いた」


「ありがとうございます」


「礼を言われるようなことはしておらん」


「では、何と答えればいいでしょう」


「知らん」


 信孝は少し苛立ったように言った。


 そして、すぐに本題へ入る。


「景継」


「はい」


「お前は、何をするつもりだ」


 景継が信孝を見る。


「天下を取るつもりか」


 長秀が黙る。


 部屋の空気が変わった。


 景継は誤魔化さなかった。


「はい」


 信孝の目が鋭くなる。


「織田家を奪うつもりか」


「いいえ」


「同じではないか」


「違います」


 景継は静かに答えた。


「私は、織田家を奪って天下を取るつもりはありません」


「ではどうする」


「自分で取ります」


 信孝が黙った。


「父上の家臣だったお前がか」


「はい」


「父上が作ったものを使わずに?」


 景継は少し考えた。


「使えるものは使います」


「……何?」


「長秀様も、一益様も、勝家様も、私は上様のもとで知り合いました。今の私があるのも上様のおかげです。それを使っていないと言うつもりはありません」


 信孝の表情が険しくなる。


「なら、やはり父上のものを――」


「ですが」


 景継は言葉を重ねた。


「上様が亡くなったからといって、その下にいた人たちまで誰かの持ち物になるわけではありません」


「……」


「長秀様が誰についていくのか。一益様が誰と戦うのか。勝家様が何を守るのか。それを決めるのは本人です」


 信孝は何も言わない。


「信孝様も同じです」


「わしも?」


「はい」


 景継は信孝を見た。


「上様の息子だからという理由だけで、私が信孝様に従うことはありません」


 信孝の顔が変わる。


 長秀が景継を見る。


 それでも景継は続けた。


「ですが、上様の息子だからという理由だけで、信孝様を敵にするつもりもありません」


「……何が言いたい」


「選んでください」


「何を」


「これから、どうしたいのかを」


 信孝の眉が寄る。


「織田家を守りたいのか。天下を取りたいのか。秀吉様を倒したいのか。三法師様を支えたいのか」


 景継は一つずつ口にする。


「それとも、自分が生き残りたいのか」


「貴様……」


「どれでも構いません」


 信孝が景継を睨んだ。


「ただ、上様の息子だから何かをしなければならない、という答えだけはやめた方がいいと思います」


「なぜだ」


「上様は、もういませんから」


 静かな言葉だった。


 信孝の拳がわずかに握られる。


 父はもういない。


 誰よりも分かっているはずなのに。


 その事実だけが、いつまでも信孝たちを縛っている。


「景継」


「はい」


「お前は、父上がいなくなって何とも思わないのか」


 景継はすぐには答えなかった。


「思います」


「なら――」


「だからこそです」


 景継は信孝を見る。


「いつまでも上様がいた時と同じようにはできません」


 信孝が黙る。


「上様がいなくなった後を生きるのは、私たちです」


 景継の声は変わらなかった。


「だから、自分で選ばなければならない」


 長い沈黙が落ちた。


 やがて信孝が口を開く。


「……すぐには答えられん」


「それでいいと思います」


「待つのか」


「はい」


 景継は少し笑った。


「待つのは得意ですから」


 信孝は景継を見た。


 その言葉に何かを感じたのか。


 だが、それ以上は何も言わなかった。



 その夜。


 信孝が用意された部屋へ下がった後。


 長秀が景継に言った。


「臣下になれと言わなかったな」


「はい」


「味方になれとも」


「言っていません」


「なぜだ」


「今言っても、信孝様自身が決めたことにはならないからです」


「それほど大事か?」


「大事だと思います」


 景継は窓の外を見る。


「自分で選んだ人間の方が、簡単には動かないでしょう」


「逆に、お前を選ばないかもしれんぞ」


「その時は仕方ありません」


「敵になるかもしれない」


「それも仕方ありません」


 長秀は呆れたように息を吐いた。


「天下を取ろうという男が、随分と悠長だ」


「無理に味方にして、肝心な時に裏切られるよりはいいですよ」


「またそれか」


「大事なので」


 長秀は苦笑した。



 同じ頃。


 秀吉もまた、次の一手を考えていた。


 敗れた兵をまとめ直しながら、地図を前に官兵衛と向き合っている。


「官兵衛」


「はい」


「景継のところへ、どれほど集まった」


「まだ正確には分かりませぬ」


「分かる範囲でよい」


「丹羽長秀殿。滝川一益殿。柴田勝家殿は当然として、北陸の国人たちからも接触が増えております」


「池田は」


「恒興殿ですか」


「そうじゃ」


 官兵衛は少し考えた。


「まだ明確には動いておりませぬ」


「ならば先に取る」


 官兵衛が秀吉を見る。


「恒興殿を?」


「景継が人を集めるなら、こちらも集める」


 秀吉の目から、敗北の色は消え始めていた。


「わしはまだ終わっておらん」


「承知しております」


「勝家も、長秀も、一益も、景継も」


 秀吉は地図へ手を置く。


「全部まとめて敵になったというなら、それを崩せばよい」


 官兵衛は黙って聞く。


「景継が作ったものは、強いのか」


 秀吉の問いに、官兵衛はしばらく考えた。


「強いでしょう」


「なら、壊せぬか」


「いいえ」


 官兵衛は首を振った。


「むしろ、今ならまだ」


「今なら?」


「林道様のもとへ集まった者たちは、同じ理由で集まっているわけではありません」


 勝家には勝家の事情がある。


 長秀にも。


 一益にも。


 上杉にも。


 北陸の国人たちにも。


 景継への忠義だけで結ばれた集団ではない。


「一つに見えて、一つではない」


 官兵衛は静かに言った。


「そこが、あの方の強さです」


 秀吉が眉を寄せる。


「強さなのか」


「はい」


「ならば弱さでもあるな」


 官兵衛の口元に、わずかな笑みが浮かんだ。


「その通りでございます」


 景継は、一つの巨大な軍を作ったわけではない。


 それぞれ違う目的を持つ者たちを、同じ方向へ向かせた。


 だからこそ、短期間で大きな力を動かすことができた。


 だが。


 向いている方向が変われば。


 利が変われば。


 目的が食い違えば。


「崩せるか」


 秀吉が尋ねる。


「分かりませぬ」


 官兵衛は答えた。


「ですが」


 地図の上。


 景継の周囲にいる者たちを、一人ずつ思い浮かべる。


「五千の兵を倒すよりは、人の心を離す方が早いかもしれません」


 秀吉が笑った。


「やはり、お前は怖い男じゃな」


「秀吉様ほどでは」


「言うようになったな」


 秀吉は立ち上がった。


 北ノ庄では負けた。


 だが。


 天下が決まったわけではない。


 景継のもとへ人が集まり始めたのなら。


 その人を、一人ずつ引き離せばいい。


「では、始めるか」


「はい」


 官兵衛も立ち上がった。



 北ノ庄での勝利によって、景継の周りには人が集まり始めた。


 だが、集まる者が増えるということは。


 守るべきものが増えるということでもある。


 そして同時に――


 敵から狙われる場所も増えるということだった。




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