主人公視点⑧
澄んだ冬の朝、街はある話題で持ちきりにだった。
「知っているかい?エアル王国のガーネット様とメトポーロン王国のヘリオドール様が結婚するらいよ」
「もちろん知っているとも。ヘリオドール様がエアル王国に婿入りするらしいな!」
「これでエアル王国とメトポーロン王国の絆がより深くなったな」
ここは、メトポーロン王国を宗主国とする小国。
メトポーロン王国からは4ヶ月もかかる場所にある辺鄙な国。
宗主国の第三王子の婚約発表で街はとても盛り上がっていた。
私はその盛り上がりを横目に、郵便局で受け取った手紙を握りしめながら、急いで家に向かった。
「ただいま、アンジュ」
私は店舗兼住居の建物に入り、中にいた銀髪の女性に声をかけた。
「お帰り、シリカ。街の様子はどうだった?」
「やっぱり、盛り上がっていたわよ?ミランダの手紙だとエアル王国はもうお祭り騒ぎみたいよ」
「ふふふ。その様子が目に浮かぶわ」
銀髪の女性は、私からミランダからの手紙を受けとると、春風のように暖かい笑みを浮かべた。
26年前、ベリル国王に剣を振り下ろされた私とマリンは、オルジュ様の制止により間一髪命が助かった。
オルジュ様の提案により、私達の死を偽装することにした。
密かに、ミランダとクォーツ家と連絡を取り、執事長に私達の私物をいくつか持ってきてもらった。
執事長が持ってきた物は、クォーツ家の家紋がはいったマリンの短剣、学院の生徒であることを証明する校章にジェイド王子からもらった本。
マリンの短剣は土の中に埋められ、私の校章と本は食塩水に浸された。
良い塩梅にボロボロになったこれらを、私達の死亡の証拠としてエアル王国に送ることになった。
ミランダはそれを、特に私の持ち物を私の物だと証言してくれることになった。
死の偽装を終えたら私達に、ベリル国王は新しい名前と戸籍を与えてくれた。
私はシリカとして、マリンはアンジュとしてメトポーロン王国を旅立った。
メトポーロン王国から旅立ったあと、しばらくは冒険者として活動を行った。
エアル王国騎士団長とその息子の指南により、女性ながら剣の腕が立った私達は、主に貴婦人や令嬢の護衛を請け負った。依頼成功率100%を誇った私達には、多くのお得意様が付き、お金に困らなかった。
冒険者としてある程度、知名度を上げ、目標金額を貯めると冒険者を引退し、ここで『エトッフ』を開いた。
店では主に、ミランダから作り方を教えてもらったコサージュや編みぐるみ、ストールなどを作り売っている。
学生の頃、思い描いていた未来とは違うが穏やかな生活を送っている。
「ねぇ、シリカ。貴女は今幸せ?」
アンジュは昔と変わらない青い目で私に問いかける。
私の答えは決まっている。
「えぇ、幸せに決まっているでしょう?」
今までも、今も、これからも私は幸せに決まっている。
まだまだ続きますが、本編は以上で終了です。
次回以降は、本編とあまり関係ない話しを更新予定です。
誤字脱字がありましたら、報告をお願いいたします。




