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サイド:エルリック2

今回はエルリック側の話です。

読み飛ばしても問題ないんで、気が向いたらみてください。

\(^_^)/

 王宮、第6王子エルリックの執務室の前。

 1人の強面の男が佇んでいた。



「ふぅ、気が重くなるなど、久々だな……」



 ダンジョンから帰ってきたザザン・シュバルツだ。

 ザザンは、エルリックのダンジョン攻略の詳細を知る生き残りがいるか探して、いたら殺すように指示を受けていた。

 王宮でも発言力も小さく後ろ楯もない第3王女クウデリアを囮に、生き残りの少年アルルと女騎士リアを発見するも返り討ちにされる。


 しかも、大の大人が3人もいて、ほとんど女子供の2人に負けた。

 それも完膚なきまでに。



「ふぅ、事実をそのまま報告したら、きっと、殺されるなぁ、俺」



 こんな無様な報告をしたら叱責はもちろん、殺されても仕方がない。

 裏の仕事とは、元々そういうものだ。

 騎士の仕事を上官と揉めて辞めることになり、この裏の仕事を始めた時から自分の仕事について深く考えることは止めていた。

 だから、どんなことも出来た。

 自分の命を投げ出すようなことも相手の命を奪うようなことも。

 だから、負けてそのまま死ぬはずだった自分をお人好しの医術士見習いのガキに助けられたとき、いったいどんな顔をすればいいかわからなかった。

 今も思い出すのは能天気そうに笑う馬鹿な顔。



「そういえば、あいつに感謝の言葉を伝えんの忘れてたか」



 馬鹿ほどに明るい安心感を与えるガキの顔と共に、そんなことを考えている自分自身に少し驚く。



「ふぅ、俺が感謝なんて言葉を口にするようになるなんてな。この仕事をしてから初めてだ。人生ってのもわからんもんだな」



 ザザンはここに1人で報告にきていた。

 他の2人には金を渡し、好きにしたらいいと言ってある。

 こんな嘘がバレれば首が飛びかねない報告なんて1人で十分だからだ。

 ザザンは軽く息を整えると執務室のドアをノックする。



「入ってきていいわ」という、執務室の主ではない女の声が聞こえ、ザザンはそのまま入室する。

 そこには、執務室の主であるエルリックと王宮魔術師のセレーナがいた。

 エルリックは執務席に座り、セレーナは執務用のテーブルに大胆に腰をかけていた。



「ダンジョン内の生き残り捜索の件で報告に上がりました」


「ああ、その事か。報告はもういいぞ」


「はっ?」



 突然のエルリックの言葉にザザンは思わず声の出てしまう。



「何を言って」


「ん? 報酬のことなら大丈夫だ。そこのテーブルに準備して置いてあるから持っていくといい」



 見ると、来客用のテーブルの上には大金が入っているだろう袋が置かれていた。



「しっかり役目を果たしてくれたうえに、嬉しい発見までしてくれたからな。報酬は約束より弾んでおいたぞ」



 エルリックは報告をもう受けているという。

 いったい誰から?

 一瞬、仕事を共にしたカトラスとブロームの顔が浮かぶが、首を横に振る。

 何度か仕事を共にしただけの仲だが、元騎士としての直感であいつらではないと思う。



「ひょっとして、監視魔法か」


「その通りよ」



 セレーナが妖艶な笑みを浮かべながら答える。



「あなたたちに託した封印の宝玉があったでしょ、あれ映像の転送装置にもなっているの」


「な!?」


「まあ、転送できるのは映像だけだし、何故か途中で壊れちゃったから最後まではわからなかったんだけど、あなたたちが生き残りに遭遇したってのはわかったわ」



 ザザンは、やられたと思った。

 相手がどこまでの情報を持っているかわからないんじゃ、嘘の報告も出来ない。



「それで、生き残りは殺したの?」



 セレーナの言葉で、ザザンの心音が高くなる。



「殺せませんでした」



 ザザンは短く報告する。

 激しい叱責や罵倒、暴力や殺意が来ると思われたが一向にそれらはやってこない。

 それどころか。



「良くやった」



 エルリックから出たのは、ザザンの予想外の言葉だった。



「あのお前らの出会った奴らの持っていた能力、あれは神に届く力かもしれん」


「神……ですか」


「セレーナ、極秘裏に星光教会に連絡を取れ。今こそ俺が目をかけてやっていた、あいつらの力を存分に発揮する時がきたと伝えろ」


「かしこまりました」


「ふふふ、俺は絶対に神に近づいて、自分の望みを全て叶えてやる」



 なんなんだ、こいつは?

 神なんているわけないし、よくわからない事態に教会の狂信者たちの力まで使おうとしている。

 まるで、狂っているとザザンは思う。

 恭しく頭を下げるセレーナの隣でエルリックは1人高笑いを続けていた。

 おいおい、本気で殺されるぞ、あの馬鹿ガキ。

 俺がまだ伝えてない言葉を聞く前に死ぬなんて、俺は許さんからな。

 ザザンは心の中でそう1人憤るしかなかった。




読んでくださり、ありがとうございます。


まだまだ短い文章なのにブックマークや評価してくださった方もいて励みになります。

m(_ _)m

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