31階層
熔岩が蠢き熱気が渦巻く31階層。
僕とリアさん、第3王女クウデリア、コボルトのポルンは魔物や地形効果に気を付けながら進んでいた。
「暑いですの」
「王女殿下、大丈夫ですか。水をお飲みください」
「リアさん、大量の汗をかいているようなら水分だけでなく塩分もとってもらってください」
「わかった。こちらの岩塩もおなめください」
「助かりますの」
リアさんが甲斐甲斐しくクウデリアの面倒をみている。
クウデリアは慣れない暑さに大分まいっていて、ショートドレスの裾をパタパタとして少しでも熱気を逃がそうとしている。
リアさんも自分の新しい剣術スタイルに合わせて、プレートメイルを分解加工して鎧部分は籠手や脛当て、胸当てのみという装いだ。
フルプレートメイルの下は比較的ピタリとした服なので、リアさんのスタイルの良さが強調されている。
女性陣の様子に少し目のやり場に困ってしまう。
もうちょっと思春期男子のことを考えてもらいたい。
「ポルル?」
「ポルン、ありがとう。僕は大丈夫だから心配しないでいいよ」
天然の毛皮を着ていて暑さに弱そうなポルンは、僕が《封印耐性(手)》で能力の一部を解放してあげて、今は炎狼状態になっている。
さすがに炎狼状態でも熔岩を泳いだりは出来ないみたいだけど、この辺の魔物の炎なら、ほぼダメージを受けないみたいだ。
元気一杯に魔物相手に無双していて、リアさんの出番もない。
「リアさん、地図ではこの先に休憩出来そうな場所があるんで、そこで休憩しましょう」
「わかった」
僕たちは休憩場所に移動する。
「結構過酷ですの。アルルは涼しい顔をしてますのに情けないですわ」
「まあ、ダンジョンだからこんなものかなって思ってます」
僕だって暑くないわけじゃないけど、暑いと言って気温が下がるわけでもないし、体力の無駄かなと思ってしまってるだけだ。
本音を言えば超暑い。
「そういえば、アルルは医術士でしたわね」
「まあ、見習いですけどね」
「どうして、そんな道に?」
「どこにでもある話ですけど、聞きたいですか?」
「聞いてもいいなら」
まあ、休憩時間に交流を深めておくのは悪くないか。
僕は自分の身の上話を始める。
「僕は貧民街でも最下層の生まれでした。その日はいつものように親に臓器を売ってくるように言われてーー」
「はい、すとーーーーっぷ、ですの!」
「どうしました?」
あまりに大声を出しすぎてクウデリアが肩で息をしている。
「どうしました? じゃ、ありませんの。何を普通に臓器売買の話をしているんですの。しかも、川で洗濯してきてくらいのノリで」
「いや、わりとどこにでもある話かなと」
「アルル、実の親に臓器を売ってこいって言われるのは貧民街でも結構酷いほうの話だと思うぞ」
「でも、腎臓は2つもあるし、肝臓はちょっとくらい切り取っても影響はないし」
「そういう問題じゃありませんの」
リアさんもクウデリアも若干呆れている。
僕からしたら普通の話だったけど、2人にはわりと衝撃的な内容だったらしい。
僕の身の上話が終わる頃にはクウデリアやリアさんが僕をぎゅっと抱き締めてくれた。
何故か、炎狼状態の解けたポルンも一緒になって抱き締めてくれている。
「アルル、これから私のことを自分の家族と思ってくれていいぞ。なんなら母さんと呼んでくれてもいい」
またリアさんが妙なことを言い出したぞ。
「私のことは姉と思って頼ってくださいまして構いませんの。あなたのことは私が絶対に幸せにしますの」
助け船を求めてクウデリアを見たけど、リアさんと同じようなことを言って号泣している。
みんな、どうしたんだろう?
でも、僕より少しだけとはいえ、年上のリアさんはともかく、年下のはずのクウデリアが姉って無理がないかな。
ポルンはというと、エッヘンという感じに胸を張っているが、ポルンのペットというか、マスコット的な立ち位置はどうあっても変わらないと思う。
僕らの癒しの存在だ。
こうして、僕には理解不能なまま、僕たちの距離は少しだけ縮まっていった。
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