修行…3
セナはキティンの部屋の前に立ち、軽く息をついた。
[…泣いてるんだろうな]
ブレンネンデスの言葉を思い出すまでもなく、キティンの気持ちは分かる気がした。自分では制御できない力に、ずっと悩まされてきたのだろう。
セナは軽くノックする。
「キティン、俺だ。入るぞ」
「……来るな」
扉の向こうから、弱々しい声が返ってきた。
セナは一瞬ためらったが、そのまま扉を開ける。
部屋の中は薄暗く、キティンは布団にくるまって背を向けていた。
「言ったでしょ……来るなって……」
「悪い、でも無理」
セナはずかずかと中に入り、キティンの近くに腰を下ろした。
「お前が泣いてるのに、放っとけるわけないだろ」
キティンの肩がわずかに震えた。
「……泣いてなんか、ない」
「嘘つけ。布団の中、ぐしょぐしょだろ」
「うるさい……」
キティンは布団をさらに深くかぶるが、セナは容赦なく引っ張った。
「うわっ!? ちょ、やめ……!」
布団を奪われ、キティンの泣きはらした顔があらわになる。
「……っ、見ないで!」
「いや、見るわ。お前が泣くなんて珍しいし」
「珍しくない! ……ことも、ないけど……」
キティンは悔しそうに目をそらす。
セナは少し真剣な表情になり、静かに言った。
「……お前の力、すごかった」
キティンの肩がぴくりと動く。
「でも、怖かっただろ」
「…………っ」
キティンは唇をかみしめた。
「私は……私は、自分が怖い……また、誰かを傷つけるかもしれない……」
「それでも、お前は手を抜かなかった」
セナは優しく笑う。
「お前は戦う時、ちゃんと考えてた。力任せじゃなくて、ちゃんと勝つために動いてた。俺は、そういうお前をすげぇって思ったよ」
「…………」
「だからさ、あの力も、お前の一部なんだろ?」
キティンはゆっくりとセナを見た。
「……私の、一部……」
「そう。受け入れるかどうかは、お前が決めることだけど……俺は、キティンがどんな姿になっても、キティンはキティンだって思うよ」
キティンの目から、新しい涙がこぼれた。
「……バカ……」
「うん、よく言われる」
キティンはしばらく黙っていたが、不意にセナの袖をつかんだ。
「……少しだけ……ここにいて」
セナは静かに頷き、そっと手を伸ばした。
「……キティン」
彼女が顔を上げた瞬間、セナはその小さな体を優しく抱きしめた。
「えっ……」
キティンの体が一瞬こわばる。だが、セナは構わず、ぎゅっと抱きしめ続けた。
「大丈夫。お前は一人じゃない」
「…………」
「だから、無理に一人で抱え込むなよ」
セナの言葉が、キティンの心の奥まで染み渡る。
「……ずるい……そういうの、ずるいよ……」
キティンは小さく呟きながらも、そっとセナの服を握りしめた。
静かな部屋の中、二人の時間だけがゆっくりと流れていった。




