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船讐  -空飛ぶ船から始まった物語-  作者: 梅犬丸
第一部 船編・獣国編
32/63

修行…2

今回の[]はキティンの心の声です

「キティンの相手は俺がしよう」


アキレアが静かに名乗りを上げると、キティンは気を引き締め、剣を握り直した。


(お兄ちゃんが相手か……)


キティンは軽く息を整え、アキレアを見据える。


「お兄ちゃんには悪いけど、今回の私は遠慮なく行くよ」


それを聞いたアキレアは、少し笑って頷いた。


「父さん、合図を頼める?」


「よし、始め!」


ブレンネンデスの掛け声と同時に、アキレアが詠唱を始める。


「紅蓮の炎、我が身を守り、技を焼き、剣炎よ舞え」


詠唱が終わると、アキレアの剣が激しく燃え上がった。


炎を纏う剣を見ても、キティンは動じない。むしろ、軽く笑って言った。


「お兄ちゃん……戦い方は昔と変わってないね」


次の瞬間、キティンは無詠唱で初級魔法《火球》を発動。


火球の数は八つ。それぞれ違う軌道を描きながらアキレアに迫る。


だが――


キィン! キィン!


アキレアは剣を一閃し、すべての火球を弾き飛ばした。飛ばされた火球は周囲で破裂音を上げるが、アキレアはまるで意に介さず、キティンへと迫る。


[やっぱり予想通りの動き…]


キティンは素早く詠唱を始めた。


「烈火の柱よ、我が剣先から立ち上り跳ね突けよ」


破裂音が響く中での詠唱――つまり、アキレアには聞こえていない。


キティンは剣を地面に突き立てる。


ゴォッ!!


直後、アキレアの足元から**下級魔法《炎柱》**が噴き上がった。


炎の柱に巻き上げられ、アキレアは宙に飛ばされる。


しかし、彼は空中で態勢を整え、なおもキティンを見据えていた。


「なかなかいい魔法だったよ、キティン。成長したな」


アキレアは空を蹴り、一気にキティンへと接近する。


[来る!]


キティンはすでに次の一手を用意していた。


彼女は地面に転がっていた石を拾い、そこに火球をまとわせてアキレアへと投げつける。


アキレアは直撃を受けたが、怯むことなく剣を振り下ろした。


「――っ!」


キティンは驚きながらも剣で受けるが、強烈な衝撃に弾き飛ばされる。


[このままじゃ……!]


咄嗟の判断で、キティンは自分の剣をアキレアに向かって投げつけた。


観戦していたセナの目に、キティンの手が獣の腕のように変化しているのが映った。


ブレンネンデスや家族も、それを目撃し息を呑む。


アキレアは飛んできた剣を弾き飛ばすが、その瞬間、一瞬の隙が生まれた。


「っ!」


その隙を、キティンの獣の腕が見逃さなかった。


獣化した拳がアキレアの腹に叩き込まれる。


ドゴッ!!!


アキレアの体が吹き飛び、地面に突き刺さった。


「よし、終わりだ! やめろ!」


ブレンネンデスがストップをかける。


その声を聞いた瞬間、キティンの腕は元の姿に戻った。


しかし、キティンは顔を赤く染めると、恥ずかしそうに自室へと走り去ってしまった。


ブレンネンデスはため息をつきながらアキレアを起こし、リリーとカサブランカに治癒魔法をかけるよう指示する。


意識を取り戻したアキレアは、地面に寝転んだまま、大きな声で叫んだ。


「ちくしょぉぉ! 負けたァァァ!!」


セナは目の前で起こった出来事をうまく理解できず、ぽかんとした顔をしていた。


それを見たブレンネンデスが言った。


「あぁ、そうか。セナ君には話してなかったな……キティンのあの力のことを」


セナは気になっていた疑問を口にする。


「あの力って何なんですか? とてつもない力じゃないですか」


ブレンネンデスは少し難しい顔をしながら説明を始めた。


「あれは獣化という力だ。あの力は獣人――特に金色の瞳を持つ獣人にしか使えない。体の一部、もしくは全身を獣の姿に変え、莫大な力を得られる」


「じゃあ、キティンは……?」


「キティンは片方の目しか金じゃない。そのせいで、獣化の制御ができないし、自分の意思で発動することもできない。強い衝動や本能が働いた時に、反射的に発動してしまうんだ……。しばらく見てなかったから、ここまで強くなってるとは思わなかったが……」


カサブランカが言葉を継ぐ。


「キティンは、あの力を昔から嫌っていたのよ。制御できないせいで、周りの人を傷つけてしまうから……。しかも、それをセナ君に見られてしまったなんて……」


セナは申し訳なさそうにうつむいた。


そんな彼の肩に、ブレンネンデスが手を置く。


「セナ君……いいか? たぶん、いや、間違いなく、あの子は今泣いてる。だから、慰めてきてやってくれないか?」


セナは真剣な表情で頷いた。


「もちろんです! それが俺のやることだと思うし、冒険仲間……いや、大切な人が悲しんでる時に、ほっとけないので!」


そう言い残し、セナはキティンの部屋へと急いだ。


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