第十一話 繋がる点
アランはもう一度パソコン画面の
処刑記録を見る。
レオネルが処刑された後も
何人もの楽師が処刑されている。
だが
ペェーリルの名前はない。
アランは
撮影した写真を次々と開いていく。
レオネル。
別の楽師。
また別の楽師。
処刑記録は続く。
だが。
ペェーリルの名前だけはない。
(ペェーリルは
生かされてたんじゃない)
(生かされ続けたんだ)
アランは
楽譜の方に目をやる。
(この楽譜に
いったい何が隠されている)
アランはスマホを取った。
そしてウィルに電話をする。
着信音が鳴る。
一回
二回
三回
ウィルが出る。
アラン
「ウィル
筆跡から年代順に並べられるか?」
数秒の沈黙。
ウィル
「…お前」
「無茶言ってる自覚あるか?」
アラン
「お前なら出来るだろ?」
ウィル
小さく息を吐く。
「出来なくはない。
だが時間かかるぞ」
アラン
「さすがだな」
ウィル
「褒めても早くはならん」
アラン
「分かったらメールで送ってくれ」
プツッ…
ウィル
「あっ!おい!」
スマホを見る。
「切りやがった」
アランはスマホを置くと、もう一度
最古の書き込みを見つめる。
(王の機嫌までは分かった)
(まだ文字がありそうだな)
———
しばらくして
ウィルからメールが届いた。
アランはメールを開く。
件名
『無茶振りの結果』
アラン
「早ぇーな」
スクロールする。
・筆跡は少なくとも十二人以上
・年代差あり
・最古と最新で数百年
アラン
(やっぱりか)
さらに下へ。
・最古の筆跡と
処刑記録の署名は高確率で一致
アラン
「レオネルか」
さらにスクロール。
・面白いものを見つけた
アランの指が止まる。
・書き込みの多くは
前の書き込みをなぞる傾向がある
アラン
「……?」
・だが
・最古の書き込みだけは違う
アラン
(違う?)
・最古の書き込みだけは
楽譜ではなく
誰かに向けて書かれている
アラン
「……」
(じゃあ他の書き込みは?)
(何か取っ掛かりになるものは)
(ん?)
アランの指が、ある年代で止まる。
“昨日は人前で弾いてしまった”
楽譜と照らし合わせる。
(これか…)
しばらく考え込む。
別のページを開ける。
震える文字で
“終わりはこない”
パソコン画面を見る。
アランはルーペで確認する。
右に流れる筆跡。
(同一人物か?)
アランはパソコンの検索窓に
年代と演奏会で検索してみるが
ヒットしない。
(人前で弾いてしまった…)
(この楽譜を)
アランは眉をひそめる
そして頭が回り始める。
題名なし。
楽曲登録なし。
作曲家不明。
(誰も知らない曲)
(人前で弾いてしまった…)
(何故だ)
(弾いた、じゃない)
(弾いてしまった、だ)
アランは検索を変えてみる。
“演奏会 騒動”
ヒットなし。
“演奏会 中止”
ヒットなし。
(記事か…)
———
翌日。
アランは図書館で地方紙を何枚も広げていた。
記事。
演奏家に大きな拍手。
別の記事
演奏会は大成功。
更に別の記事。
演奏家の凱旋公演。
(大きな記事じゃない)
(小さな記事だ)
アランは地方紙の隅々まで目をやる。
そしてある記事で手が止まる。
(ん?)
“若きヴァイオリニスト自死”
アランの目が、記事の上で止まった。
書き込みの年代。
人前で弾いてしまったの文字。
同じ年代で同一人物だと思われる
“終わりはこない”
アランは記事を読む。
ヴァイオリニストのエスターシュ氏が
自宅で亡くなっている所を発見。
友人の証言によれば
彼は数か月前のサロン演奏会以降、
様子が変わっていたという。
夜中に目を覚まし、
「聞こえる」
と繰り返すこともあったそうだ。
アランの口元が上がる。
(ビンゴだな)
アランは椅子を引き寄せる。
次は年代の違う地方紙に目を走らせる。
(違う)
(これも違う)
(これも…違う)
アランの目が輝く。
(あった)
期待の演奏家 失踪。
デビュー演奏会を目前にした
演奏家が行方不明。
知人の証言では
ここ数週間ほとんど眠っていなかったという。
また、
「同じ曲が頭から離れない」
と繰り返していたそうだ。
現在も行方は分かっていない。
そして更に違う年代の地方紙。
音楽教師宅火災
原因不明。
焼失した書斎から
楽譜の焼け跡が発見された。
知人によれば、
教師は火災の数日前から
古い楽譜を何度も読み返していたという。
アランは
記事を何度も読み返す。
その時
閉館を知らせるアナウンスが流れた
アランはスマホで記事の写真を撮り
図書館を後にした。
その様子を
チラチラ見ていた司書が首を振った。
つづく……。
お読みいただきありがとうございます。
次回 第十二話
「狂王とペェーリル 召喚」




