71 俺が町の市場に リノアと買い物に来たんだが
ラドンツの町に到着して3日ほど過ぎた。
その間、教会でオルレライン司教に、どうやって地下神殿を見つけることになったのかの経緯を話して、それに対する質問がなされた。
もっと、たくさんの聖職者の人達、例えば、あのゴスレグ大司祭みたいな人達に、ずらりと囲まれて尋問みたいな感じになるのかなと思っていたけど、俺たちが子供だということで怯えないようにと配慮してくれたのだろうか? オルレライン司教とエメンズ司祭だけで、和やかな感じで行なわれた
どうやら、エメンズ司祭の裏話ではゴスレグ大司祭が、俺の思っていたような裁判所の法廷のような尋問会を行なおうと企ててオルレライン司教に進言していたみたいだが、オルレライン司教がこの教会の責任者である自分がドーザリブの本協会に直接報告する必要があるためと、押し切ってくれたそうだ。
もしかしたら、初日にゴスレグ大司祭と廊下で会ったときがそうだったのかな?
俺たちを見て凄く不機嫌そうだったし。
正直、助かった。
そうして、後の細かいところは大人たちで話し合うそうなので、俺とリノアは解放され、自由となったわけで。
今日はリノアと一緒に市場を見て回ろうと思っている。
一般の通りであれば町の子供が安心して遊べるくらい治安は良いというエメンズ司祭の話なので、オズベルト父さんからは時間制限付きではあるが、決して細い道や路地裏などの危ない道に入って行かないことを条件に、店を見て回ることを許可してもらえた。
さすがにオズベルト父さんにはダメ出しされるかなと思っていたけど、意外とあっさり許可が出たのもちょっと意外だった。
この辺の考え方はオズベルト父さん自身が冒険者であった、今でも冒険者ではあるのだけど、という部分が大きいのかもしれない。
まあ、前世の日本に比べれば、昼間でも治安がいいわけじゃないのは俺も理解しているから、パスレク村みたいにあちこち自由に歩き回るなんてことしたりはしないつもりだけど。
日本のあれは普通に女の子や小さい子が日が暮れてもそこそこ安全に出歩けること自体凄いことなんだと思う。
そういえば、自動販売機が路上にあるのも外国だと珍しいらしいと聞いたことがあった。
なんでも外に設置して置いたら、すぐに壊されて、中のお金が盗まれるそうだ。
日本でもないことはないけど、かなり少ない方で、たまにニュースでやっているのを見かけるくらいだった。
日本の場合はその自動販売機が外にあることで明かりが点くことにより、その周囲が明るくなって暗がりの死角がなくなることにより、より安全になり、結果さらに治安が良くなるという相乗効果を生んでいるんだって話だったな。
前世の時は気づかなかったけど、村はもちろんの事、町でも街灯らしいものの碌にないこの世界では基本的に夕方までが通常の生活の活動時間となる。
日が暮れれば基本的に月明かりと星明りだけが頼りだ。
まあ、この世界の月は二つあるので、満月に近ければ、慣れていれば、そこそこ見渡すことができるけど。
これは薄紫髪ツインテール少女天使のパスティエルが俺の基礎能力値を挙げておいてくれたというおかげもあるだろうけどね。
どちらにしても今回はそんな夕方まで店を見て回るつもりでもないし。
できればこっそり一人で回る時間を作って、空間収納の中にあるこの地域では珍しい品物を、何処かの知らない露店で手に入れたということにしたかったんだけど、流石にリノアが一緒だと難しいだろうな。
お小遣いももらえたけど、とてもそういった品々が買えるような額のお金じゃないし。
この旅の間に何かそういうチャンスがあるとよいのだけど。
そうしたら前にも思ったチーズとか七味唐辛子とかを家族に出してあげることもできるのに。
俺たちは段々と賑やかになっていく道を並んで歩いていく。
さすがラドンツの町!
賑やかなのは一本道だけじゃなくて、途中大きな十字路になっているところも何か所かあり、そこからもそれぞれ店や露店が広がっている。
一番大きな道は馬車が通れるくらいの道だが、そういうところはちゃんとした店の中でも高級そうな店ばかりで、俺たちでは入れなさそうな所だろう。
なので次に大きな道を進む。
店を構えているところもあれば、屋台や荷車で売る人もいれば、路上に敷物を敷いて品物を並べて売っている人もいる。
物凄い雑多でゴチャゴチャしてて賑やかで。
なんか、前世行ったことのあったフリーマーケットのイベント会場みたいな感じがした。
要はお祭り騒ぎみたいで気分が高揚して楽しい。
「いっぱい、いろんなモノがあるね!」
横を歩いているリノアも声が弾んで目をキラキラ輝かせている。
それもそうだろう。
どれもこれもパスレク村では見ることのできない品物ばかりなのだから。
1ヶ月に数回、村に来る行商人の持ってくる品々だと、どうしても日常生活に必要な物が中心で、その他の品物はオマケ程度の数しかない。
あたりまえだけど、やっぱり町の市場だけにたくさんの物で溢れ返っている。
それと合わせて、さすがに人が増えてきた。




