第三戒『無念の敗北』
俺達の繰り出した弾丸は、全てコンクリートにめり込んだ。
全てはこのカエルフード野郎が怪物だったせいだが…
いつまでもこうはしていられん。佐倉水玉を倒すために努力したんだ。(主にあいつが頑張ったんだけど)
この地下部屋はある作戦を実行すること前提で造ったものだ。俺達が水玉を倒す専用の部屋。
スイッチ一つで水玉撃破が実現するという素晴らしい作戦。俺達の奥義なのだが…
…悲しいことにこれが俺達のできる最後のこと。これ以上のことは多分できない。無力なだけなんだがな…
最終奥義とはそんなものだろう。成功すれば勝、失敗に終わればもちろん負。
俺は別に、勝利の女神とかなんとかいうそんなのではなくただの神なのだから。
あれ?俺は全ての頂点に立つ者では…?負けていいのか?
…とにかく勝つ気でやろうではないか。
「…おい高萩!こうなったらアレだ!!」
「もう使うの?まだあの銃を使ってないじゃない」
「いやあれはポキポキの袋につまようじの太さほどの穴が開く程度の威力しか無いことが証明済みだろう!?」
「そういえばそうだったわね。まあいいわ、この様子じゃいくら撃っても当たりそうにないもの…キリがないわ」
まだ試したい銃もあったが、俺達に残された必勝法はもはやこれしか無くなっていた。
他のことをしたって遠回りになるだけだ。こういうのは急がば回れとか、そんなのではない。
そして相手は予測不能な佐倉水玉。『必勝法』とすら言えない。『勝てる可能性はある方法』だな。
――よし!セット完了だ!
「出口を開けてくれ。逃げろ!!」
「ええ、言われなくとも…」
俺らは少し慌て気味に出口に向かう。
あと十秒。
これがタイムリミット。この時間が過ぎれば俺らは負けか引き分けにしかならなくなる。
無論この戦いで引き分けほど無意味なものは、負けと同じだが。
あと七秒となった。俺らは佐倉水玉の様子を伺いながら隠しドアを開こうとしていた。隠しドアの位置はできるだけ、気づかれるのは一秒でも遅くしたい。
このドアはロックを解除してから、明け締めが一度しかできない。ドアが閉じればまたロック状態になるから二人一気に脱出するのがベストだろうから、あとはタイミングを合わせてドアを開けるだけだ。
緊張して震える手でドアを引きかけたそのとき。
「へーー!睡眠薬を撒き散らす作戦か!」
さすがにバレたか。
だが、それは想定内というか、バレる前提だったな。
「だが、水玉には効かないのだよ!!」
何…!?
「なぜなら水玉にはこれがあるのだ☆」
小さなレインコートの中にはとても隠せそうにない大きめの機械を取り出した。俺らの銃も両手で抱えるほどだが、それの比じゃなく大きい。
しかしそれには何故か見覚えがあった。つい数日前見たような。
青梅和が休んだ日のこと。あの日、佐倉水玉がしたこと。
思いだした。
まさかそれは…
運動場に穴を掘ったときのドリル!!
「いえぇぇえぇーーーい!!」
にこにこと叫びながら、コンクリートの壁の適当なところに穴を開けて…って
うわっ逃げられた!つかま…え……あれ……意識…が………遠……く……………
「これは私たちの負け…逃げられてしまっ…たわね…あとは…任せ…る……わ………!!…」
*****
一・雅と水玉が戦っていた地下部屋の地上のグラウンド。
部屋から数百メートルから数キロメートル離れた、Z組校舎寄りの体育館の裏でまた別の二人が待ち伏せていた。
「『逃がしたみたいですね』と妖精が呟いております。」
一人はモニターで中継していた地下部屋の様子を見て、ため息をつくように呟く。
「かとるかかっひになわたけかしのんぶじろだかばもらついこかつ…」
もう一人はたまにそのモニターをちらっと見ながら、謎の言語を発する。
もちろん待ち人は一回戦を制した佐倉 水玉。
まだ戦いは始まったばかりだ。




