お風呂
セナは少し困ったように頭を抱えながら、心の中で考えた。
[んー、どうしたものかな…]
キティンは元気に言った。
「じゃあ!ついてきてセナ!まずはお風呂に案内するわ!」
セナは少し迷いながらも、仕方なく答えた。
[この空気で断るなんて出来ないよなぁ。しかも屋敷も相当でかいし…風呂もとんでもない広さだったりして。]
「おお、案内を頼むよ。」
キティンは嬉しそうに頷いた。
「セナ、ここがお風呂よ。ゆっくり浸かって休んでね!」
セナは一瞬きょとんとしたが、ありがたく受け取ることにした。
[“待っててね”って意味かと思ったけど…まぁ気にするな。風呂なんて久しぶりだし、ありがたく入らせてもらおう。]
「あぁ、入らせてもらうよ。」
ガタァ…
セナが扉を開けると、思わず声を上げた。
「広っ!これもう風呂っていうより温泉だろ…!しかも手入れが行き届いてて綺麗だ。」
服を脱いで湯に浸かると、心からリラックスした声が漏れた。
「はぁぁぁ…良い湯だなぁ〜」
その時――。
ガタッ
突然、扉が開く音がした。セナが振り向くと、そこにはキティンの父・ブレンネンデスの姿が。
セナは思わず声を裏返らせた。
「うわっ…って、お父さん!?」
ブレンネンデスは大笑いした。
「ハァッハァッハァッ、《お父さん》か!面白い奴だな! ところでセナよ、我が娘とどういう関係なんだ? あれほど懐くなんて珍しいぞ。まさか……」
セナは顔を真っ赤にして必死に反論した。
「ストップ! おれはただの冒険仲間です!しかも冒険を始めたばかりだ!」
ブレンネンデスはますます豪快に笑った。
「ハァッハァッハァッ!そうかそうか、よっぽど仲が良いようだな!」
セナは内心ため息をついた。
[んー…やっぱこの人、扱いづらい…]
気を取り直して、前から気になっていたことを口にした。
「ところで一ついいですか? 冒険者なのに、どうしてこんなに裕福なんです?」
ブレンネンデスは懐かしそうに遠くを見やり、誇らしげに言った。
「ふむ、まぁ理由は簡単だ。我らは元々、騎士の家系でな。冒険者でありながら、そういう血筋なのだ。」
セナは納得したように頷いた。
「なるほど…そういうことだったんですね。では、俺はそろそろ上がらせてもらいます。ありがとうございました!」
「おうよ!」
ブレンネンデスの豪快な声を背に、セナは浴室を出た。服を身に着け、扉を開けると――。
そこにはキティンが立っていた。
「良い湯だった?」
セナは目を丸くした。
「うわっ!?まさかずっと待ってたのか?」
キティンはくすっと笑いながら答えた。
「いえいえ、たまたま通りかかっただけ。タイミングが良かったのよ。」
セナは少しホッとしつつも、心の中で呟いた。
[タイミング良すぎるだろ…]




