寝室
キティンは少し思い出したように言った。
「そういえば、私の寝室をまだ案内してませんでしたね。ちょうど用事も終わったので、今から案内します!」
セナの心に冷や汗が流れる。
[やっぱり…同じ部屋で寝ることになるのか……]
セナは少し困った顔で答えた。
「あぁ…た、頼むよ…」
キティンは心配そうに顔を近づけた。
「セナさん、さっきから元気ないですけど大丈夫ですか? お風呂でのぼせちゃったとか?」
セナは慌てて手を振った。
「い、いやいや!ほんっとうに大丈夫だから、部屋に案内してくれ!」
扉が開き、目の前に広がった光景にセナは言葉を失った。
[……なんだこの広さ!? 寝室っていうより大広間じゃないか。それに香りもいいし、豪華で整ってて…しかも可愛らしい雰囲気まであるだと……]
キティンは誇らしげに笑った。
「ここが私の部屋です! 私のベッドは私が使っていいですよね?」
セナは苦笑して頷いた。
「もちろんだよ。泊まらせてもらえるだけでもありがたい話だし。」
すると、キティンは少し照れながら続けた。
「でも…セナが寝る場所が無いですよね? あっ、それなら……私のベッドで一緒に寝るっていうのはどうですか?」
セナは目を丸くして慌てて叫んだ。
「ストップ! それはダメだ! 同じベッドは流石に無理だろ!」
キティンは小さく肩を落とした。
「でも…私たちパーティ仲間ですよ?」
セナは真っ赤になって反論した。
「仲間でもダメなものはダメ! 異性が同じベッドで寝るなんて、人間の常識じゃありえないんだ!」
セナはふと、昔のことを思い出す。
[……そういえばティア姉も、よく勝手に俺のベッドで寝てたっけな。やっぱ獣人はそういうのにゆるいのかもしれないけど……]
キティンはしゅんとした顔で呟いた。
「そうなんですか……」
セナは思わず疑ってしまい、焦って口を滑らせた。
「まさか、他の男もここに連れ込んだりしてないよな?」
キティンは目を潤ませ、首を振った。
「そんなことありません! 私はずっと魔法学校に通っていて……男の友達なんて一人もいなかったんです。セナが初めてなんです……」
その目から、ぽろりと涙がこぼれた。
セナは慌てて手を差し伸べた。
「あ、ああ、ごめん! 泣かせるつもりなんかじゃ……」
キティンは涙を拭って首を振る。
「いえ、私が子どもっぽいだけです。……あ、そうだ! 毛布なら余ってますから、それを使ってください!」
セナは安堵したように笑った。
「いいのか? 助かるよ!」
キティンはにっこりと微笑んだ。
「じゃあ持ってきますね!」
──10分後。
ドスンッ!
大きな毛布が部屋に運ばれた。セナは驚きながら声を上げた。
「でっかいな! しかも、この毛……ふわっふわだ。」
セナは毛布を受け取りながら、ちょっと気まずそうに呟いた。
[……なんか、気まずいな]
キティンはお風呂の準備をしながら言った。
「私はこの後お風呂に行ってきます。セナは夜更かししないようにしてくださいね!」
セナは少し照れくさそうに答えた。
「あぁ、先に休ませてもらうよ。おやすみ」
キティンは優しく微笑んだ。
「おやすみなさい、セナさん」
セナは深呼吸し、ふわふわの毛布にくるまりながら目を閉じた。
[……今日はゆっくり眠れそうだ]




