友達視点①
sideミランダ・アンバー
私の名前はミランダ・アンバー。
財務大臣であるアンバー伯爵の末娘。
しかし、それは表の姿。その正体は……
鈴木真奈美という、日本中を探せば同姓同名が見つかりそうな名前をもつ、女子高生である。
自分が鈴木真奈美だと思い出したのは、ジェイド王子の6歳の誕生日パーティーのひと月前。
乗馬のレッスン中によそ見をしていた私は、見事に木の幹に激突した。
その衝撃で全て思い出した。
自分の本当の名前。
前世を
飛び出した子供を庇って車に轢かれたこと
そして、ここが私が死ぬ前にプレイしていた乙女ゲーム「ETERNAL LOVER」通称「エタラバ」と同じ設定であることを。
思い出したときは、思わず叫び声を上げてしまった。
何事かと様子を見に来た両親や使用人たちに、『悪夢を見た』と言い訳をした。
一人になって改めて、ゲームのシナリオを思いだす。
確か……
①明言されてはいないが、ミランダ・アンバーは王子の誕生パーティーで、本編でカレンに嫌がらせをする公爵家令嬢の取り巻きになる。
後に、その令嬢の筆頭取り巻きの双璧をなす
②男爵家に引き取られたカレン・ストレンジャーは、学院入学後、庶民であることを理由に他の令嬢からひどいイジメを受ける。
主に、ミランダは悪口担当
③好感度が一番高い攻略キャラが助けに来る。それが気に食わず公爵令嬢が激怒、その怒りを和らげるために、カレンに対するイジメが激しさを増す。
④カレンが階段から突き落とされる。卒業パーティーでその犯人が、マリン・クォーツだと断罪される。
ゲーム攻略後にわかることだけど、実はマリンはカレンを突き落としていないことが判明するんだけどね。まぁ、小さい嫌がらせは幾つか行っていたけど。
カレンを虐めていた黒幕公爵令嬢はリリスって言う名前。実は、私は黒幕の取り巻きだったのよ。
分岐ルート①(ジェイドルート、もしくはマーレルート)
無実の罪を擦り付けられたマリンは怒り狂い会場にいた貴族の子弟を惨殺。
攻略キャラとカレンが力を合わせてマリン撃退。
ミランダはマリンの攻撃により死亡
分岐ルート②(ジェイドルート、もしくはルカルート)
幸せなカレンに嫉妬した公爵令嬢リリスの命令により、カレンを殺そうとするが攻略キャラに返り討ちに合う。そこで、リリスが黒幕とわかる。カレンの慈悲により、リリスと取り巻きは修道院へ幽閉されることになる。
王家の馬車で修道院へ連れていかれたため、カレンが来たと勘違いしたマリンが盗賊をけしかける。
リリス共々ミランダは盗賊に襲われ死亡。
慈悲深いカレンは、私達のために修道院で祈る。
分岐ルート③(ジェイドルート)
追い出されたマリンが敵国と手を組み、エアル王国の侵略を開始。アンバー家の領地が最初に攻撃される。
次期王妃となったカレンの説得により隣国の力を借りることができ、敵国とマリンを撃退。
ミランダは丁度領地に帰って来ていたため、敵国の攻撃により死亡
分岐ルート④(ジェイドルート、もしくはグレンルート)
国を二分するリリスとマリンの争いが起こる。カレンが止めに入る。怒り狂った二人の攻撃により、ミランダ死亡。
カレンは攻略キャラと共に、騎士団を指揮して二人を拘束する。
ジェイドルート4つに、他の攻略キャラそれぞれ一つずつの全7ルート。
「…………」
どのルートでも私は死ぬこと確定………
いやーーーーー!!!!
せっかく転生したのに、また10代で死ぬなんて絶対にいやーーーーー!!
私は青春をエンジョイしたいのよ!!
この死亡フラグをへし折る為には、来週の王子の誕生パーティーを回避するしかないじゃない!!
悪役令嬢に関わらなければ、きっと死亡を回避できるはず!
がんばるのよミランダ!
こんな時、転生モノの物語では、転生した主人公はすごい名案を思いつくものよ。
私も頑張れば………
頑張れば
何も思い付かない…
ど、どうしましょう
そうよ!
