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船讐  -空飛ぶ船から始まった物語-  作者: 梅犬丸
第一部 船編・獣国編
20/63

意識の世界

セナはうんざりしたような顔で声を荒げた。

「……ん? おいおい、この場所……ようやく寝れると思ったのにぃぃ!」


キファがぱっと現れ、両手を広げた。

「やあやあ! 今回は僕から呼ばせてもらったよ。まぁまぁ、そんな怒らないで!」


セナはイライラを隠さず言い返す。

「で? 俺を呼んだ用件はなんだよ。お前に貰った力が何なのかもまだわからないんだが?」


キファは嬉しそうに笑った。

「そう! 今日はその“力”についてと……僕の正体について話そうと思ってね!」


セナは少しだけ興味を示した。

「……力の正体、だと?」


キファは得意げに胸を張る(ない胸を)。

「まぁまぁ、先に僕の自己紹介から! 改めて――」


セナがすかさず遮った。

「いや、キファだろ? そんなのわかってる」


キファはぷくっと頬を膨らませた。

「もうっ! 最後まで聞けってば!」


セナは肩をすくめて謝る。

「悪い悪い」


キファは咳払いして再び堂々と名乗った。

「改めて――僕の名は六神聖《ろくしんせい》・“怒り”の持ち主、キファ・アウストラリス! 最強で最高に可愛い女の子だよ!」


セナはどうでも良さそうに流す。

「あー、うん」


キファは足をバタバタさせて怒った。

「もー! ……まあいいや。で、その力の正体は“感情”だね」


セナは首を傾げる。

「感情?」


キファは少し照れくさそうに視線を逸らした。

「そう。僕は“怒り”。怒りを感じれば感じるほど強くなる。そして僕と同じく封印された残り五人も、それぞれ“思いの力”を持っている。今は誰かに貸しているか……それともまだ封じられているか」


セナは眉をひそめた。

「他の思いって……何があるんだ?」


キファは指を折りながら答えた。

「えーっと……【怒り】【喜び】【悲しみ】【欲】【嫌悪】【恐怖】。特に【喜び】と【嫌悪】には気をつけて。ロクでもない奴に力を貸しててもおかしくないから」


セナは腕を組んで考え込む。

「ところで……なんでお前は封印されてるんだ? まさかあの黒龍に負けたのか?」


キファは悔しそうに唇を噛む。

「……違うと言いたいけど、そうだね。僕たち六人は“あの糞トカゲ”を封印しようとした。でも全て弾き返された」


セナが目を見開く。

「弾き返された……?」


キファは苦々しげに続けた。

「最初、竜は三匹――水・大地・雷の三柱だけだと思ってた。でも違った。黒龍は、他の三匹が倒されるまで一度も姿を現さなかったんだ。僕たちは全力を尽くし、兵器と六つの“思いの力”を使い、ようやく三匹を討ち倒した……その時に、奴が姿を現した」


セナは息を呑む。

「その時にはもう……」


キファは小さく頷いた。

「僕たちもボロボロだった。……あれは、今でも許せない」


少しの沈黙のあと、キファは真剣な表情で言った。

「あと、僕の存在は精霊君以外には言わないでね。君が狙われるかもしれないから」


セナは険しい顔で頷いた。

「……わかった」


キファは急に元気を取り戻して笑った。

「よし! じゃあ今日言いたかったことは全部かな。今回は僕が無理やり呼んだから、戻すのも僕がやるよ。じゃあね~! おやすみ~!」


セナの意識が揺さぶられる。

[うお……なんだ、この頭が割れるような揺れ……前より重い……]


そのまま、彼は意識を手放した。


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