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船讐  -空飛ぶ船から始まった物語-  作者: 梅犬丸
第一部 船編・獣国編
8/63

街への向かい道2

キティンが耳をピンと立て、鋭い声で叫んだ。

「ゴ、ゴブリンよッ! しかも四匹!」


セナが振り返ると、緑色の小柄な魔物たちが馬車に取りつこうとしていた。

「ゴブリンって何だよ、あれ?」


焦った顔のキティンが即答する。

「見ればわかるでしょ! あの緑の小鬼よ! 子供みたいな知能しかないけど、とにかく凶暴なの!」


「へぇ……で、こいつらどうすんの?」


気楽そうに言うセナに、キティンは半泣きで叫んだ。

「どうにかして振り落としてぇ!」


「でも俺、何も持ってないぞ!? 素手でやれって言うのか!?」


困惑するセナの手に、キティンが近くの枝を押しつけた。

「これ! 枝!」


「枝ぁ!? いや無理だろこんなん!」


「文句言ってる暇はないの! 早く!」


「わ、分かったよ!」

[首を狙えば……いけるか?]


セナは怒りを込めて枝を振り下ろした。

「オラァァァァッ!」


――ボゴンッ。


直撃を受けた一匹目が頭から地面に叩きつけられ、動かなくなる。

「よし、まずは一体!」


「その調子っ!」


「調子も何も、動き回ってんだぞ!? 当たるかこんな枝!」


悪態をつきながらも追撃するセナ。だが――


「セナ、後ろっ!」


「えっ――ぐわッ!」


振り返るより早く、背中に衝撃。ゴブリンの拳が直撃した。

「痛ってぇぇぇ! やってくれたなぁッ!」


怒りに燃えたセナが振り返りざまに枝を叩きつけ、二匹目を馬車の外へ吹き飛ばす。

「二匹目ッ!」


さらに勢いで三匹目も撃破。

「残りはあと一匹よ!」


キティンが猫耳を逆立てて叫ぶ。セナは最後の一体に狙いを定め、枝を振り抜いた。


――シュッ。


空を切る音。

「危ない! そいつ、短剣を――!」


刹那、冷たい痛みが腹を貫いた。

「ぐっ……!? な、にが……血……! くそ、こんなとこで……」


意識が遠のく中、込み上げる怒りに呼応して風が生まれる。セナが最後の力で手を振ると、突風がゴブリンを吹き飛ばした。


「う、わぁぁぁぁッ!」


最後の一匹が悲鳴をあげて馬車の外に転がり落ちる。


その姿を確認した直後、セナの身体も崩れ落ちた。

「……っ」


——バタッ。


キティンの目の前で、セナは荷台に倒れ込んだ。


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