主人公視点⑤
最高学年になってからは、あの四人はいつも私を付け回し、私がマリンと過ごす時間を悉く邪魔をしてくる。
一体何なのよ!
『私のため』っていうけど、私のことを思うなら、私とマリンとミランダで過ごす時間を邪魔するな!
唯一、マリンと行っている文通を邪魔されなかったことが救い。
だけど、寂しい……
マリン達に会えない寂しさをミモザ様達に愚痴っていたとき、ミモザ様からあり得ない話を聞いた。
「『カレン様は王子と婚約し新しい王妃になる』という話が王宮内にあるらしいわ」
思わず絶句してしまった。
「……………王子は眠っていらっしゃるのね」
寝言は寝てから言って欲しい。
その話をした次の日、私は階段から突き落とされた。クォーツ家執事長直伝の受け身を取りつつ、突き落とした犯人の顔を確認した。
私を突き落とした犯人は、ジェイド王子の侍従のジル様だった。
ジル様は、私が床に背中を打ち付けた姿を見た後、醜い笑みを浮かべながら去って言った。
「あら、カレン・ストレンジャーではありませんか」
階段から落ちた痛みに悶えていると、階段の上から甲高い声が聞こえた。
顔を上げると、ストロベリーブロンドに紫色の目をした、ふくよかな体型の女性……リリス様の取り巻きの一人であるゾフィー様が立っていた。
「誰にも言わないで」
リリス様に懇願した。
ここで、騒ぎになってしまったらマリンたちに迷惑をかけてしまう。
マリン達と話す機会はないが、最高学年になってからいつもマリン達は難しい顔をしている。たぶん、大きな問題が起こっているのだろう。
「わかりましたわ」
ゾフィー様は顔を歪ませながら了承してくれた。
きっと、自業自得だと思っているに違いない。
「大丈夫ですか!?」
ゾフィー様がいなくなってからすぐに医務官が私に駆け寄ってきた。医務官は私を抱き抱えて医務室に連れていってくれた。
医務室で休んでいると、血相を変えたマリンとミランダが飛び込んできた。
マリンは今まで私に隠していた事を話してくれた。
王子の暗殺計画
国家転覆計画
その話を聞いたとき、自分の無力さが悔しかった。
「ジェイド王子がカレンに恋をしている。だから、バレンシア国務大臣一派はカレンを狙ったのかしら?」
私が下を向いていると、ミランダは犯人が国家転覆を考えている一派の犯行だと推測している。
「それは違います。私を突き落とした犯人は………
ジェイド王子の侍従のジル様です」
「え?本当にあのジル」
マリンとミランダはジル様の名前を聞いて、目を丸くしていた。
「まさか、ジルが国務大臣と共謀しているの?」
「それはあり得ない。ジルは基本的にジェイド様のためにしか動かない。だがら、バレンシア国務大臣と共謀するとは考えられない。きっと………
ジェイド様に素っ気ないカレンを懲らしめようと思って、カレンを突き落としだのだと思うの」
ミランダはマリンに問いかけ、マリンはその問いに困った表情をして答えた。
今までで、王子に素っ気ない態度を取ったことなんて無い。
あからさまに、邪険にしているだけ!なんで、侍従は気づいているのに、王子達は気づかない!
だけど、マリンの話を聞いて、私の件が暗殺計画や国家転覆計画と無関係で安心した。
「それでは、侍従のことは、ほっときましょう」
国家転覆と無関係なら、この件を今詳しく調べる必要はない。
私の言葉に、マリンは悲しそうな表情をした。
「マリン、私のことはどうでもいいのです。もしかしたら私のことを隠れ蓑にして、ジェイド王子の暗殺計画が進むかもしれません。
王子近辺の警護を強化しましょう」
私はマリンを悲しませたい訳じゃない。足手まといになりたくないだけ。
私の件を調べるために、王宮やクォーツ家の貴重な人員と時間を割きたくない。
コレが財力も権力も地位も持たない私ができる、数少ないこと。
「カレン……」
私の言葉に、マリンは感動したのか、目を潤ませ、頬を赤く染めながら私の手を握ってくれた。
思わず、私の頬も赤くなってしまった。




