街への向かい道2
キティンが耳をピンと立て、鋭い声で叫んだ。
「ゴ、ゴブリンよッ! しかも四匹!」
セナが振り返ると、緑色の小柄な魔物たちが馬車に取りつこうとしていた。
「ゴブリンって何だよ、あれ?」
焦った顔のキティンが即答する。
「見ればわかるでしょ! あの緑の小鬼よ! 子供みたいな知能しかないけど、とにかく凶暴なの!」
「へぇ……で、こいつらどうすんの?」
気楽そうに言うセナに、キティンは半泣きで叫んだ。
「どうにかして振り落としてぇ!」
「でも俺、何も持ってないぞ!? 素手でやれって言うのか!?」
困惑するセナの手に、キティンが近くの枝を押しつけた。
「これ! 枝!」
「枝ぁ!? いや無理だろこんなん!」
「文句言ってる暇はないの! 早く!」
「わ、分かったよ!」
[首を狙えば……いけるか?]
セナは怒りを込めて枝を振り下ろした。
「オラァァァァッ!」
――ボゴンッ。
直撃を受けた一匹目が頭から地面に叩きつけられ、動かなくなる。
「よし、まずは一体!」
「その調子っ!」
「調子も何も、動き回ってんだぞ!? 当たるかこんな枝!」
悪態をつきながらも追撃するセナ。だが――
「セナ、後ろっ!」
「えっ――ぐわッ!」
振り返るより早く、背中に衝撃。ゴブリンの拳が直撃した。
「痛ってぇぇぇ! やってくれたなぁッ!」
怒りに燃えたセナが振り返りざまに枝を叩きつけ、二匹目を馬車の外へ吹き飛ばす。
「二匹目ッ!」
さらに勢いで三匹目も撃破。
「残りはあと一匹よ!」
キティンが猫耳を逆立てて叫ぶ。セナは最後の一体に狙いを定め、枝を振り抜いた。
――シュッ。
空を切る音。
「危ない! そいつ、短剣を――!」
刹那、冷たい痛みが腹を貫いた。
「ぐっ……!? な、にが……血……! くそ、こんなとこで……」
意識が遠のく中、込み上げる怒りに呼応して風が生まれる。セナが最後の力で手を振ると、突風がゴブリンを吹き飛ばした。
「う、わぁぁぁぁッ!」
最後の一匹が悲鳴をあげて馬車の外に転がり落ちる。
その姿を確認した直後、セナの身体も崩れ落ちた。
「……っ」
——バタッ。
キティンの目の前で、セナは荷台に倒れ込んだ。