転生者に兄がいる場所、必ず兄が助け船を出してくれるわ
幸い、私には二人の兄がいる。二人とも私に甘いから泣いて頼めば、パーティーに行かなくてすむよう手配してくれる………
ダメだわ
二人とも海外留学中でいない………
どうしましょう!
神様助けて!!!!
結局、私の祈りは神には届かず、遂に王子の誕生パーティー当日になってしまった。
パーティーに乗り気でない私を心配して、両親や使用人たちは乗り気でない理由を聞いてくる。
言えるわけない
このパーティーに出席することで私の死亡は確定するのだから。
使用人達が選ぶドレスをことごとく断り、喪服のような黒いドレスを選んだ。黒いドレスだと王子に失礼だと言われたので、仕方なしに、この一週間で量産したコサージュを付けた。
心を落ち着かせなければと思い、掃除や洗濯、料理や庭の手入れをしようと思ったが、
「それは、使用人の仕事です」
と私専属の侍女に泣き付かれたため、最終的に裁縫に落ち着いた。
白布と繊細な金色のレースで作ったらバラは我ながら良くできたと思う。
侍女に急かされ、伯爵家の馬車に乗り込む。
私が乗り込んだことを確認すると、馬車は首都に向かい走り出した。
今の私にBGMが付いているとしたら、きっとドナドナが流れているだろう。
首都までの30分、私は売られていく子牛の気分を思い存分味わった。
パーティー会場に着くと、きらびやかにドレスアップした令嬢や令息が楽しそうに談笑している。
私は目立たないように、例の悪役令嬢に見つからないように、会場の端へ行こうとするも、
「貴女、アンバー伯爵のご令嬢じゃなくて?」
見つかってしまった。黒幕悪役令嬢リリスに。
「ごきげんよう。バレンシア公爵令嬢、リリス様」
仕方なく作法に基づき、リリスに挨拶をするが、リリスは私の挨拶を無視し、私のことを頭のてっぺんから爪先まで値踏みをするように見ている。
値踏みが終わると、リリスは私のことを鼻で笑った。
「アンバー伯爵の娘が、何そのみすぼらしいドレスは。
まぁ、いいわ。私に劣るものの、そこそこ顔は良いし、父親の地位もそこそこ高い。
私のお友だちにしてあげますわ」
リリスは絹のような滑らかな髪を掻き上げながら、高らかに宣言した。
万事休す………
この誘いを断る術を私は持たない。
家柄的にも親同士の役職敵にも、あちらの方が上だ。
私がこの誘いを断った時点でアンバー家は路頭に迷うことになる。
去らば、私の平穏な日々……
ようこそ、私の死亡フラグ
「リリス様、探しましたよ」
しかし、神は私を見捨てなかった。
私の前に天使が現れたのだ。
年齢に対して大人っぽい白いドレスに、月の光を宿したかのような銀髪。海よりも深い青い目…………って、マリン・クォーツじゃないの!
リリスが私にとっての疫病神なら、マリンは死神!
やはり、神は私を見捨てた!!
「リリス様、バレンシア国務大臣がお呼びですよ?」
「お父様が?」
「はい、リリス様を王子に紹介したいと行っておりました」
「何よ!そんな大事なことは早く言いなさいよ!」
リリスはマリンに文句を言いながら、バレンシア国務大臣の元へ行ってしまった。
「………」
助けて、くれたのかな?
私にとっては死神だけど、助けてくれたのだからお礼を言わなければ。
「クォーツ公爵家令嬢、マリン様。助けてくださりありがとうございます」
「いいえ、礼には及びません」
頭のを下げお礼を言うと、マリンも頭を下げた。
あれ?
マリン・クォーツってこんな人物なの?
もっと、冷酷で残忍な性格だと思ったのだけど。
子供だから?
それともカレンとまだ出会っていないから?
ゲームだともっと感情的でヒステリックな人物だったはず。
「それでは、失礼致します」
私が、マリンの性格の違いに首を傾げていると、チラっと私を見て、マリンは礼をしてその場を去って行った。
マリンが去ったら後は誰にも絡まれることなく、パーティーを過ごすことができた。




