友達視点⑧
カレンが突き落とされてから、ジェイド王子の警護は強化された。しかし、あれ以降特に何の進展もなく、学院の卒業パーティーを迎えることとなった。
この卒業パーティーを無事に過ごせば、私の死亡フラグを完全に回避することができる。
パーティー開始前、私が卒業パーティーに向けて気合いを入れていると、マリンに『一緒に散歩しましょう』と誘われた。
その誘いに乗り、久しぶりに二人っきりで裏庭を散歩した。
「ミランダ……今までありがとう」
「マリン、急にどうしたの?」
マリンはいきなり、私を抱きしめ御礼を言ってきた。
「これから、何があってもこの国を……ジェイド王子を支えて欲しいの」
「……何言っているのよ。もちろん、マリンと一緒に支えていくわよ?」
涙混じりの声で、今生の別れ前のような挨拶に、茶化すように私は返した。
マリンは、私の返事にありがとうと言ってくれた。
コレが、マリンと最後の会話になった。
「マリン・クォーツとの婚約を破棄する。そして、ジェイド・スカイレットの名をもって、そなた国外へ追放する」
パーティー終盤、ジェイド王子は声高らかにマリンとの婚約破棄と追放を宣言した。
意味がわからなかった。
なぜマリンが追放されなければならないのか
あんなに、国に尽くしているマリンを断罪する理由がわからなかった。
カレンはあまりのショックに泣き崩れ
マリンを擁護する令嬢達の声は、マリンを罵倒する王子の取り巻きの声に掻き消され
リリスは邪悪な笑みを浮かべている。
自分の死亡フラグの点滅よりも、王子がマリンを裏切ったことがショックだった。
「それでは皆様ごきげんよう」
マリンは最後の挨拶をすると、振り返ることなく会場を後にした。
その後のことは良く覚えていない。気づいたら、アンバー家の自室にいた。
涙を止めることができなかった。
泣き疲れて寝てしまった私を、窓を誰かが叩く音が起こした。
窓を開けると、太い枝にしがみついているカレンがいた。
カレンも私と同じくらい、たくさん泣いたのか目が赤く腫れていた。
「マリンを探すために国をでる。ミランダも一緒にいかないか?」
カレンの魅力的な誘い、思わず乗りたくなった。
しかし……
『これから、何があってもこの国を……ジェイド王子を支えて欲しいの』
私はマリンに、この国のことを頼まれた。
カレンからの誘いを断ると、カレンは寂しそうな表情をした。
私は、私の代わりに愛馬を託した。
全ては、このコから落ちたことから始まった。
一緒に厩舎の向かい、カレンに愛馬の手綱を託した。
カレンは頷き、私から手綱を受けとると、颯爽と馬に跨がり走っていった。
私は、その背中が見えなくなるまで見送った。




