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黒耀の瞳、翡翠の涙  作者: 石崎 英


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14/22

14.瞬間

「ミオ」

 肩のあたりを撫でられる感触に、水緒は目を覚ました。シウのベッドの脇で眠ってしまったようだった。

 両腕を包帯で巻かれた彼が、上体を起こしてこちらを伺い見ていた。目が合うと彼は優しく微笑んだ。

「ありがとう」

 それだけ、たったの一言。何故だか辛くなって、水緒は泣いた。大粒の涙をポロポロと零した。

「ミオ、泣くな。お前に泣かれると……胸のあたりが苦しくなる」

 彼が頬に手を伸ばした。水緒はその手を取って、自分の涙にぬれた頬に引き寄せる。

「……手、ちゃんと動く? 痛みとかない?」

「ああ。このとおり無事だ」

「よかった……」

 目を閉じてまた、静かに涙を零す。顔同士が近づいた。唇と唇が触れそうになる。


 ――駄目!


 水緒は弾かれたように目を開き、後ずさった。シウにも伝わる、困惑の表情。

「あの……ごめんなさい、わたし……」

 対する彼は、弱弱しく微笑んだ。

「いいんだ、何でもない……少し、感傷的になりすぎた」

 違うの。そう言いたいのに、言葉が出てこない。


 ――心を許しては、駄目。

 まただ、またあの声。

 水緒は項垂れて、部屋を去る。

「……家に帰る。また明日ね」

 去り際に力なく手を振った。シウはそんな水緒をじっと見つめていた。

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