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船讐  -空飛ぶ船から始まった物語-  作者: 梅犬丸
第一部 船編・獣国編
33/63

修行…3


セナはキティンの部屋の前に立ち、軽く息をついた。


[…泣いてるんだろうな]


ブレンネンデスの言葉を思い出すまでもなく、キティンの気持ちは分かる気がした。自分では制御できない力に、ずっと悩まされてきたのだろう。


セナは軽くノックする。


「キティン、俺だ。入るぞ」


「……来るな」


扉の向こうから、弱々しい声が返ってきた。


セナは一瞬ためらったが、そのまま扉を開ける。


部屋の中は薄暗く、キティンは布団にくるまって背を向けていた。


「言ったでしょ……来るなって……」


「悪い、でも無理」


セナはずかずかと中に入り、キティンの近くに腰を下ろした。


「お前が泣いてるのに、放っとけるわけないだろ」


キティンの肩がわずかに震えた。


「……泣いてなんか、ない」


「嘘つけ。布団の中、ぐしょぐしょだろ」


「うるさい……」


キティンは布団をさらに深くかぶるが、セナは容赦なく引っ張った。


「うわっ!? ちょ、やめ……!」


布団を奪われ、キティンの泣きはらした顔があらわになる。


「……っ、見ないで!」


「いや、見るわ。お前が泣くなんて珍しいし」


「珍しくない! ……ことも、ないけど……」


キティンは悔しそうに目をそらす。


セナは少し真剣な表情になり、静かに言った。


「……お前の力、すごかった」


キティンの肩がぴくりと動く。


「でも、怖かっただろ」


「…………っ」


キティンは唇をかみしめた。


「私は……私は、自分が怖い……また、誰かを傷つけるかもしれない……」


「それでも、お前は手を抜かなかった」


セナは優しく笑う。


「お前は戦う時、ちゃんと考えてた。力任せじゃなくて、ちゃんと勝つために動いてた。俺は、そういうお前をすげぇって思ったよ」


「…………」


「だからさ、あの力も、お前の一部なんだろ?」


キティンはゆっくりとセナを見た。


「……私の、一部……」


「そう。受け入れるかどうかは、お前が決めることだけど……俺は、キティンがどんな姿になっても、キティンはキティンだって思うよ」


キティンの目から、新しい涙がこぼれた。


「……バカ……」


「うん、よく言われる」


キティンはしばらく黙っていたが、不意にセナの袖をつかんだ。


「……少しだけ……ここにいて」


セナは静かに頷き、そっと手を伸ばした。


「……キティン」


彼女が顔を上げた瞬間、セナはその小さな体を優しく抱きしめた。


「えっ……」


キティンの体が一瞬こわばる。だが、セナは構わず、ぎゅっと抱きしめ続けた。


「大丈夫。お前は一人じゃない」


「…………」


「だから、無理に一人で抱え込むなよ」


セナの言葉が、キティンの心の奥まで染み渡る。


「……ずるい……そういうの、ずるいよ……」


キティンは小さく呟きながらも、そっとセナの服を握りしめた。


静かな部屋の中、二人の時間だけがゆっくりと流れていった。

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